風格を取り戻そう! ~浦和戦レビュー~

0.まえがき

今年も行われたAKB選抜総選挙で、指原莉乃が大差で堂々、2連覇を達成しました。

賛否両論あり、ウソかホントか分からない黒い情報が飛び交ってもいますが、そういうことはさておいて、4年間で3回も1位を獲るということは、それに見合う力が無いとできるものではないので、素直に凄いと思います。

それにしても、1位のスピーチに立った瞬間の、指原のあの風格!

口では謙虚な言葉を語っていましたが、彼女の内面からにじみ出る自信を、私は感じました。

連覇するってこういうことなんだな。

1.メンバー発表で感じた懸念

2016年6月18日、土曜日。

アウェー3連戦を終えた広島は、4試合ぶりのホームゲームに、浦和レッズを迎えました。

ACLでグループリーグを突破した浦和は、試練の5連戦の3戦目。

ホームの鹿島戦、アウェーのG大阪戦と連敗したため、この広島で是が非でも勝利しようという意気込みで乗り込んできました。

この日は、G大阪戦で起用しなかった宇賀神と梅崎、出場停止だった森脇がスタメンに戻り、チュンソンや直樹、一頓挫あった陽介はベンチスタートとなりました。

ターンオーバーというほどではないものの、先発メンバーは5人入れ替えており、ミシャなりに、起用には気を配っている様子でした。

一方の広島なのですが、水曜日のFC東京戦からの入れ替えは浅野のみ、という布陣でした。

よって、11人中9人が、前週土曜日の神戸戦から3試合連続スタメン、ということに。

前回の記事でしれっと書いたように、私はもう少しメンバーをいじってくれないかな、と思っていたのですが、そうはなりませんでした。

梅雨時の不安定な天候、気温の上昇、等々、連戦のダメージは少なからず残っていると思われますが、メンバー表を見た瞬間、私は、その辺りが非常に心配になりました。

あと、宮吉のベンチ外には少々驚いたのですが、浅野の起用自体は、浦和の裏のスペースを活用しよう、という意図が見えたので、理に適っていると思いました。

2.機先を制する

突然ですが、私は幼少の頃から選挙速報が大好きで、選挙のある日は、投票が終わる午後8時からTVの前に釘付けになるのが常なのです。

(因みに、チャンネルは専らNHK。民放のは演出過多でダメですね。)

で、アイドルが嫌いではない私は、AKBの総選挙にもそれなりに注目してまして、音量こそ下げてはいましたが、Jリーグ中継との2元中継という形で、チラチラ観ていました。

試合が始まった頃、こじはること小嶋陽菜が何やらゴチャゴチャやり始めたので、「何やねん」とか思って、少し気を取られてしまったのです。

そして我に帰った時、広島が先制点を挙げておりました…

要するに、得点シーンを良く見ていなかったわけですが(苦笑)、後にスカパーのダイジェスト映像で確認しました。

本当はもう少し前の場面から見たかったのですが、ともかく、シバコー先生のドリブルからのカウンターだったようですね。

ハーフウェイ手前でウタさんにパスした後、そのまま前方に走るシバコー。

阿部がウタさんに近寄りますが、特にチェックに行くわけではなく、ウタさんはフリーでボールを扱えました。

そして、わずかに進行方向を変えたシバコーが、槙野と遠藤の間でウタさんのスルーパスを受けて、ワントラップ・シュートをゴールに突き刺したのでした。

ウタさんを自由にした浦和の緩慢な対応と、遠藤の位置取りのミスを、ウタさんとシバコーの関係性だけで突いてみせた、素晴らしい先制弾でした。

試合開始からしばらくの間、広島は球際に厳しく行けていて、私は非常に満足していました。

また、攻守の切り替え時に見せる浦和のいつもの迫力が足りないようにも、私には見えました。

そんな中、前半6分で、浦和に対して1点のアドバンテージを得た広島でした。

こうして、前半15分くらいまでは、広島が優位に試合を進めていた、と思います。

3.ディフェンダーの性

しかし、その15分になろうとする頃、自陣でつなごうとする広島が、浦和の連動したプレスでボールを奪われてしまいます。

その際は事なきを得ましたが、そのワンプレーを機に、徐々に浦和が試合のペースを取り戻していきました。

実はこの時間帯、私はただのゲームウォッチャーと化してしまい、手が止まってメモを取っていなかったのですが、どうも広島が中盤のスペースを与えすぎてしまったらしいのです。

そして迎えた前半26分でした。

浦和最終ラインからの縦パスを、下がって受けた武藤(公式サイトより)がダイレクトで広島左サイドのスペースへ蹴り出します。

航平が対応しますが、バウンドが伸びた分、うまくボールを収めることができず、そこに詰めていた関根に奪われてしまいました。

宮原のカバーも間に合わず、そのまま同点ゴールを奪われてしまいました。

ここまで、関根のサイドは航平のところで何度も上手く止めていて、褒める言葉をメモしようとしていたところでした。

得点に直結する1つのミスですべてが帳消しになってしまうのが、DFの辛いところですね。

ただ、ここは関根の機敏さを讃えるべきでしょう。

4.中だるみで逆転を許す

失点の直後、広島は、青ちゃんのフィードを絶妙のトラップで受けたシバコーが、シュートを周作に阻まれる、というビッグチャンスを作りましたが、それをモノにできないと、試合は一気に浦和のペースに傾きました。

追い付いた勢いも加わって、浦和の運動量が広島のそれを明らかに上回っていました。

そして、前半40分。

浦和右サイドから、バイタルエリアのスペースに斜めのパスが出て、興梠がそれを収めると、中央に走り込んできた森脇に落とします。

広島の選手が3人、近くにいたのですが、森脇は、左サイドからペナルティアークに走り込んできた宇賀神にパスを送ることに成功しました。

そして、ダイレクトで放ったシュートが、ゴール左隅に吸い込まれていったのでした。

興梠へのパスが出た瞬間、森脇は走り始めていました。

サイドプレーヤーの宇賀神が、バイタルエリアに入り込んでいました。

正に浦和らしい得点でした。

また、この3人はいずれも、G大阪戦のスタメンではありませんでした。

比較的フレッシュな選手たちによって、浦和の2点目が生まれたのです。

対する広島ですが、森脇に対するチェックが甘すぎました。

近くに3人も居ながら、誰も当たりに行かなかったのは、如何にもまずかった。

アグレッシブさが足りなかったと言われても仕方ない、悪いプレーだったと思います。

5.らしくなかった前半の戦い

青ちゃんが退くという想像外の交代もあった前半が、1点ビハインドのまま終了しました。

後半開始直前の森保監督へのインタビューで、「攻撃面では出来ている」という趣旨のコメントがあったのですが、私は、それは少し違うと思いました。

というのも、前半はほとんど、サイド攻撃が見られなかったからです。

また、中盤でボールを保持できないため、せっかく浅野を起用しているのに、裏のスペースを使う攻撃も使えませんでした。

本数は忘れましたが、両チームのシュート数に、端的に表れていたと思います。

要するに、攻守ともに物足りない、前半の戦いでした。

6.弱み

後半の立ち上がりから、前に圧力を掛けようとしていた広島。

最初のワンプレーで、連動したチェイスでボールを奪いショートカウンターにつなげてみせたので、反攻の期待が高まったのですが、その後はまた浦和にペースを握られる展開になりました。

せっかくのプレスも、浦和に上手く躱されていました。

広島の守備には、近くにいる選手が相手のボール保持者に寄せていく、という約束事があるのですが、最近の広島は、ファーストディフェンダーが積極的に相手に絡んでボールを奪取しよう、という感じにはなりません。

相手選手Aに誰かが寄せて、別の選手にパスが出された時、その選手Bには大抵、誰も付いていません。

そして、「改めて」別の誰かが選手Bに近付いていきますが、別の選手Cにパスが回った時にはやはり、誰も付いていないことが多いです。

こうして、つながれては寄せて、またつながれて、この繰り返しになってしまうのです。

早い話が、今の広島の守備は連動性に乏しいのです(*)。

浦和や川崎のような、ポゼッション志向で個々の能力も高いチームに対して、このような対処療法的な守備を行うと、どうしても対応が後手に回ってしまい、試合運びが難しくなりますね。

残念なことに、後半16分を迎えるまで、概ね、この状況が続いてしまいました。

そう、あの時間がくるまでは。

(*)この点については、私がお世話になっているあるブロガーさんが、もっと早い時期から指摘しておられて、ここに書いたことの半分は、その指摘にインスパイアされています。

7.起爆剤

正直に言って、カズを下げることについては疑問に思いました。

疲労度の問題かと想像しましたが、まだまだこの試合には必要な選手ではないかと。

そんなことを考えていたので、その瞬間のスタジアムの盛り上がりには、全く気が付きませんでした。

寿人をピッチに迎え入れるファンサポの期待感は、スタジアム全体を一種異様な雰囲気にさせたのだそうです。

24656人の入場者の大部分が、「寿人ならきっと何とかしてくれる!」と考えていたはずです。

そして、すでにご承知の通りのことが、エディオンスタジアムで起こったのでした。

しかし、それは後の話。

この段階ではまだ、広島は1点リードを許したまま、劣勢に立たされていたのです。

8.記録に残らない貢献度

寿人が登場して少し経った頃、私はあることに気が付きました。

丸谷の位置が、青ちゃんの居た位置よりも自陣寄りになっていることに。

今年に入ってから、味方のトップと並ぶ位置に青ちゃんが居る、という場面をしばしば目にするようになりました。

私は前々から「青ちゃんの位置、高すぎひん?」と不思議に思っていたのですが、結局、周りが呼応しないので、彼が単騎で寄せに行ってもあまり効果的でない、というのが現実でした。(これも半分は受け売りです。)

しかし今、丸谷は本来のポジションに近い位置取りをしている。それはなぜだろう?

と考えた時に、寿人投入の「効果」に思い至ったのです。

それは「プレスバック」でした。

寿人がピッチインした時に指で「2」を示していたので、「2トップ・2シャドウ・1ボランチ」という布陣になった、と言われていました。

しかし実際は、寿人はトップの位置にはこだわらず、シャドーの位置まで下りてプレスを掛けたり、相手のパスコースを限定したり、そうした動きに尽力してくれました。

これは、改めて言うまでもなく、寿人が常々実行していた、彼にとってはごく普通のプレー。

そして、味方の守備の負担を軽減させてくれる、献身的なプレー。

得点にもアシストにもならない、目に見えにくいプレーですが、数字には残らなくても、その貢献度は計り知れないものがあるのでした。

9.DFW塩谷の復活

ここまで、もうすでに長丁場になっているこの記事ですが、まだまだ続きます(笑)。

さて、寿人の投入で心なしか活動的になった広島に対して、浦和には、そろそろ連戦の疲れが見え隠れし始めていました。

そんな中で迎えた後半19分、CKのチャンスから、塩ちゃんのボレーが豪快に炸裂します。

待望の同点ゴールは、近くにいた浅野を上手くスクリーンに使って槙野のマークを外した、塩ちゃんの技ありのプレーによってもたらされました。

しかし、私は直感的にこう思いました。

「寿人効果ありかな」と。

直感なので、根拠はないのですが。

ただ、いま映像を見ると、実は寿人も、自分へのマークをしっかり外していたんですよ。さすがですね。

この得点で、広島に勢いが出てきたようで、22分頃には、得点にはなりませんでしたが、この試合で初めて、流れるようなボール回しからサイドを活用した攻撃を見せてくれました。

航平から素晴らしいクロスが出たので、ウタさん決めてよ~、てな感じでしたが。

そして、その余韻に浸っていた後半24分、ついに、逆転となる3点目がカウントされたのです。

立役者はまたも、塩ちゃんでした。

センターラインを越えた辺りでボールを確保した塩ちゃんが、ドリブルで持ち上がります。

少し前掛かり気味だった浦和のスキをつくように、最前線のウタさんに縦パスを送ると、4人を引き寄せたウタさんは、裏に抜け出したシバコーにスルーパスを送ります。

森脇の足元をかすめたボールを、シバコーがダイレクトで狙いますが、惜しくもボールポストを直撃。

チャンスがついえたかに思えたところでしたが、リバウンドにいち早く反応したのが、塩ちゃんだったのです。

この一連のプレー中、浦和の守備陣は混乱してしまったようでした。

塩ちゃんの姿を皆、見失っていました。(因みに、塩ちゃんの右手で、浅野もフリーでした。)

しかし、それを差し引いても、この塩ちゃんの2得点は素晴らしかったと思います。

まさに、元祖DFW、槙野のお株を奪う、塩谷の真骨頂を見ました。

10.記録に残るしたたかな読み

逆転を許し、攻撃を厚くしなくてはならない浦和は、28分、ついに3枚替えを敢行します。

実況席は驚いたようですが、ミシャはたまにこれをやるので、私にとっては特に珍しいこととは思いませんでした。

それに、チュンソンはこういうときに勝負強さを発揮する選手なので、やはり、途中から出て来られるのは不気味でした。

しかし、後半も30分を過ぎると、さしもの浦和も、連戦の疲れから、運動量が落ちてきました。

つなぎの精度がかなり落ちてきて、ポゼッションしても、微妙なタッチのミスや呼吸のズレで、シュートまで持ち込めなくなってしまいました。

そしてそれは、途中出場の選手たちにも当てはまることでした。

焦る気持ち、疲労のためにイメージ通り動かない体、そして集中力の低下…

あの後半38分のプレーを、陽介は一生忘れないでしょうね。

それは、ウタさんのシュートがポストを直撃し、そのリプレイが流されている最中に起こったプレーでした。

周作からパスを受けた陽介が、すぐそばにいた遠藤にパスを出した、その瞬間を狙っていたのが、寿人でした。

パスを出す前に一旦遠藤の方を見た、その陽介の視界から外れたところに、寿人はいました。

まるで忍者のようにそっと近づいて、一気に捕まえてしまいました。

昨年のCSでのカズのプレー(コンちゃんのスローインをかっさらったやつ)を彷彿とさせる、ベテランらしいしたたかな読みでした。

ゴールを決めた後、ベンチに向かった寿人が最初に飛びついたのが、皆川でした。

その皆川が、ウタさんに代わって最後の交代者となり、走り回って試合を締めてくれました。

浦和も、ズラタンのオーバーヘッドなど、広島ゴールを脅かすプレーで意地を見せました。

やはり、強豪チームだけのことはありました。

しかし、最後は4-2。紆余曲折ありましたが、広島が、福岡戦以来の勝利を挙げる結果となりました。

11.同情はしないが理解できる浦和の苦境

この日の浦和は、随所に特長を出せていたと、私は思います。

特に、2点目となった一連の連携は、さすがは浦和、と讃えるべきだと思います。

しかし、客観的に見て、やはり連戦の疲労は否めませんでした。

個人的には、リーグ序盤に無理をした反動がいま来ているのではないか、と考えているのですが、いずれにしても、そうしたダメージは否定できませんね。

この試合でも、終盤に浦和らしさが感じられなくなりましたから。

もちろん、どんな状況でも「勝利」という結果が求められるのがプロの世界なので、私も、敗れた浦和に同情することはしませんが、それでも、日程とも戦わなければならない、今の浦和の苦しさは、十分に理解できます。

それは、サンフレッチェ広島のファンならば、誰もが実感してきたことでもあるからです。

ミシャの選手起用など、色々と指摘されていること、諸々、検討の余地があることも事実でしょうが、浦和レッズには、今の苦境を乗り越えるだけの体力が十分に備わっているはずです。

是非、チーム全体で乗り越えてほしいと思います。

12.風格を取り戻そう!

この日の広島は、強豪浦和から、4得点を奪ってみせました。

塩ちゃんの2発で逆転し、さらには寿人が、これまでの鬱憤を晴らすかのような痛快なゴールで、待ちわびていた多くの期待に応えてくれました。

スタジアムに駆けつけたサンフレッチェのファンサポは、この勝利に歓喜し、大いに溜飲を下げたことでしょう。

しかし、試合が終わった直後、私は「この勝利を素直に喜んでいいのかどうか分からんなあ…」と思いました。

確かに、これ以上ない形で勝つことができたのは、素直に嬉しかった。

でも、早い時間に先制点を奪いながら、今日も、一度は浦和に逆転を許しています。

これで広島は、3試合続けて先制後に追い付かれることになったわけです。

そこに私は、一抹の不満を感じたのです。

去年のサンフレッチェであれば、先制したその後は、無理をしてバランスを崩す、などということは決してありませんでした。

スキあらば追加点を狙う、という姿勢を維持しながらも、相手の反撃を正面から受け止めて、常に自分たちが主導権を握る、そんな戦い方をしていました。

それなのに今年は、せっかく先制しても、なぜか前のめりになって、わざわざ相手にスキを与えるような、そんな戦い方が非常に目立っています。

今シーズン、サンフレッチェ広島のチームスローガンは「WE FIGHT TOGETHER 2016 挑戦」です。

昨年の優勝にあぐらをかくことなく、今年も「挑戦者」として新たにタイトルを獲りに行く、その覚悟を示したものです。

その意気や良し、と私も思います。

だけどそのために、昨年まで培ってきた長所を置き去りにする必要はありません。

4年間で3回J1リーグを制覇した、その戦績は、広島が「継続」の歴史を積み重ねたことによって、もたらされたものです。

その土台の上に「挑戦」という上乗せをしていくことが、今の広島に求められていることなのではないでしょうか。

サンフレッチェ広島は、試合の動向を機敏に察知し、メリハリのある攻守ができるチームだったはずです。

誰もが舌を巻いた、洗練された落ち着いた試合運びを、いま一度思い出してほしい。

そして、自信に満ち溢れた戦いぶりを、私たちに見せてほしい。

私は今、そんなことを思っています。

13.あとがき

この記事、スマホだと何ページになるのかなあ、と思いながら、あとがきを書いています。

試合が終わって日が経つごとに、読んでもらえる可能性が低くなっていく、と経験上分かっているのですが、例によって言いたいことを詰め込んでいると、一晩だけでは書き切れなかったりして、どうしても投稿が遅れてしまいます。

この記事も、実は3日掛かりで書いています。

(まあ、ノルマとか締め切りとかが無いので、のほほんとしていますけど。)

しかも、本来、12章の位置には、例のペットボトル事件のことを書いていたのですが、まさかのスパム判定。

表現を変えても、どうやっても解消されなかったので、1時間ほど格闘した末、泣く泣くカットしたのでした(悲)。

かなり重要なとこだったのに…

そんなこんなで、ようやく書き上がりました。

思わぬ大作になりましたが、楽しんで頂けたなら幸いです。

それではまた。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。