【ACL】運も実力のうちと言いまして ~ブリーラム戦レビュー~

0.まえがき

昨日の夕方、会社からの帰り道、私は、回送列車に乗って帰りました。

な~んて、もちろんウソで、乗った列車がたまたま、故障で行先表示が「回送」になっていたというお話でした。

迷惑をかけたと、車掌が何度も恐縮して謝っていたのですが、私はむしろ喜んでいました。

実は、個人的には3回目の出来事でして、本当は「JRさん、しっかりして!」と言いたいところなのですが。

でも、外から見たら、回送列車に満員の客が乗っているんですからね。想像したら面白くなってしまって。

乗る時はちょっと戸惑ったから、迷惑を被ったのは事実ですが、まあ、滅多にないことなので、そんな場面に出くわしたのは幸運なのだ、と考えてみた訳です。

1.ベテラン、彼の地に立つ

2016年4月5日、火曜日。

夕方のタイは、それでも30度を超える気温を誇り(?)ながら、春まだ浅い日本から訪れた選手たちを出迎えました。

正に、真夏の一戦!

遠征メンバーがハッキリと分かってはいなかったのですが、寿人やカズがタイに上陸していることは知っていました。

ACLのアウェー戦にもし出場すれば、寿人は3年ぶり、カズに至っては6年ぶり、となるのだそうで、さて、どうなるのかな?と思っていたところ…

佐藤寿人、堂々の1トップ、スタメン出場となりました。

後ろに控えるシャドーの位置は、若い2人、チャジと宮吉が組みました。

また、ミカやウタさん、そして宮原などがベンチ外で休養した代わりに、吉野、(高橋)壮也、ボムくんがベンチ入りを果たし、出場機会を窺いました。

2.アウェー感

サンフレッチェをホームで迎え撃つのは、タイ王者、ブリーラム・ユナイテッド

広島での前節は、3-0で広島の勝利となりましたが、「今日の試合は、あの時とは別の試合になるはずだ」と考えました。

出場停止の主力が戻ってくるということもあったし、とにかく、気候が日本とは違い過ぎていましたのでね。

それにしても昨日の放送、思わず「画像わるっ」と言ってしまいました。

「はるばる出掛けた感」がハンパなかったのでした。

3.前節とは別の試合に

試合が始まり、立ち上がりからの流れを追っていて、まず最初に思ったのは、ブリーラムが前節の内容を踏まえた戦い方をしている、ということでした。

解説のキーちゃん(北澤豪氏)によると、立ち上がりのブリーラムのDFラインは、前節よりも低かったらしい。

私はその辺は気が付いていなかったのですが、その話を聞いて、浅いディフェンスを浅野に切り裂かれてしまった、あの時の教訓が効いているらしい、と思いました。

当人はケガで居ないのに、それでいいのかなあ、とも思いましたけど。

(試合全体を通して見ると、やっぱりラインは高めだったようですが。)

また、青ちゃんへのプレッシャーが、前の試合より強まっていたのも印象的でした。

そして、ホームの声援に後押しされたか、前線からのプレスが有効に機能していましたね。

広島がそれをかいくぐれず、ピンチになりかける場面もありました。

4.互角に推移

前半15分頃までは、どちらかというと、ブリーラムが主導権を握っているような雰囲気でした。

プレスも去ることながら、流動的な攻撃で、広島に我慢を強要するような戦いを見せていました。

それでも、前半20分になろうとする頃からは、広島もペースを持ち直して、両者互角の流れに持ち込むことができました。

そして、前半終了近くまで、互角の態勢で試合が推移しました。

しかも、お互いのいいところが垣間見える、いいファイトでした。

ブリーラムは、前節でも見せていたコンパクトな陣形で、広島のパス回しを制限していました。

また、カウンターの時、必ず1人は縦にフリーランしていて、そこに入れば即チャンス、という状況を作り出していました。

前回も感心したのですが、伊達にタイで王者として君臨していないな、と思わせる実力を見せていました。

一方の広島も、サイドの争いでは優位に立てていました。特に右サイドでは、裏のスペースを何度も陥れ、クロスまで達することができていました。

それに、プレスをかいくぐった時は、前方にスペースが広がる分、チャンスにつながる感じでした。

5.2人で点を取ってきた

このまま前半が終わることになるかな、と思っていた、前半45分でした。

ミズの縦パスを、寿人が敵陣中央で受けてキープ。

相手DFが寄せてきますが、ちょうどカウンターのようにスルーパスを送ると、そこに宮吉!

やや右に流れたところから、体勢を崩しながらのシュートとなりましたが、ボールはゴール左隅に吸い込まれていきました。

最後のところ、テイクバックを大きく取って、蹴る時のインパクトを強くした、いいシュートでしたね。

今日の宮吉は、随所に技術の高さ、良さを見せていましたが、この瞬間が特に素晴らしかったと思います。

改めて映像を見ると、ミズのボールを、宮吉と主審が見事にスルーしていましたね(微笑)。

それにしても、寿人があの位置で全くフリーになっていて、しかも、その横を宮吉が、躊躇なく裏のスペースに走り込んでいて、いやあ、綺麗なゴールでした。

6.ある意味斬新なハーフタイム

前半が終了し、いつもなら実況席での振り返りの時間が来るはずですが、この日は、ニュース番組の中でサッカーを中継する、というスタイルだったようで、振り返りはゼ~ロ~(笑)。

ある意味、斬新でした。

キーちゃんは、前半をブリーラムのペース、と見ていたようですが、その評価は妥当でした。

私自身は、互角の時間帯がかなりあったと思ったのですが、ディフェンス面で決して満足ではないとも思っていました。

まあ、それでもゼロに抑えることはできたので、広島にとって、まずまずの前半だったかな、と。

7.ミスに肝を冷やす

後半に入り、前半いまひとつだった球際の強さを取り戻そうとしていたように見えたサンフレッチェでしたが、時間が経つにつれて、徐々にミスが目立ち始めました。

特に青ちゃんは、いつもは精度の高さを見せるだけに、ちょっとミスが増えるとすごく目立ってしまいます。

後半11分頃には、たぶん丸谷のミスからつながれて、決定的なピンチに陥ってしまいました。

ブリーラムのコンパクトな戦いはまだ続いていましたし、その中で広島がリスクを負うこともありましたが、それはやっぱり怖いと思いましたね。

8.布石

後半14分、寿人から皆川への選手交代がありました。

監督の意図は分かりませんが、中盤で作れない展開になってきたので、皆川に、前線でボールを収めてくれることを期待したのかな、と思いました。

そして、試合は徐々にオープンな展開に。

私の目には、広島側がそんなに疲れている感じはしなかったのですが、試合後の評価は「両チームとも疲れていた」という意見が大勢でした。

後半26分、宮吉に代えてシバコーを投入。

とにかくボールを落ち着かせてほしい、と私は願いました。

9.ダメ押しと試運転

互いに大きなチャンスを迎えたり逃したりしながら、後半も40分が過ぎました。

そろそろ2点目を取ってほしかったし、選手交代も考えたいところでした。

そんな後半42分。

丸谷の縦パスを、2人のディフェンダーを引き連れてセンターサークルに受けに来た皆川が、スルー気味にそらすと、裏へ抜け出したのは、交代出場のシバコーでした。

ドリブルで駆け上がり、ペナ内に入り込んだところで放ったシュートは、相手DFに少し当たったようでしたが、無事、ゴールネットに届いたのでした。

時間帯的に、この得点でほぼ勝負あり、となりましたし、故障上がりのカズの試運転にも成功したし、とても大きな2点目でした。

0-2。グループリーグ突破のために是が非でも欲しかった勝利を、手にすることができました。

10.運も実力のうち

この試合、広島は勝利したものの、大きなピンチが何度かあり、かなり際どい勝利でした。

特に、後半10分過ぎ、左サイドを突破されてからの、ティーラトンのシュート、こぼれ球を狙ったスシャオのシュートに至る流れは、完全に同点を覚悟しました。

あのシュートが卓人の正面に飛んだことは、僥倖と言っていいと思います。左右に振られた彼は、完全に体勢を崩していましたから。

この場面を含め、今回の勝利には、多分に「ラッキー」が含まれていました。

ブリーラムのシュートが、卓人の正面だったり、枠から大きく外れたり。

ブリーラムの選手が技術的なミスをした、という見方があり、確かにそう言えるのですが、サンフレッチェにも似たような場面は何度かありました。

結果として、広島の側にうまく転んでくれたのは、幸運だったと思います。

ただ、そうした幸運が結果的に勝利に結びついているのは、実は、昨年の優勝の過程でもよく見られた現象でした。

今回勝てたことも、幸運だけが理由ではありません。

サイドでの優位性、裏のスペースの使い方、カウンターの迫力、そして、最後の精度。

暑さの中、ブリーラムの実力に肝も冷やしましたが、広島は随所に、相手を上回る力を示しました。

改めて、勝利の味を噛みしめたいと思います。

11.最初からそのつもりなのです

FCソウルと山東魯能が引き分け、それぞれ、勝ち点を10と7に伸ばした、F組の状況。

勝ち点6の広島にもチャンスは十分ありますが、到達可能な勝ち点12を逃してしまうと、途端に難しい情勢になってしまいます。

ブリーラムがソウルや山東に負ける、とは決まっていませんが、広島としては、やはり残りを連勝しなければ、突破は困難だと言わざるを得ません。

しかし、思い出して下さい。

どのみち、序盤に2連敗した時点で、「残り4試合すべて勝つこと」を目指す戦いになったのだ、ということを。

いま初めて、残り2連勝が命題になった、というわけではないのです。

次の山東魯能戦は、負ければ文字通り終わりとなる戦いです。

アウェーの地で、前回敗れた相手との戦いです。

簡単に勝てるとは思いません。

思いませんが、でも、私は、約束したことを守りたいと思います。

私は、選手を信じて応援し続けます。

いい結果を期待しています。

12.あとがき

まえがきの最初の一文、本当は「今日の夕方」で始まるはずでした。

実は昨夜、4節を書き終えたところで、眠くてどうしようもなくなり、まだ夜10時半過ぎだったのに眠ってしまったのです。

おかげさまで、朝寝坊することはありませんでしたが。

春眠暁を覚えず、などと申します。

目覚まし時計のかけ忘れとかないように。

それと、列車で眠ってしまって、乗り過ごしてしまわないように気を付けましょう。

降りる駅で、運良く、目が覚めるとは限りませんからね。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。