球際以前 ~横浜FM戦レビュー~(後編)
7.久々2題
後半が始まり、両監督のコメントがレポートされました。
ポイチさんのコメントの中に「後半はギアを上げて行こう」というのがあったのですが、「これ、久々に聞いたなあ」と思いました。
まあ正直、「前半は抑えていた」というイメージは、私は持たなかったのですが、でも確かに、どこかでテンポアップする時間帯は必要ですからね。
一方、後半9分頃、シバコーが頭で落としたボールを、ペナルティアークの少し手前から、ウタさんが強烈なミドルシュートを放ちました。
榎本のスーパーセーブに遭い、惜しくも同点弾にはなりませんでしたが、いい狙いでした。
実は、前半20分頃、ウタさんに疲労の影響を見て取った私は、「久々に自分で打ってみるのもいい」とメモしていました。
その意味ではかなり待たされましたが、加入当初の頃に見られたウタさんの規格外の部分を、この場面に見ることができて良かったな、と思いました。
8.2枚替え
後半14分、ポイチさんが勝負の手を打ちます。
航平とカズに代えて、ミカと寿人の同時投入、というカードを切ったのです。
そして、寿人が指で作る「2」の数字。
例のフォーメーション「3-1-4-2」に切り替えて、まずは同点を狙おうという算段でした。
その頃は、横浜FMも、前プレって感じでもなくなってきていたので、タイミングとしては理にかなっていました。
そして、寿人が入ったことで、やはり、ウタさんが少し空いてきたように見えました。
但し、スタジアムの歓喜の時は、まだ少し待たなければなりませんでした。
広島に単純なミスが散見していましたし、横浜FMの集中力を崩し切れない時間が続いたのです。
9.歓喜の逆転
広島の攻勢がようやく実を結んだのは、後半36分、ウタさんから皆川にスイッチして3分後のことでした。
この間、横浜FMも2枚替えで、俊輔とカイケに代えて、兵藤と伊藤を投入し、運動量の確保を図りました。
が、ミカの右サイドが活性化したことで、広島がやや優勢に試合を進めていました。
そんな中、一旦相手にボールを獲られたミカが、粘って再びマイボールにすると、少し虚を突くタイミングでクロスを上げます。
そこへ、中澤のマークを振り切った皆川が、得意のヘッドで会心のゴールを奪ったのでした。
さすがはミカのクロス、そして、これまでの苦悩を振り払うかのような、皆川の飛び込みだったと思います。
これだけでは終わりません。
その2分後、またもミカの前にボールが転がり、ペナ角でフリーになったミカが、今度はニアに向けて斜めのクロスを放ちました。
飛び込んだのは浅野!(もちろん、彼はオフサイドではありませんでした。)
彼に当たったかどうかは分からなかったのですが、とにかくゴールに向かったボールは、惜しくも榎本に阻まれてしまいました。
が、こぼれたところには、当然のように寿人がいました。
これで2-1。Eスタのボルテージは否応なしに高まっていきました。
10.失われた言葉
後半40分過ぎ、私は、気付いた何かをメモしようとしていました。
その時、自分が何を考えたのか、今はもう思い出せません。
なぜなら、その考えは紙に書かれなかったからです。
後半43分、横浜FM、同点。
4分間のロスタイム、両チームとも勝利を目指して攻め合いましたが、浅野のトラップがミスになった直後、試合終了の笛を聞くことになったのでした。
11.只々、勝ってほしかった
逆転して2-1、1点リードで残り時間約10分、というシチュエーションで、どのように試合を進めていくか。
それには大きく分けて2つの方向性があると思います。
3点目を狙って勝ちに行くか、1点のリードを頼みにじっくり構えるか。
想像ですが、ビッグアーチの雰囲気は「いけいけムード」だったのではないでしょうか。
3分間で逆転した。しかも2点目は寿人だ。今度は浅野の得点を見たい!
スタジアムの広島ファンサポのほとんどが、そんなことを夢想したことでしょう。
ファンサポとしては当然の感情だと思いますし、私も、その場にいたらそんなテンションになってたかもしれません。
でも、自宅のテレビの前にいた私は、次の得点が、というよりも、とにかく勝ち切ってほしいと思いました。
だから、広島には、リードした時点で、もっとじっくりと構えてほしかった。
守備を強く意識しながら、残り時間を戦ってほしかったんです。
12.「守りから入る」ということ
間違ってほしくないのですが、私はサンフレッチェに「守りに入れ」と言っているのではありません。
守備に軸足は置くけど、相手の攻めを逆用して、したたかに逆襲を狙っていく。
森保監督が常々、「いい守備からいい攻撃につなげる」ことをおっしゃっていますが、それが広島の戦い方、ポイチさんのコンセプトなのですから、リードしたあの場面でも推し進めてほしかったんです。
13.なぜそうなってしまったのだろうか
だから、同点に追い付かれた場面は、私には信じがたい映像でした。
横浜FMから見て右サイドの小林にボールが渡るまでの経緯を、私は思い出すことができません。
スカパーのダイジェストを見る限り、左サイドの奥の方から流れてきたようですが。
そして、小林がボールを押さえた時、広島の最終ラインには5人並んでいましたが、(おそらく)中町がエリアに進入してきたため、その対応で、6人がラインに吸収されてしまいます。
シバコーが小林に近付きますが、小林は楽々、フリーでクロスを蹴り込めました。
そして、マーカーの塩ちゃんからうまく距離を取った伊藤翔の、体全体が躍動した素晴らしいヘディングシュートが決まったのです。
さすがは横浜の選手だけのことはあります。小林も伊藤翔も、ともに素晴らしかったし、相手を讃えなければならないと思います。
しかし、ならばなぜ、そんな素晴らしい相手選手に自由にプレーさせてしまったのでしょうか?自由を奪うことはできなかったのでしょうか?
14.球際以前の問題だった
失点の瞬間、私の頭の中には、沢山のハテナマークが並んでしまいました。
メモ用紙にも「?」が乱立しています。
危険な言葉は使っていないので、メモに書いたそのままをここに載せても構わないのですが、事実誤認がありそうなので、最も言いたいことだけ書きます。
「なんで、バイタルがスカスカになるん???」
広島の最終ラインは、ペナルティエリア内に押し込まれていました。
そのライン上に、広島の選手が6人、横浜FMの選手が5人入っています。
そして、バイタルエリアには浅野とシバコーの2人のみ。そこには広大なスペースが広がっていました。
こんな状況では、いくら「球際で負けるな」と言っても無理でしょう。
15.球際の戦いに持ち込むべきだった
逆転のために、3-1-4-2にシステム変更していましたから、守備が手薄になることは想定内でした。
しかし、アウトサイドが戻り、2列目がバイタルを埋めれば、5-3-2の形になります。
そして、最終ラインを下げ過ぎず、せめてペナのラインぐらいまで押し上げてくれたら、相手のスペースを制限できたのではないでしょうか?
球際で勝つためには、球際で勝負できる状況を作り出さなければならないはずです。
この日は、広島でも梅雨が明けました。気温が上がった上に、風もなく、非常に蒸し暑かったそうです。
そんな日の試合終盤で、なぜわざわざオープンな展開で体力を消耗させる必要があったのか。
そこが、そもそも分かりません。
しっかりと2ラインを形成し、選手間の距離を縮め、相手のスペースを消して、球際の勝負や連携によるボール奪取を狙い、奪ったら、手数を掛けずにカウンターを狙う。
これなら、いつもやっている慣れた形でしょうし、ムダに長い距離を走る必要もありません。
勝つための方法はいくつかあるでしょうが、広島のスタイルやコンセプトを踏まえると、私はこのやり方がベストだったと思うのですが。
16.もう一度、全員で戦う原点へ
試合中、掛本さんのレポートで、「レイソル戦後に塩ちゃんがカズとディフェンスについて話をした」と聞きました。
ブロックを作ることも含めて、守備のやり方をディスカッションしたようです。
この横浜FM戦でも、前半は十分修正出来ていた、と私は思っています。
ただ、残念なことに、試合終了までやり通すことはできませんでした。
さらに残念なことに、試合後の監督や選手のコメントを、Jの公式や広島のオフィシャルで読みましたが、リードした後に何を目指そうとしていたのかを読み取ることはできませんでした。
ピッチ上の選手全員が共通の認識で戦わないと、厳しい勝負を乗り越えることはできません。
もし、選手たちの意思統一ができていないのならば、ベンチが助言してあげなければなりません。
交代出場した3選手がいずれも得点に絡み、ベンチを含めたメンバー全員がチームのために戦えることを証明してくれました。
今度は、選手全員が試合の中で状況を把握して、共通の絵を描きながら戦う姿を、見てみたいと思います。
17.あとがき
ああ、もう3時か… そろそろ寝ないと明日に響きそうだ(笑)。
最初はもちろん、1つの記事としてレビューするつもりでした。
でも、前半を書き終えたところで、いったん「前編」としてアップすることにしました。
なぜかというと、レビューの後半に書きたいことがあったからなんです。
いつも、私のレビューは長いので、その部分まで読み切ってもらえないかもしれない、と思って。
でも結局、後編だけで、いつものレビュー並みの長さになってしもうたけえねえ(笑)。
意味が無かったかもしれません。
今回は、割と批判的な内容になっていると思います。
しかしながら、柏戦も横浜FM戦も、負けた訳ではないんですよね。
試合の終わり方がアレだったので、勝ち点を4つ減らした気になっていますが。
浅野が旅立ち、塩ちゃんが用心棒を買って出たので、気掛かりではありますが、広島の新しい一面を観られるチャンスでもあります。
希望を持って、前向きに、次の神戸戦を楽しみにしたいと思います。
お疲れさまでした(笑)。
最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。