【広島】「継続」という言葉だけが独り歩きしている

0.まえがき

以前読んだショートショート(小説の一種)の作品で、こういう話がありました。

ある老舗の食品会社が、長年変わらぬ味で愛されている商品(確かお菓子か何か)を販売していました。

あるとき、ライバル会社(か何か)が、その商品のレシピを盗み出し、その味を再現した商品を開発し、販売を始めました。

「これであの会社を蹴落とせる」と思っていたのですが、想定外に評判が良くない。

結局、その後発の商品はヒットしないまま終わったのですが、なぜそうなったのでしょうか。

実は、老舗会社の商品は、必ずしもレシピ通りに作られた食品ではありませんでした。

その時代に合う味をリサーチして、味のマイナーチェンジを繰り返していたのです。

だから、その商品は常に、消費者の(その時代ごとの)味覚に合ったものであった、というのです。

1.インタビュー記事への不満

今日、2017年5月5日の中国新聞に、サンフレッチェ広島の足立修強化部長のインタビュー記事が掲載されました。

「(降格圏からの)浮上への鍵」と銘打たれたその記事には、賛否両論の意見が起こっているようで、私が知る限りでは、世間的には否定的な意見の方が多いように見受けられます。

私は全文を読んでいないので多くは語りませんが、目にした断片的な部分だけで言えば、確かにツッコミどころが多い内容ではあるようです。

特に、「一致団結して戦う時が来た」と仰られたらしいのですが、思わず「じゃあ、今までは一致団結してなかったの?」と、揚げ足を取ってしまいました(苦笑)。

まあ、記事の論点はそこじゃないので、書きたい内容に話を進めますが…

私が気になったのは、「やり続けることが大事。最大の策は我慢だと思ってる。」の部分です。

いや、このこと自体は、私は否定していません。

なぜなら、現状において重要なことのひとつだろう、と思っているからです。

しかし、足立氏が語っておられるのは要するに「『継続』するという方針を貫いていく」という意思表示だと思うのですが、私がこのくだりを読んで思ったのは、「言葉が足りないのではないのか?」という不満だったのです。

もちろん、本来はもっとかみ砕いて語っていたものを、川手記者がまとめる際にオミットしたのかもしれません。

(紙面や尺の都合があるはずなので、恣意的にとかいう意味では無く。)

でも、いまの勝てていない現状で、ファンサポも大なり小なり心を痛めている状況で、フロントが語る言葉としては、いかにも表面的すぎないだろうか。

私はそのように感じたのです。

2.「継続」という単語が独り歩きしている

ここでハッキリと疑問を提起させてもらいますが、足立氏の仰る「継続」とは、具体的に何を指しているのでしょうか?

このインタビューからも、さらに、最近の森保監督の発言からも、首脳陣が口を揃える「継続」という言葉の中身が一体何なのか、少しも表面に現れてはきていません。

フロントと現場(監督)の意思統一ができていることは良いことだと思うのですが、部外者である私の目には、「継続」というお題目だけが独り歩きしているように見えてなりません。

3回の優勝を成し遂げるほどの強豪チームとなったサンフレッチェが、綿々と継続した強化によって作られたものであることは、異論の余地はないと思います。

しかし、勝っている時期ならば試合さえ観ていれば理解できた「継続」の内容も、勝てない時期にいる今は、試合の中からそれを見出すのは難しくなっています。

そんな時に、只々キーワードだけを唱えても、ファンサポには伝わらないのではないでしょうか。

だから、例えば「球際を厳しく粘り強く戦う」とか「ボールを動かして相手を動かす」とか「サイドの優位性を生かして幅広く攻める」とか、そういう具体的な言葉で、チームとして何を「継続」させていくつもりのか、広く伝えてほしいのです。

そして、当然のことながら、その明確なポイントに基づいてチームを作ってもらいたいのです。

勝てていないことへのストレスはもちろんですが、ファンサポが困っているのは、「チームが何をしたいのかよく分からない」という状況で、それでも応援していかなければならない、ということだと思います。

ファンサポがチームに不安感や不信感を持つとすれば、勝たないことよりもむしろこちらの方が大きいのではないでしょうか。

ライバルチームに塩を送ることになりかねないので、首脳陣としてはやりにくいことなのかもしれませんが(*)、どのみち、戦術は周知されているし、広島がそれを上回っていかなければいけないのだから、ここは是非とも、「継続」の指す意味を明示してほしいです。

ファンサポへ向けて「指針」を示してほしいです。

(*)首脳陣が言いにくいのなら、浩司アンバサダーにお願いしてもいいでしょうし、それこそ中野和也さんは適任だと思うので、何らかの形を知りたいという気持ちです。

3.お題目への批判に疑問あり

ここまではサンフレッチェ首脳陣の言動について批評してきましたが、ファンサポの振る舞いについても、一部、個人的に疑問視したいことがあります。

前項に書いた通り、私が思うに、首脳陣の語る「継続」という言葉の真意は、我々には伝わってきていません。

しかしながら、フロントも監督も、「何を継続させていくのか」というビジョンは当然持っているはずです。

そして、継続路線を批判する人の中には、「サンフレッチェが継続していきたいもの」が何なのか、全く吟味せずに批判する人がいます。

さらには、フロントや監督が継続を強調していること自体を全否定している人もいます。

こうした振る舞いに、私はちょっと首をかしげてしまうのです。

もちろん、私の中では、「継続」の中身を明確にしてこなかった上層部に原因があると考えます。

でも、「継続」の示すものが分からないのに「継続」そのものを否定する、のは、行き過ぎた批判ではないでしょうか?

(一家言を持つ優れたコメンテーター、だと思っていた人が、そういう批判のツイートをしていたことが、私には非常にショッキングでした。)

誤解しないでほしいのは、例えば、「継続の方向性がおかしくなっていないか」というような批判は、「継続」の何たるかを踏まえたものなので、問題視してはいない、ということです。

そもそも、物事には大きく分けて、「継続した方がいいこと」と「継続しない方がいいこと」の2種類があるはずです。

そして、前項で私が例として挙げたような事柄は、誰もが「継続した方がいいこと」に分類する事柄だと思います。

「継続」を否定する人は、その「継続した方がいいこと」までも否定していることになると思います。

私の考えでは、それは批判の在り方としては間違っています。

なぜならば、「継続」というお題目だけにこだわって、中身が見えていない批判だと思えるからです。

(ライト層ならともかく、多少なりともコアなファンサポにそれをされたら、私としてはとてもガッカリです。)

批評眼を持てることはとても素晴らしい才能だ、と私は思います。

しかし、物事を批判するときは、せめて何が良くて何が良くないかぐらい、自分の中で把握してから批判するべきなんじゃないですかね。

4.自分たちを信じること

先日、OBのサンパイオさんが広島にいらしてくださいました。

そのサンパイオさんの金言について、中野和也さんが記事にしておられたのですが、いま改めて、選手たちにその言葉を送りたいのです。

「自分たちを信じることね」

ある記者が「結果が出なかったら、信じ続けるのは難しいんじゃないかな」と尋ねたとき、サンパイオさんは、

「それはね、信じていないことと同じだよ。勝ちも負けも、悔しいも嬉しいも、全てを受け入れる。それが信じるということね」

と答えた、と記事にはあります。

いまサンフレッチェは、勝てないことによって、ファンサポからの信頼を失いかけています。

森保監督に対する風当たりも徐々に大きくなってきて、ついに、心ある人たちからも不信任の声が出始めています。

インタビュー記事において、足立氏が森保監督への信頼を口にしたため、そのことに対する批判も出ていました。

しかし、チームを「大きく」変えることへのリスクから、首脳陣は「継続」を推し進める判断をしました。

起用法やレンタルの件など、批判の声は大きい(まあ当然ではある)が、サンフレッチェは当面、この方向に進むことに決まりました。

となれば、誰が何と言おうと、選手たちはその方針の下、勝つために努力していくしか道はありません。

ここまで一致団結していなかった、とは思わないけど、また改めてチーム一丸、団結して事に当たる他はありません。

そのためには、サンパイオ氏が広島に残してくれた「自分たちを信じることね」という言葉を、それぞれがもう一度、胸に刻むことです。

5.選手だからこそ見えること

もうひとつ大事なことは、選手たち自身も、継続していくべきものと捨てるべきものとを正しく取捨選択すること、だと思います。

ライバルチームたちは、広島の戦術を熟知し、弱点を突くべく研究を重ねてきました。

サンフレッチェを取り巻く環境は、完全優勝したあの時とは異なっているので、広島は当然、あの時と同じレベルのままでは立ち行かなくなってしまいます。(その結果が今の順位なわけですが。)

それを克服するためには、冒頭のショートショートの例が参考になるはずです。

つまり、サンフレッチェは「2017年のJリーグ」というトレンドをリサーチして、戦術のマイナーチェンジをする必要があります。

その時代に合ったサッカーを、工夫して作っていかなければならないのです。

そして、それが何かを最も体感しているのは、他ならぬ選手たち自身だと思います。

もちろん、選手は基本的に、監督やコーチの指導の下、チームコンセプトに合わせたプレーをしなければなりません。

しかし、「ここは上手くいかないなあ」とか「ここはこうした方がいいんじゃないか」とか、練習や試合の中で感じたことがあるなら、選手間で話すなり、監督やコーチに進言するなり、選手自身の判断で何らかのアクションを起こすべきです。

例のミシャ式可変システムが生まれたのも、カズの進言によるものだと言われています。

サンフレッチェの中に前例があるのだから。遠慮する必要はないのですから。

「自分たちができること」を、選手たちには存分に表現してほしいと思います。

6.あとがき

同じ批判するなら、批判した相手にとってプラスになるように批判したいものですね。

まあねえ、正直言って難しいですよ、理性を保て、っていうのは。

実は私も、速報観戦したFC東京戦の直後は「今年はダメかもしれない…」と、初めて思いました。

でも、ツイッターやヤフコメで「中身のない批判コメント」を読んで「何を!(怒)」と思って、その反骨心で奮い立ちましたね。

というわけで、私としては、批判はするけど、サンフレッチェの足を引っ張ることはしないでおこうと決めてます。

最後にお礼を。

どうやらまた1人、新しくフォローしてくれたみたいで。

どなたかは存じませんが、ありがとうございます!

ご期待に沿えるように頑張ります!

それこそ継続してですね(笑)。

ああ、この時間帯の投稿は珍しいな。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。