走れ~っ! ~清水戦で見えたサンフレッチェ広島の課題~

0.まえがき

前回の記事で、先日の清水戦を「これまでにレビューを書いてきた中で最低の試合でした」と評しました。

過去3年間に観てきた中には、完敗した試合もありましたし、観られなかった試合(レビュー対象外)で完膚なきまでにやられてしまい、ブログの執筆にも影響してしまったこともありました。

しかし、私にとって、先週の試合ほど、サンフレッチェから得点の匂いがしなかった試合はなかった、と思ったので、そのように表現させてもらいました。

あの記事から既に4日経ちました。鳥栖戦も間近の金曜日です。

やる気とは裏腹、仕事のこととか体調のこととか、気になること数多く、追記に着手できないまま、今夜を迎えました。

最早ちょっと遅すぎる、と思わなくもないのですが、あの清水戦を観て思ったことや、試合を回顧する途上で気付いたことなどを、しっかり書いて残しておくことに意義がある、という考えから、記事にしておくことに決めました。

なお、個々のプレーについて批判的に言及することがありますが、個人を批判する意図はありませんので、あらかじめお断りしておきます。

1.積極性が不足していなかったか?

清水戦の敗戦を伝える、3月5日付の中国新聞

その紙面に載っていた、FC東京の試合を伝える記事の中に、次のような記載を見つけました。

「昨季から主力の顔触れが大きく入れ替わり、連携は未成熟。(中略)先制の場面で生きたのは積極性だ。(後略)」

大宮を相手に苦戦したものの、ディフェンダーの森重がミドルシュートで先制し、FC東京が2-0で勝利したわけですが…

私はFC東京のその試合を観ていないので、その1つのプレーを以って「(試合全体を通して)FC東京に積極性があった」と言い切ることはできません。

しかし、少なくとも、森重の積極的な姿勢が得点を生み出した、と記者は評価しているわけです。

翻って、清水戦での広島は、(試合全体を通した)積極性に関しては物足りませんでした。

他の方がどう感じたかは分かりませんが、少なくとも私はそう評価しているわけです。

2.自分の力で打開しようとしていたか?

特に、「自分で局面を打開するんだ!」という意思を感じさせる選手が少なかったのが、非常に寂しかった。

それを象徴するのが、前半40分の或るプレーでした。

センターサークルの手前、自陣で茶島がフリーでボールを保持したとき、前方に大きなスペースが空いていました。自陣からとはいえ、カウンターのチャンスです。

しかしそのとき、茶島は、一旦、後方に目を向けたのです。

おそらく、味方の位置を確かめるためだったのでしょうが、そのため、プレーにひと呼吸おいてしまった形になり、ボールを前に運ぶタイミングが遅れてしまいました。

前半から、攻撃面で上手くいっていなかったことは、私が気付くほどですから、選手たちも当然、気にしていたと思います。

ならば茶島は、(ドリブルも持っているのだから、)例えゴールまでの距離は遠くても、まず自分から仕掛けて行くべきだったのではないでしょうか。

そうすれば、広島の選手なら必ずそれに呼応してくれただろうと思うし、大きな得点のチャンスになったかもしれません。

危険なエリアへのチャレンジが少な過ぎたこともそうですが、連携やパスワークが上手くいかないのであれば、逆に独力で打開することを考えてみても良かったのではないかと思います。

そうすれば、攻撃の手段も多様化されて、相手から読まれにくい攻撃につながっていくかもしれませんよね。

あの試合での数少ない光明として、森島のプレーぶりが評価されていますが、それは、「彼が自らトライしていこうとする意志」が伝わってくるから評価されている、という側面もあると思うんです。

3.仕掛けることが積極的な守備にもつながるのでは?

試合の最終盤、工藤がエリア内を自分で突破しようと試みた場面を観て、私は「この強引さが時にはあってもいい!」と思いました。

連携を構築していく作業も重要ですが、少々強引にでも自ら勝負を仕掛けるプレーも同じく重要だと思うからです。

だから、フェリペなども、もっとドリブルで仕掛けてみればいいと思うんですよね。

「人数を掛けて守られたら(ドリブルでの突破は)難しい」とフェリペは語ったそうですが、それはそうかもしれませんが、でも、少しでも「行けるかも!」と感じた時には、チャレンジしてほしいと思うんですよ。

特に、味方のサポートが期待できる時には。

今季のサンフレッチェが取り組んでいる「積極的な守備」について、最も効果が高いタイミングはいつか、というと、おそらく「相手がボールを保持した瞬間」でしょう。

それで、後日思ったことなのですが、例えば、バイタル付近でフェリペがドリブルで仕掛け、3~4人で囲まれて取られたとします。

でもその時、相手が攻撃に転じようとした瞬間、サポートした味方とフェリペ自身で再度ボールを奪取することができれば、高い確率でチャンスになるはずですよね。

その場合はつまり、フェリペのドリブルでの仕掛けが、「積極的な守備」のひとつのトリガーになるわけです。

まあ、思い付きです。そうそう上手くいくかどうか。

でも、相手の外側で安全なパスを回すよりも、何かが起きる可能性は格段に高いと思いませんか?

4.個の力が足りないのでは?

フェリペの名前を出しましたけど、開幕から2試合、彼はJ1のプレーに適応できていない、という指摘する意見があります。

彼のストロングポイントは、体の強さと技術の高さ、ドリブルの上手さ、などですが、本番で実力を発揮できたとはまだ言い難い状況です。

もちろん、多くの選手がそうだったように、そのうち壁を打ち破ってくれると期待していますが。

ところで、フェリペのような「まだまだこんなもんじゃない」と思われる選手は、他にも何人か見受けられますよね、残念ながら。

例えば、稲垣は、まだ広島のシステムにアジャストしていないように見受けられますし、茶島は、自身の課題である「ゴールに絡む動き」を試合で出せませんでしたし。

実は、清水戦の終了直後、私は「結局は個の力なんだな」とメモに書き残しています。

後半途中からボランチに入った柴崎のプレーを観て、そのことを実感したんですが、とにかく、ボールを持ったら取られないんですよ、彼は。

青山の位置に入って、周りにも清水の選手がいるような状況で千葉や水本からパスが入っても、全くロストする不安がなく、安心して観ていられましたものね。

もちろん、戦術眼も高い柴崎ですから、その後の展開も出来るわけです。

また、3人目の交代で入った丸谷ですが、ミキッチのサイドへの長めのパスが何度か見られたはずです。

長年サンフレッチェでプレーした経験を生かして、稲垣を上回る展開力をアピールしていましたよね。

要するに、選手個人が持っている技量を、試合の中で活かせているか、チームの中で活かせているか、という部分。

開幕2試合に関していえば、残念ですが、活かし切れていない選手が少なかった、と言わざるを得ないです。

技量そのもののスキルアップも必要ですね。

先日、ブログ「ピッチに紫の風が吹く」の記事で、稲垣と森島について「視野を広げて周りの状況を把握することができていない。目線が全体的に下向きになっている(改善できれば楽しみな選手だ)」と指摘されていて、私は気が付いていなかったので「なるほど」と思ったのですが、今できることをやり切ることに加えて、今できることを増やしていく必要もあるわけですよね。

5.檄を飛ばす選手はいただろうか?

長くなってきましたが、あと2つ、指摘したいことがあります。

私が思うに、前半の出来の悪さから、ハーフタイムの森保監督の指示は、熱を帯びていたものだろうと想像できます。

いつぞやの浦和戦のように、厳しい言葉での叱責があったかもしれないな、と思っています。

しかし、結局、後半も攻撃面では状況を打破することができなかったのですが…

私が疑問に思っているのは、ブーイングを浴びるほど不甲斐ない試合をしてしまった選手たちの中に、チームを鼓舞するような、逆に叱咤するような、そういう声を挙げる選手が居たのかどうか、というところです。

昨年、(これも浦和戦でしたが、)ハーフタイムにピーター・ウタカが檄を飛ばしたような、選手の自発的な発言はあったのだろうか?

私は、もしも青山がその場にいたら、何がしかの言葉を発していたのではないだろうか、と思っています。

青山はあの日、体調不良で欠場していました。

ホームゲームではありましたが、欠場理由を鑑みると、青山はビッグアーチへは行かず、自宅で療養していたのだろうと思います。(情報はありませんが、常識的に考えて。)

その前提で話すならば、当然、ロッカールームにも青山は居なかったことになります。

私は、以前の記事に、正月の中国新聞に載った青山と塩谷の対談で、青山が「言い合える雰囲気にすれば勝てるチームになる」と発言したことを書きました。

チームのためになることなら厳しい指摘も辞さないとする、青山の決意をそこに読み取りました。

そんな青山なら、清水戦の内容を観たら、きっと思うところがあったに違いないし、口にも出しているはずですよね。

その意味でも、青山不在は大きい損失だったと思います。

(但し、この件については、おそらく心配はいらないと思います。工藤などは要求をハッキリ伝えることができる選手だと思いますし、意見を戦わせることが重要だと認識している選手も多いはずなので。)

6.走るチームを作るんじゃなかったのか?

そんな青山にも、苦言を呈したいことが1つあります。

これもソースは中国新聞ですが、開幕直前の紙面で、青山は「走るチームを作る」と発言しています。

しかし、2試合を終えて、サンフレッチェ広島はJ1で最も走行距離が少ないチーム、となっています。

もちろん、走ればOKか、ということはなく、現に、次に少ないのは鹿島アントラーズですが、普通に勝ち点3を獲れていますからね。

でも、今季の広島の場合は、昨年以前とは状況が明らかに違っています。

清水戦のレビューで、広島の攻撃面での硬直を指摘しましたが、他所で見た指摘には「足元へのパスが多すぎる」「裏へのボールが少ない」「スペースを使う動きがない」など、運動量に関係するものが多数ありました。

こうした現状が青山ひとりだけの所為ではないと、当然分かっているのですが、敢えて問いたい。

「青ちゃん、走るチームを作る、はずじゃなかったのか?」と。

「広島の攻撃が相手に読まれている」と、中国新聞の記事は指摘しています。

サイドからの攻撃に相手が対応してきた場合、中央も使っていく必要があるはずですが、そこに動きが無く、皆が足元でもらおうとするのであれば、そりゃ、相手も読み切るでしょう。

よもや、連携が上手くいかないことを言い訳にしようとは思っていないでしょう。

事実、連携不足と思われたFC東京は、しっかり勝ち切っているのですから。

でも、連携に不安があるのだとしても、まずは動かないと。

狭くても場所を見つけて入り込み、そこにパスを入れていく。

受け手は、突破するもよし、リターンパスや壁パスを使うもよし。

もし相手に奪われても、積極的な守備で奪い返すために走り直す。

オフ・ザ・ボールの動きだって、様々な効用があるのだから、ムダ走りに終わるとしても試みていかないと。

もちろん、スペースに向かう選手がいたら使っていくのがベターだと思うし。

そういうのを繰り返していく中で、連携が向上する面もあるわけだから。

色々と書きましたけれど、とにかく、走るチームを作りたいのであれば、実際に走らなくちゃ。

また清水戦みたいな悔しい思いをしないために、選手自身のために、改めてトライしてほしいと思います。

7.選手たちもそれは分かっている!

ここまで、6つの章立てで、清水戦の開始から今日までに思ったことなどを指摘してきました。

すべてが的を射た意見とは限りませんし、共感できる・できないは様々だと思いますが、私は、このようなことを考えました。

そして、まえがきに書いたように、あの記事から既に4日経ちました。

サンフレッチェの選手たちは、もう次の試合に目を向けています。

ブーイングの声も、新聞等での批評も、その他諸々の声もすべて受け止めて、為すべきことをしているように思います。

そんな中、3月9日の紙面に、柴崎の次のような談話が掲載されました。

「止まってパスを受けても駄目。動きながらボールをもらい、ゴールにつなげる」。

私が指摘するまでもなく、彼は分かっていました。彼らに足りなかったものが何だったかを。

柴崎が分かっているということは、他の選手たちも分かっているということだと思います。

8.鳥栖戦は、浮上を感じさせる試合にしてほしい。

日付変わって、3月11日は、サガン鳥栖とのアウェー戦が行われる予定です。

茶島や皆川などが体調不良で離脱してしまいましたが、青山が復帰しますし、Aロペスの復帰も有力視されています(フルは難しそうだけど)。

また、柴崎が90分戦う態勢を整えつつあることも好材料で、欠けていたピースが少しずつ埋められてきそうです。

相性がいいとはいえ、鳥栖は、無論侮れない対戦相手です。

選手たちも、100%の力を出し切らなければ勝ち切れないだろう、と踏んでいるはずで、不安を抱える現状ですが、やれるだけのことはやってやろうと意気込んでいると思われますね。

ということで、ここはひとつ、内容と勝利の両面でナイスゲームを展開してほしいなあ、と、広島ファンの1人として切に望みたいと思います。

そして、「清水戦で底を打った。あとは上昇していくのみだ!」と思わせてもらいたいと思います。

9.あとがき

今回は評論的な記事のため、選手名は、いつもの愛称的な呼び方は控えました。

再出発の期待がかかる鳥栖戦ですが、私はDAZN派ではないので、映像での生観戦はできないと思います。

その代わり、Jリーグ公式でLIVEトラッキングをしてくれるはずなので、そちらで試合を追いかけようと考えています。

思えば、前にLIVEトラッキングの記事を書いたとき、その時も鳥栖戦だったんだっけな。

なお、1~2分のタイムラグがあったと思うので、他の速報は見ません!

あ~、時計を見たらビックリだ。

朝、いつもの時間に起きる予定だったけど、無理かも知れぬ。

ま、しょうがないね。

それでは。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。