原点回帰で連戦へ ~仙台戦レビュー~

0.まえがき

前節の大宮戦の後、私は、次の仙台戦がテレビ中継されるかどうか、ネットで探しました。

スカパーを契約していない私なので、観られるチャンネルは限られています。

そして、NHKをはじめ、それらのチャンネルではどうやら放送されないらしい、ということが分かりました。

現地に観に行ける(金銭的な)余裕もないし、と観戦を諦めていたその日の昼休み。

いつものように SANFRECCE Diary を読んでいたら、何と。

「スカイA(※)で生放送が予定されています」と書いてあるではありませんか!

早速、ひかりTVの番組表で確認したところ、ありましたよ、放送予定。

「どうせ観れないから」と、食事でもしてゆっくり帰宅しよう、という予定は、もちろんキャンセル。

飛ぶようにして帰宅したのでした。

いつもながら、せと☆ひできさんは有難い方です。

今回も助けていただきました。この場を借りて、感謝感謝です。

※2016年4月より、チャンネル名称が「スカイ・A sports+」から「スカイA」に変更になったそうなので、当ブログでも、今回以降、表記を改めます。

1.ウソではない平日開催

2016年4月1日、金曜日。

サンフレッチェ史上、もしかすると初めてかもしれない、金曜日のナイトゲーム

4月5日にタイでの試合を控えていることを考慮されてのことでした。

先に書いておくと、この仙台戦の観衆は9587名。

春休み中とはいえ平日の試合であり、夕方まで雨が降っていたみたいだし、マツダスタジアムで巨人戦があったことを考えれば、まずまずの動員だったと思います。

2.驚きのメンバー発表

19時30分という、いつものナイトゲームより30分遅い試合開始とはいえ、スタメン発表は終業時間よりも前。

私は、帰りの列車の中で確認したのですが、満員電車の中にいるのに、思わず声を上げそうになってしまいました。

ジャガーがメンバーに入っていない!

中国新聞のコラムの人のように慌てふためいたりはしませんでしたが、まあ、驚きました。

本来、外れる理由などないですし… 実は、何か嫌な予感がしたのです。

具体的に何を思ったのかは書きませんが、色々なことを考えてしまいました。

(浅野の状態については後ほど。)

3.居るメンバーでやるしかない

そういう状況の下、ウタさん1トップ、シャドーにシバコーとチャジ、という布陣で臨んだサンフレッチェ

長期離脱のササショーのところは、当然、ミズが収まりますが、控えにDF不在、となってしまいました。

もっとも、いざとなれば宮原がいますし、航平に任せる手段も残っていました。

それに、ベンチにカズが戻ってきたのがやはり大きく、ひとまず、最低限の手当てが可能な状況ではありました。

むしろ、サイドの控えが1枚だけなのが気になりました。

その意味でも、ササショー離脱は痛かったですね。

まあ、居ないもんはしゃーないか、と思うしかありませんが。

4.不満の無い前半

試合開始から、ウタさんがフリーで前を向く場面を2回ほど創出したサンフレッチェ

このチャンスはモノにできませんでしたが、まずは上々の立ち上がりでした。

しかし、仙台にとっても、相手に得点さえさせなければ十分のはずでした。

個人的に、このカードはいつも「どちらにとっても不満の無い前半」になる気がするのですが、今回もそんなような前半に、私には見えました。

ただ、広島目線から見ると、最初の25分間ぐらいは、仙台にあまり攻撃を作らせなかった、という印象がありました。

また、これは見方が様々あると思うのですが、前半の広島は、落ち着いて戦えているように、私は思いました。

決して急ぎ過ぎることなく、慌てずに試合を作っていたように思ったのです。

ともあれ、0-0で前半は終了。

改めて、広島、仙台、共に不満は無い前半だったと思いました。

5.不運なPK

後半に入り、広島が、ファールやミス絡みでピンチを招き、少々危なっかしい雰囲気になりつつありました。

そんな後半5分頃のことでした。

ミカとのワンツーで右サイドを突破した塩ちゃんが、エリア内で三田に倒された、という判定で、広島がPKを獲得したのです。

主審の笛が鳴った瞬間、私は「こりゃ、PKじゃろ」と思いました。

解説のナカジ(中島浩司氏)も言っていたように、塩ちゃんがわずかに前に入っていたので、後方からチャレンジした三田がファールを取られてしまったのでしょう。

足がかかってしまったのも確かでしたし。(後で映像を確認してみた感想です。)

但し、これは私が広島ファンだからそう感じた、という面は否定できません。

もしも立場が逆で、広島がファールを取られていたとしたら、「今のがPKなんか?!」と思っていたはずですから。

しかし、ここで間違いなく言えるのは、「ペナルティエリア内ではこういうことが起こる可能性が高い」ということです。

だからこそ、ペナ内では細心の注意を払ってプレーする必要があるのです。

例えば、なでしこJAPANの岩清水選手が、先の五輪予選中に、PKを与えてしまった場面がありました。

私は「PKは厳しいんじゃないの?」と思いましたが、後から思えば、彼女があと少しだけ注意深くプレーしていたら、あのPKは無かったのかもしれません。

三田のファールが故意ではないことは映像上からも明らかですが、結果的に、ペナ内で不用意なプレーをしてしまった、そうなってしまったのは、残念ながら事実という他ありません。

その意味で、これは三田にとっても、仙台にとっても、不運なPKだったと言えると思います。

6.1点目を継承した2点目

ウタさんがPKを決め、先制点を取ってからも、広島は気を抜くことなく、ボールを保持して、仙台に主導権を渡しませんでした。

そのことが、ウタさんによる2点目につながった一因であろうかと思います。

スローインを受けたチャジが、ペナルティアーク付近でフリーになったシバコーにパス。

シバコーのシュートは空振り気味になりますが、わずかにコースが変わって、ウタさんの前に転がりました。

結果的にスルーパス風になり、まさに結果オーライだったわけですが、映像を見ると、青ちゃんがウタさんの背後に回り込んでいたので、シバコーが普通にシュートできていたら、別の形で得点が生まれていたのかもしれません。

いずれにしても、相手の人数が多くても、ここ、というポイントを突いての得点でした。

広島らしさが出たと思います。

7.チャジ、最高の初ゴール

3点目は、点を取りに来た仙台の背後を襲う、厚みのあるカウンターから生まれました。

ドリブルで駆け上がったカシッチが、ペナの角から入ってシュートを放ちます。

ディフェンダーに防がれますが、その跳ね返りが幸運にも、逆サイドへのクロス状になって抜けていきました。

そこにフリーでいたのが、チャジでした。

彼のシュートがゴールネットを揺らした瞬間、私は、これがチャジのJリーグ初ゴールだとすぐに気付いたのですが、実は、プロ初ゴールだったんですね。それには気が付きませんでした。

後で見直すと、シュートは若干、上に浮き加減で、ちょっと見、怪しかったですね(微笑)。まあ、キーパーもいましたしね。

試合後のインタビューに感動した、という方がかなりおられるみたいですが、確かに、チャジ自身も感極まるところがありましたね。

良かったと思います。

8.今季初の無失点で快勝

3点差をつけた広島は、余裕ある試合運びでカウンターを狙いました。

仙台も、もちろんこのまま敗れるわけにはいかないので、前で圧力を強めて、広島にボール保持を許さない時間帯を作ってきました。

広島ゴールに際どく迫る場面もいくつか作りました。特に、最後のプレーにおけるウィルソンのシュートは、広島ファンとしては冷や汗ものでした。

何せ、無失点がかかっていましたから。

本当は、あと1枚の交代カードをカズのために使ってほしかったのですが、宮原も守備で奮闘していましたし、バランスを崩すのを良しとしなかったのでしょう。

こうして、リーグ戦5試合目にして初めて、ようやく無失点で試合を乗り切ることができたのでした。

今年初の劇場は、さぞ楽しかったことでしょうねえ(微笑)。

9.仙台への評価

ちょっとおせっかいな気がしますが、仙台の印象について。

私が仙台というチームに持っていたイメージは、4バックの布陣でバランスよく守備を行い、サイドをシンプルに使って攻撃を組み立てる、というものでした。

そして、この試合でも、基本的にはそのイメージ通りの戦い方だったと思いますが、ナカジの解説で、「サイドで数的優位を作り、崩し切ろうとしている」、そういうスタイルに取り組んでいる、ということを知りました。

「なるほどなあ」と思いながら観ていました。

ただ、この試合に限って言うと、ゴールに向かう「迫力」という点で、物足りなさを感じました。

広島ファンの目線で見たときに、あまり怖さを感じなかったのです。

片方のサイドに人数を掛けて、ある程度崩せたら、相手が手薄になった中央や逆サイドに素早く展開していく方がいい。

一般論ですが、その方がチャンスを拡大させやすいと思います。

確かに、人数を掛けて崩しに来られたら、守る方も神経を使うとは思いますが、それでも、左右に振られる方が守りにくいはずなので。

以前、川崎に対しても似た指摘をしたのですが、J随一の破壊力を持つ川崎の攻撃でさえ、中央をパスで崩しに来るだけなら、守備側もそこそこの対応はできますから。

私は、(いい意味で)派手さはないが、自分たちの目指すスタイルを愚直に貫こうとする、仙台の質実剛健なところが結構好きなんです。

今は、取り組んでいる戦術を自家薬籠中のものにする過程なのかもしれませんが、それが一段落したら、その後は、攻撃の幅を広げていく方向を見出してほしいと思います。

10.広島は未だ発展途上

さて、広島です。

トップに起用されたウタさんが2得点を挙げ、「広島にフィットした」という評価が、そこここで聞かれるようになってきました。

シーズン前からの関心事であり、結果につながっているという点で、この評価はまずまず妥当だと思います。

が、私は、仙台戦を観る限り、必ずしも、まだ手放しで褒めていい状況でもない、と思いました。

というのは、前半に関して、ウタさんが、1トップに入って逆に困っているように、私の目には見えてしまったのです。

また、ジャガーが抜けたからかもしれませんが、連携面でややギクシャク感があったのと、なんかゴチャゴチャして整理し切れていないような感じが見受けられました。

もちろん、この短期間で、ここまで関係性を構築できたのは、ウタさんと周囲の努力によるもので、それは素晴らしい成果だと思っています。

しかし、サンフレッチェにいる限り、誰とでも連携することができなければなりません。

中断期間中の練習で、ジャガーやシバコーと連携の確認をずっと行なってきた、と(確か中国新聞で)読んだのですが、今後は、他の選手ともそういう関係を構築できなければならない訳です。

要するに、広島は、まだまだ良くなる余地を大いに残している、発展途上にあると思うのです。

逆に言えば、今は下位に甘んじているACLでの戦いも、この伸びしろを考慮すれば、可能性は十分にある、ということにもなるのですが。

11.懸念

懸念された、浅野のケガの状態について、今日(2日)になって、クラブから公式に、「右腸腰筋損傷で全治3週間」と発表されました。

放送では「右太ももの負傷」と伝えられましたが、部位的には、股関節に近い側になるのだと思います。

いずれにしても、タイの遠征メンバーからは外れましたし、20日の山東魯能戦も、現地入りは自重させることになるでしょう。

15日の新潟戦に間に合う可能性はありますが、この際、治療に専念してもらいたいところです。

一方、先日、ガクトの新潟への期限付き移籍が発表されましたね。

ブリーラム戦のレビューで「ブレークスルーを期待したい」と書いた矢先のニュースで、これも、満員電車の中で声を上げそうになりました。

カズ&浩司が全体練習に復帰、という明るい話題はあるものの、ササショーに続いての戦線離脱2題は、やっぱり残念という他ありません。

まさか、ここにきて選手層の不安を懸念しなければならなくなるとは。

チャジや宮原は活躍してくれていますが、下からの突き上げがもっと必要でしょうね。

特に、サイドを担うボムくん(キム・ボムヨン)や高橋壮也には、大いに期待したいのですが。

12.原点回帰

そんな懸念がありながら、ACLのブリーラム戦から、前節の大宮戦、今回の仙台戦と、広島は3連勝。

ようやく、一時の苦悩から抜け出しつつありますね。

今回の試合で心強いと感じたのは、守備をベースにして効果的に攻撃する、というサンフレッチェの形がよく見られたことでした。

そして、0-0の展開が続いても、全くじれることなく、自分たちのペースで試合を進めていける「割り切り」が感じられたことでした。

勝てなかった頃の広島は、そんな腹を括った試合ができていませんでした。

自らのミスから失点したり、焦ってバランスを崩したり、そうして自滅気味に負けていたのです。

しかし、この仙台戦では、そうした危うさがほとんど見られませんでした。

もちろん、自陣でのつなぎを狙われてシュートに持ち込まれる、ということも多少はありましたが、結局、最後のところを崩されたのは数えるほどでした。

これから、中4日がベースの長い連戦が続きます。中3日の場合もあります。

タイまで出向かなければなりません。山東省も遠いです。

また、タイから戻ってきたら、次は鹿島です。昨年勝てなかった、強敵です。

かなり大変ですが、しかし、落ち着きを取り戻しつつあるサンフレッチェなら、形なく敗れるという心配は少ないはずです。

選手層に不安があるのは確かですが、今いるメンバーで総力を挙げて戦うのが、サンフレッチェ広島の持ち味ですからね。

期待して、応援していきたいと思います。

13.あとがき

今日も長いなあ(笑)。

最後に、試合中の気付きをひとつ。

前半27分頃、相手のCKのとき。

「取ったら走るよ!」というポイチさんの声が、集音マイクに入ってきました。

イヤーDVD等ではもうおなじみの、あの口調でした。

いやあ、味がありますねえ。

ほんじゃあね(笑)。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。