真に戻るべき場所とは? ~柏戦レビュー~
0.まえがき
日本は只今3連休。
「仕事だよ!(怒)」という方も多くおられるでしょうが、幸いにして、私はカレンダー通りに休むことができました。
学校も夏休みに入りましたし、どことなく開放感が感じられる、そんな土曜日でした。
1.システムを戻す
2016年7月13日、水曜日。
鹿島戦の敗戦を受けて、注目されたサンフレッチェの布陣でしたが、スタメンを見て、やはり従来のシステムに戻す、ことを知りました。
正に事前に伝えられた通りだったのですが、少し残念。
ただ、前から積極的に来るいまのレイソルを相手にするなら、賢明かな、とも思いました。
3バックの一角は、今回は宮原。カズがボランチの位置に戻り、他はほぼ基本メンバー。
ミッドウィークの中3日でしたが、大きな変更はありませんでした。
一方のレイソルは3トップ。このあいだ甲府で見かけたばかりのクリスティアーノと、またもの再会です。
私がレイソル戦のレビューを書いているということは、私がこの試合を観たことを意味します。
職場が「ノー残業デー」なのをいいことに(笑)、さっさと帰宅して、TBSチャンネルで生観戦したのでした。
(やるべき仕事はちゃんと終わらせてから帰りましたからね。)
解説は福田正博氏。キング・カズの学年なので、森保監督よりも年上なのですが、放送では「森保さん」と言っていたのが、ちょっと印象に残りました。
2.「起」
試合開始直後から、激しく迫るレイソル。
開始1分のスルーパスからの攻撃は、広島のゴールが一瞬ガラ空きになったビッグチャンスでした。
そして、前半5分、レイソルのCK。
右サイドからクリスティアーノの蹴ったボールを、中山が高い打点でヘディングシュート。
彼にとってプロ初得点となるゴールは、完全にフリーでした。それはもう、見事なまでに。
システム関係ないじゃん。
前半の半分くらいまでのレイソルは、寄せの速さや、切り替え・自陣への戻りの早さが、非常に目を引きました。
一方の広島も、失点直後に浅野がループシュートをポストに当てるなど、1点もののチャンスは創出していましたが、惜しくも決め切れません。
22分のシバコーのヘディングもポストを叩いてしまいました。
しかし、リードしてから時間が経ち、少し積極性が薄れたレイソル。
「広島がペースを握っているように見えて、レイソルも守れたらOK的な感じなんだろうな」と思った矢先、広島が同点に追い付きます。
30分、カットインしたカシッチからの裏へのパスを、浅野がリターン、その流れで丸谷が放ったミドルが、レイソル大谷に当たってコースが変わりました。
レイソルにはアンラッキーな面が強いゴールとなりましたが、広島のコンビネーションがレイソルの守備陣を上回った得点ではありました。
3.「承」
リードしてちょっと守りに入った面があったレイソル。
追い付かれると同時に、アグレッシブさが戻ったようでした。
しかし、白熱する一進一退の中、ウタさんへのファールによって得たFKのチャンスを、塩ちゃんが見事に生かし、広島が逆転に成功しました。
この場面もまた、輪湖に当たってコースが変わるという不運がありましたが、もちろん、足が出て当然の状況。輪湖を責めることはできません。
広島がリードして、後方でじ~っくりとパスを回し、このまま前半終了まで続くか、と思ったところ、ここで意外にも、広島に3点目が記録されます。
丸谷のロングボールを大外で受けた航平が縦に仕掛け、湯澤を躱してクロス、それをシバコーがヘディングで合わせたのでした。
逆転されて気落ちするところがあったのか、レイソル守備陣が皆、ボールウォッチャーになってしまいましたね。
そこを上手く突くことができたのは、広島らしいと思いました。
4.「転」
福田さんの解説で、「広島が逆転できたのは、レイソルの動きの質が落ちてきたということなのだろう」と類推できた、前半の情勢でした。
そこをレイソルがどう立て直すか、はたまた広島がどう勝ちにつなげていけるか、という後半の展望でした。
果たして、前半と同じく、後半も、開始直後からの積極性が目立つレイソル。
一方の広島も、ブロックを作って、ディフェンシブな形で受け止めます。
押し続けるレイソルに対し、広島が持ちこたえる、という流れでしたが、後半11分でした。
広島DFの大外から、右サイドでボールを受けた伊東純也が、航平を出し抜いて、逆サイドへクロス。
ディエゴ・オリヴェイラがフリーで放ったヘディングが、反撃の狼煙となるゴールになったのでした。
1点差となり、盛り上がるスタジアム。立て直したい広島。
しかし、後半15分でした。
左サイドからのクロスを、宮原が被ってしまい、伊東の下へ。
落としたところに走り込んだディエゴ・オリヴェイラに対し、慌てたか宮原、完全にアフターでディエゴの脚を蹴ってしまいました。
直後のPKを、クリスティアーノが、コースを読まれながらも、それをモノともしない強烈なスピードで、ボールを蹴り込みました。
3-3。ついにレイソルが同点に追い付いたのでした。
5.「結」
残り時間は30分余。勝ちにこだわりたい両チームは、互いに攻め合い、きわどい場面を作っていきます。
当然、広島も勝ち越しを狙いますが、浅野のこの日2度目のポスト直撃、ミカの宇宙開発(ある意味お約束)、そして、終了間際にまたもポストに阻まれる、といった感じで、ついに勝利を手放すことになりました。
6.メモをサボる
ここまで、4コマ漫画的な「起承転結」で、この試合の流れを追ってみました。
「起」をレイソルの先制点で終わらせると「承」の部分が変になるので、半ば無理やり、同点になるまでを「起」に含めました。
まあ、そんな事情はさておき。
おそらくお気づきでしょうが、「結」の部分がやけに短くなっています。
なぜかというと、3-3になって以降、私はほぼほぼ、メモをサボっていたからです。
正直言って、レイソルに追い付かれた直後、私はガッカリしてしまいました。
もちろん、残り時間はたっぷりあったので、勝利を諦めたわけではありません。
でも、追い付かれた過程がいかにも、だったので、ちょっと呆れちゃったんですね。
(私も人間なんで、やさぐれることもあります。)
詳細は後ほど。
7.今後のレイソルに期待大
では先に、レイソルについて書き留めておきます。
試合前に思っていた通り、レイソルの前線は活発に動いて、広島のディフェンス陣に圧力をかけてきました。
また、広島が追い付くまでの時間帯では、広島よりもポジショニングの流動性が高かったですね。
クリスティアーノも、レイソルでの過去のプレー経験をよく活かして、非常に機能していました。
ディエゴ・オリヴェイラやドゥドゥを含め、外国籍選手の能力が高いですね。
もちろん、日本人選手も質が高いと思います。
中継で「ベテランと若手の融合ができている」という評価がありましたが、その通りだと感じました。
チーム全体としては、3失点目に象徴されるように、まだまだ若さが悪い方に出る場合があるようです。
しかし、ここにきて「チームコンセプト」を確実に表現できるようになってきた、はた目にもすごく伝わってくるなあ、とも感じました。
忘れてましたが、下平さんは今季途中就任でしたね。
生え抜きだからレイソルの酸いも甘いも知っているし、吉田元監督からの継続性もあるので、レイソルをより大きく育てていきそうですね。
あとは、フロントがぶれなければいいですね。
8.サンフレッチェの弱み
いつもは、試合経過を追う途中で自分の感想や分析を入れることが多い、当ブログのレビューなのですが、今回は、その辺をあまり細々書かないことになりました。
なぜなら、試合後に自分が書いた観戦メモを読み返した時に、感じたことの多くに共通点がある、と思ったからです。
この試合を語る上で、私は、2つのキーワードについて言及すればほぼほぼ事足りる、と思いました。
それは何かというと、「バタバタ感」と「球際の弱さ」です。
システム云々ではない、現状のサンフレッチェが持つ弱みが、この2つの言葉に集約されています。
9.拭えない「バタバタ感」
鹿島戦で攻略された「3-1-4-2」をひとまず棚上げして、このレイソル戦では「3-4-2-1」の基本形に戻したサンフレッチェでした。
が、開始早々から不利を招き、CKからあっさり失点してしまいました。
失点後に反撃を目論む広島でしたが、ピッチ内がどうもずっとバタバタしているように見えて仕方がありませんでした。
同点に追い付き、2点差をつけて前半を終えられたので、一旦はその印象が消えました。
しかし、後半開始から、またバタバタが復活してしまいました。
特に2点目から3点目までの間は酷かったですね。
昨年の戦いぶりを思い出してほしいのですが、昨年は、例え先制点を許しても、慌てず騒がず、自分たちのスタイルを徹底して、じっくりと相手の攻略に掛かっていました。
ボールを動かし、ギャップを作り、チャンスが出来たと見るや、人数を掛けてそこに力を集結し、同点、逆転へとつなげていきましたよね。
今回の試合、鹿島戦もそうだったようですが、一旦試合を落ち着かせよう、自分たちのペースを取り戻そう、という意識が、ほとんど感じられませんでした。
千葉ちゃんぐらいですかね、そういう意図を持ってプレーしていたのは。
彼は、いい意味で「遊び心」がありますよね。
相手がプレスを掛けてくる分、はがせばチャンスになることを知っていて、その駆け引きを楽しんでいるわけです。
私は、チーム全体にそうした「遊び心」が欲しいなあ、と思いました。
リードしていても、チーム全体がなぜか焦っている。
普通に考えて、慌てる必要なんて、全く無いのです。だって、勝っているんですから。
よしんば同点にされたとしても、まだ振り出しです。何でそんなに焦る必要があるんですか?
私は、選手たちにそう問いたいのです。
昨年できていたことを思い出すだけでいいはずなんですけどねえ…
10.「球際」の重要性が忘れられていないか
ポイチさんの試合後のコメントには、必ずと言っていいほど「球際の厳しさ」について言及した箇所があります。
目の前のボールを獲るか獲られるか。
その勝負に勝つ回数が多いほど、試合に勝利する確率が上がっていきますが、ポイチさんが語っているのは正にこの部分。
極論すれば、システムとか戦術とかはその次の話なのです。
そして、このレイソル戦では、肝心なところでの球際の争いに悉く負けてしまいました。
いや、そもそも、相手のボールホルダーに絡めてすらいませんでした。
以前にも書いたのですが、広島の守備は、まずボールホルダーに誰かが寄せていくところから始まるのですが、最近はそこからしてすでに甘い気がします。
また、せっかくプレッシャーを掛けても、連動しない守備なので、別の相手にパスを出されて、改めてその選手に寄せていって、の繰り返しになってしまいます。
守備の方法論として、そういうものもあるのかもしれませんが、なぜそうなってしまうのか、私は不思議です。
「結局、どこでボールを獲りたいの?」という辺りが、試合の中で見えてこないんですよね。
試合中、ポイチさんがさかんに「ラインの押し上げ」のことを言っていましたが、私にはその意味が理解できる気がしました。
見かけ上は2ラインができていたのですが、実際は、ライン間の距離が間延びして、相手にそこを使われていたのです。
レイソル戦で必要だったのは、最終ラインを押し上げる勇気でした。
ライン間をコンパクトに保つことで、相手が使えるスペースを消すことができるし、さらに、守備の連動に必要な距離感も確保できるのですから。
選手の「球際に勝つんだ!」という気持ちの強さと、それを支える戦術的な後押し。
相手の研究に遭って、言うほど簡単ではないと理解しつつも、やはりファンとしては、そうした不利面を覆してほしい、勝利してほしい、と求めたいじゃないですか。
11.いま大事だと思うこと
今節、川崎や浦和が、終盤の劇的なゴールで、苦しい戦いを勝利に結び付けました。
名古屋に完勝した鹿島を含め、今年の年間勝ち点御三家が、揃って勝ち点3を取得しました。
その一方で、勝ち点を取り逃してしまった広島、G大阪、そしてFC東京…
残念ですが、現状の勢いというか、チーム力の違いが、成績に表れています。
もちろん、チャンピオンシップを諦めてはいませんが、事実(戦績)は曲げられませんから。
惜しくも引き分けに終わったレイソル戦ですが、個々については、躍動が目立った選手もいました。
特に航平は、湯澤との勝負に何度も勝利して、ライン際まで進入してのクロスを連発しました。
ウタさんも、人を活かす動きと守備面での献身を見せてくれましたし、浅野のスピード、シバコーのポジショニング、丸谷の攻撃面での新境地、等々、見るべきところは多かったと思います。
しかし、チーム全体としては、すでに述べたように、終始バタバタして落ち着かない印象でした。
ケガ人の増加、システムの出し入れ、相手チームが研究の成果を出していることもあって、昨年と同じという訳にはいかないことは重々承知の上です。
リアルな戦いの中で、変えるべきところは変えていかなくてはなりません。
でも、せっかく昨年作り上げた長所である、試合全体を俯瞰して戦う落ち着き、試合運びの上手さとかは、今年の戦いの中でも継承してほしい要素です。
選手達には、改めてそのことを思い出してもらいたいのです。
主要メンバーは欠けているけど、チーム全体が意思統一して戦うことができるのが、サンフレッチェ広島のいいところなのですから、今のメンバーでもきっと立て直せるはずです。
横浜FM戦を前に、いま一度、見直しを掛けてほしいと思います。
共通認識を再確認してほしいと思います。
12.あとがき
水曜日の試合のレビューを、次の試合の当日に発表することになりましたが、これは、観戦中にやさぐれてしまった影響です。
前に「私のブログは『ポジティブ』が売りだったはず」と書いて、「そういえば、特に宣言したことはなかったなあ」と気が付いたりした経緯があるのですが、「当ブログは『リスペクト』を冠した『美点凝視』の内容を心掛けている」というのは、確か過去に似たようなことを示しました。
で、今回は「美点凝視」の部分が少ないので、あんまり読んでもらいたくないなあ、と思う自分がいますね。
まあ、公開したからには読んで頂きたいのですが(笑)。
思いは複雑です。
なお、「まえがき」と「あとがき」の内容がかみ合っていませんが、それには理由がありますが、ここでは書きませんが、わざとずれたままにしています。
それではまた。
最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。