リベンジの完勝、そして大一番へ ~磐田戦レビュー~
0.まえがき
昨年、お盆休みに行なわれた鹿島アントラーズとのホームゲームを観に行き、雨中の敗戦をレポートしました。
先程、その記事を読み返し、あの日の悔しい気持ちを改めて思い起こしました。
見事に、鹿島の術中に嵌ってしまいましたからねえ、あの時は。
その後、年間勝ち点1位を決めた湘南戦まで、自分の書いた記事を読み直してみました。
すると、その頃のサンフレッチェの状況とか、文章を書く最中の気持ちとかが何となく思い出されました。
シュートに至る過程を書いた箇所では、実際に観た映像までもが脳裏に再生されてきました。
自分が観たことや感じたことを書き留めておく、たったそれだけのことですが、そこには少なからず意義があるようですね。
それを自ら再認識した瞬間でした。
1.新システム初見
2016年7月2日、土曜日。
サンフレッチェ広島の、今年7月の最初の試合は、ジュビロ磐田を迎えたホームゲームでした。
ACL帰りのアウェーゲームでは、名波監督の策の前に何もさせてもらえなかった広島。
静岡での借りを、ここ広島の地で、のしを付けて返してほしい、と思いながらのテレビ観戦でした。
練習態度の問題でやきもきさせた磐田でしたが、その当事者とされたジェイを、名波監督は1トップとしてスタメン起用してきました。
ということで、磐田は現状のベストメンバーをぶつけてきたようでした。そして、負傷が癒えた松井大輔がベンチに控えているのが、非常に不気味でした。
対する広島は、前節の甲府戦と、サブを含めて全員同じメンバーでした。
浦和戦でスクランブル発進し、甲府戦で白日の下となった、例の「新鮮術」(*1)を、私はこの日初めて、この目で観ることができました。
とても、楽しみでした。
(*1)くどいようですが、誤字ではありません。
2.序盤の実感
試合が始まって最初の5分間、メモを取るヒマがないほど、両チームが活発な動きで攻め合いました。
ボールを奪った磐田が、アダイウトンを使った速い攻撃で広島ゴールを脅かせば、広島もお返しとばかり、サイドからのクロスでウタさんのシュートを引き出す、といった具合でした。
(大井がゴールライン手前で防いだプレーは、敵ながらあっぱれでした。)
その後、若干の小康状態を経て、試合は徐々に広島のペースになっていきます。
序盤戦、広島目線で私が思ったのは、まず、ウタさんのところで奪われずに展開できればチャンスになり、取られると「やばくね?」となる、ということでした。
そして、中盤でポゼッションできているときは安心感がある、ということでした。
また、磐田は守備時のバランスに気を配っていたでしょうが、広島がクロスの精度を保てたら、案外とラクに崩せるかもしれない、ということも思いました。
実際、航平からのクロスでひとつ、チャンスになったシーンもありました。
守備面でも、個人の突破こそ許していましたが、連動で崩される場面は少なかったと思います。
3.せんせいの形
「今日はカシッチのキレがいいなあ」と思った矢先の、前半19分。
そのカシッチからのセンタリングを、ウタさんがDFを背負いながらさばき(*2)、こぼれたところにいたシバコーがシュート。
決して簡単なシュートではなかったはずですが、先生の技術力でサイドネットに突き刺しました。
磐田にとっては、痛恨の失点だったと思います。
スカパーのダイジェストではその前がないので分かりかねますが、流れの中でしょうか、シバコーをフリーにしてしまいました。
それにしても、パパドプーロスがトライしてくるのは見えていたはずですが、それを物ともせずに撃ち切ったシバコー先生の技術力、決定力には脱帽しますね。
いま調べてみたら、国見高校時代に選手権で得点王になっていたんですね。
ってことは、浅野と同じじゃないですか!知りませんでした。
(*2)よく見ると、ウタカの落としというより、パパドプーロスが頭に当てていますね。彼としては競り勝っていたわけですけどね…
4.ひと安心
さて、首尾よく先制した広島でしたが、ここから怪しくなるのが今年の傾向。
相手の逆襲を組み止めて、無失点で切り抜けられるか否か。
広島の真価を見たいところでしたが、その意味で、この日はうまく試合をコントロールできたかな、と思います。
磐田も、守備時の落ち着きは取り戻したようでしたが、攻撃面では、やや個人技が目立ち、チームとしての形は作れていないようでした。
もちろん、広島の守備もしっかりと対処していました。
5.せんせい再び
30分頃、実況席から「ジュビロが4バックになった」との指摘がありました。
解説の小島伸行さんは「前を2人にして云々」と話しておられましたが、私は、サイドの手当てをしたのではないか、と思いました。
それほど、この日のカシッチは、調子の良さが目立っていたからです。
しかし、私の見立てはともかくとしても、その直後に、逆サイドから広島の2点目が生まれることになったのは、皮肉でした。
丸谷から、左アウトサイドの航平に斜めのパスが出ます。
トラップせずに横パスをした先にいたのはシバコーですが、彼はスルーを選択し、ボールは中央で待つウタさんに渡りました。
その時、シバコーはスルーするや否や、パパドプーロスと入れ替わってエリア内に進入していました。
そこにウタさんのスルーパスが出たのですから、広島ファンにはたまりません。
シバコーはまたしても、GKの股下を抜く技ありのゴールで、ファンに期待に応えてくれたのでした。
6.危なげのない前半
2点差になり、私もメモの手を止めて、しばし観戦。
磐田のプレスに厚みが無くなり、ジェイ辺りにボールが入っても、広島は人数を掛けてそれに対処し、危なげがありませんでした。
こうして、前半が終了。
攻撃面では、サイドと中央のバランスが良く、相手に的を絞らせていませんでした。
守備面では、3-1のところを心配していたものの、磐田がスペースを使い切れていないこともあって、大きな問題はありませんでした。
7.三本の矢
ロッカールームで檄を受けたのか、磐田は、後半開始から、ジェイを使って速い攻撃を仕掛けてきたり、前を厚くして広島の守備陣にプレッシャーを掛けてくるなど、アグレッシブな振る舞いを見せてきました。
しかし広島は、落ち着いてその反撃を食い止めると、危険な臭いもありながら、概ね堅実な戦い方を示していました。
そして、後半20分のカウンター。
浅野が、ドリブルでハーフウェイを越えた辺りで、左サイドにフリーで走る寿人にパスを送ります。
そのまま斜めに走り、寿人をチェックしに行くパパドプーロスの裏へ抜け出す浅野。
寿人はすかさず、縦のスペースに蹴り出します。
相手のスライディングを躱してシュートを打った浅野でしたが、GKのストップに遭い、残念無念。
と思ったところ、こぼれ球に寿人が反応し、最後はウタさん!
決定的とも言える1点は、広島側にこぼれました。
試合再開に備え自陣に戻る浅野の表情は、非常に悔しそうだったですね。
しかし、三位一体となって取り切った、見事なゴールでした。
8.完勝
その後、後半30分頃に、サイドから崩されて危うい場面を作られるなど、単発的なピンチこそあったものの、概ねゲームを支配した広島が、無失点で勝利し、勝ち点を32に伸ばしました。
その間、宮吉、ボムくんという、今年加入した選手や、若手成長株の吉野を投入し、実戦経験を積ませることができたことも大きかった。
特に、吉野のボランチ起用は少し驚きましたが、確か前にやったことはあるはず(*3)、と思ったので、心配はしていませんでした。
この日は、完勝と言っていいと思います。
(*3)調べていませんが、聞くところによると、現U23代表の試合で経験があるらしいです。思えば彼もリオ五輪世代。いま期するところはあるはずです。
9.あとがき
私がこの日初めて観た、サンフレッチェ広島の「新鮮術」は、とても楽しいものでした。
本当は、その新システムのことについて、この記事内で章立てしてまとめてみよう、と考えていました。
でも、書いているうちに少し気が変わりまして、その件については別途、記事を起こすことにしました。
書いてみなければ分かりませんが、良く思えた点、懸念される点、まだ露呈していない課題など、いくつか挙げることができると思っています。
鹿島戦が始まる前に書き切れたらベストなのですが。
そう、大事な鹿島戦まで、あと2時間半ほどになりました。
新システムが鹿島にも通用するのか、という観点からも、大きな一番です。
折角、ビッグアーチで行われるビッグマッチなのに、現地参戦できないのは、非常に残念。
すでに今月の赤字計上が確定してしまっている(泣)という家庭の事情で、しょうがないのですが、それでもやっぱり残念無念。
テレビ中継も観られないので、せと☆ひできさんの速報が大いに頼りです。
現地には、浦和戦に匹敵するほど、多くのファンサポが詰めかけてくれるはず。
私が言うまでもないことですが、是非、みんなの力で、選手たちを後押しして下さい!
私も、気を念じて、ビッグアーチに届けたいと思います。
最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。