基本を疎かにしていないか ~湘南戦レビュー~
0.まえがき
突然ですが、私は、ブログで「健全な議論をしたい」と標榜している人を、ほとんど信用していません。
理由は、以前、そのようなあるブログにコメントをして、嫌な思いをさせられたからです。
そのブログの主は、自らは出典を明らかにしないくせに、コメントを寄せた人には出典を要求し、出来ないと責めるという、著しく公正を欠く人物でした。
そして、とにかく異論は一切認めず、逆に攻撃を仕掛けるという人物でした。
もちろん、都合の悪いコメントは全てもみ消して。
私は、不用意にコメントしたことを後悔しました。
そして、このままやり合っていたら疲弊してしまう、と思ったので、偶然読み落とした箇所を指摘されたのを機に、負けたふりをして撤退したのでした。
スポナビブログには、そんな宣言をしていなくても、健全な議論ができるブロガー氏が、大勢おられます。
例えば、「FCKSA66」さんの冷静沈着な評論には、いつも感服しています。
また、「キキアシワアタマ」さんは、検閲なし、コメント削除も原則しない、というスタンスで、常に門戸を開いておられます。
(かなり強気な物言いをされる方なので、読んでいてハラハラしてしまいますが(笑)。)
そうした方々に共通しているのは、自ら発した言葉に責任を持っておられる、というところです。
自分の意見に責任を持っているから、異なる意見にもまっすぐに対峙することができるし、議論になるのだと思います。
お題目だけのニセモノと、無印の本物。
どちらを選択するべきか、答えは言うまでもないと思います。
1.昨年最終節とは別の戦いへ
2016年3月12日、土曜日。
久しぶりに中5日空いての試合となった、湘南ベルマーレとのホームゲーム。
いつもより少し早い、13時のキックオフとなりました。
今年のJ1で初めて、地上波での放送がなかったのですが、幸い、スカイ・A sports+ HD チャンネルで生中継されました。
解説はおなじみ、吉田安孝さん。ピッチリポートもおなじみの掛本智子さん。
発表されたメンバーを見ると、広島は前節とスタメン、控えともに同じでした。
一方の湘南は、主力数人が離れたこともあり、昨年最終節の時とはスタメンが6人入れ替わっていました。
正副GKが全く異なっていたことに気付いて、移籍が大きく影響していることを物語っている、と思いました。
その昨年最終節、広島が5-0で勝利して、年間勝ち点1位を確定させたのですが、しかし、そのうちの3点は、チームを去ったドウくんが挙げたものでした。
当時書いたように、あのスコアは望外のものでした。広島と湘南との力差を表したものではありませんでした。
それに、年が変わり、今は両者ともに新しいチームになっています。
あの日の大勝は忘れるべきだ、と、私は自分に言い聞かせたのでした。
2.押さえこみ開始
試合が始まり、広島に初めてボールが渡った時から、湘南のものすごいハイプレスが、広島守備陣を襲いました。
ACLでは、ここまでのプレスはありませんでした。Jリーグのチームは、広島をよく知っています。
けれど、さすがは広島、落ち着いてパスを回し、プレスをかいくぐっていきます。
特に、卓人の安定度は信頼感抜群。2年前とは別人のようでした。
湘南の圧力が厳しい分、それをかいくぐった後にはスペースが広がり、広島は、フリーの選手を多く作ることができました。
また、大きなサイドチェンジのパスを多用し、ピッチの幅を大きく使った攻撃につなげていました。
両ワイドも、本来の働きで機能し、中央のスペース創出にも貢献していました。
こうして、前半25分過ぎくらいまでは、広島が湘南を押し込み、優位に試合を運びました。
湘南はほとんど形を作ることができなかったし、特に前半10分辺りの時間帯では、クリアで逃れることしかできていませんでした。
正直に言って、「これは久々に、前半10分以内に点を取れるかも」と思いました。
それほど、完全に広島のリズムで試合が進んでいたのですが…
3.ゴールが見えない
前半37分。カシッチのクロスをシバコーが折り返し、寿人とウタさんがシュートチャンスを迎えました。
寿人がシュートを放ちますが、湘南のGK村山のセーブに遭い、ゴールポストに当たってピッチ外にこぼれていきました。
実は、シバコーに渡った時点でオフサイドだったので、入っても得点にはなりませんでした。
しかし、糠喜びでもいいから、DJの「ゴール!」の声を聞きたかったなあ…
とにかく、シュートが枠に向かわないのには参りました。
30分頃になると、広島も少しペースダウンして、やや膠着した状態になりましたが、そこまでは、前述のとおり、広島のいい時間帯が延々と続いていたのです。
そこで1点でも取っておけば問題は無かったのですが、入らなかったので、前節までの悪い流れが頭をよぎって、非常に不安でした。
それでも、終了間際に、ウタさんがシュートを放ち、村山が弾き出す、という場面を作れたので、これが後半に向けてきっかけになればいい、と思いながら、ハーフタイムを迎えたのでした。
4.異変
後半に入ろうとするピッチに、チャジの姿が入っていきます。
HTでの交代?
広島ではあまりあることではないので、どうしたのか、と思っていたら、OUTが寿人だったので、2度驚きました。
後に、寿人が左足小指をケガしたことが分かったのですが、その時は大きな疑問符が頭に浮かんでいました。
「ウタさんのワントップ、なんだろうけど、これは浅野を(ケガで)使えないということなのかな?」
シバコーが左シャドーに回り、チャジが右という布陣に変更されました。
(のちに、チャジ→ジャガーの交代あり。)
そして後半が開始されたのですが…
「シバコーの寄せが甘いなあ」と思ったとたん、パウリーニョのミドルシュートが、卓人の指先をかすめていきました。
今節のベストゴールに選ばれてもおかしくないほどの、意表を突いた、素晴らしいゴールでした。
映像を観ると、チャジがパスコースを消す動きをしたことが、却って、パウリーニョへの対処ができない原因になってしまったようでした。
一旦タッチラインまで入り込まれた、その流れがあったので、仕方ない面があったかもしれないのですが、とにかく、気炎を削がれる失点になってしまいました。
5.意外な同点劇
先に失点して、苦しい立場になった広島でしたが、それでも、バランス良い攻めができているように見えたので、その点は希望を持てました。
ただ、ウタさんをトップに上げたことで、逆にボールが収まらなくなったような気もしていました。
そんな中、後半22分、CKのチャンスで、広島が幸運にも、PKのチャンスを得ました。
率直に、意外な気がしたので、後で映像を繰り返し見てみました。
が、塩ちゃんがアンドレ・バイアを柔道やレスリングの要領で引き倒したようにも見えましたが、逆に、バイアが塩ちゃんのシャツの背中をつかんで引き倒したようにも見えました。
サカダイWEBの記事によれば「塩谷がアンドレ・バイアに手で掴まれ倒されたという判定」ということだったのですが、いずれにしても、主審の判断に従わざるを得ない両チーム。
ウタさんがGKのタイミングを外すシュートを決めて、広島が同点に追い付いたのでした。
(よもや外してしまわないかと、ドキドキしてしまいました。)
6.リプレイ
試合を振り出しに戻した広島でしたが、前半と違い、相手のプレスを躱して展開、というプレーができなくなっていました。
そして、後半26分。
塩ちゃんからミカに、長めのパスが送られますが、相手のプレスに遭い、ミカのトラップが大きくなります。
そこをパウリーニョに奪われ、菊池大介(確認できず)を経由して、最後は藤田。
GKとDF3人の焦点に潜り込んで、ゴールに流し込んだのでした。
湘南のプレスの連動が素晴らしかった故に生まれたゴールでした。
しかし、広島にとっては、攻撃に転じようとしたところで相手にボールを渡し、そのままショートカウンターを食らう、という、まるで前節までのリプレイを観るかのような失点でした。
誰も藤田を見ていなかったのも問題ではありましたが…
明らかな、プレゼント・ゴールでした。
どうしてこうなってしまうんか…
7.勝てる気がしなかった
私は、正直に白状しなくてはなりません。
1-2となった後半26分以降、広島が試合を追い付いて、さらに逆転する、というイメージが、どうしても湧いてこなかったことを。
もちろん、完全に諦めたわけではありませんでした。でも、失意のうちにこの試合が終わる可能性が高い、と考えたことも事実でした。
まずは1点を奪うべく、広島は、敵陣のペナ内に幾度も進入し、チャンスを創出し続けました。
そして、終了直前のワンプレーで、相手のオウンゴールにより、同点に追い付いて、試合を終えることができました。
ラッキーな形ではあったものの、数多くチャンスを作ったからこそ生まれた得点であったし、先々を考えると、勝ち点を1つでも上乗せできたことは、イメージ以上に大きいことではありました。
しかし結局、勝つことはできませんでした。
好天に恵まれたにもかかわらず、この日の観衆は1万3千人余り。
自宅で観ていた私に言う資格はないでしょうが、敢えて言えば、非常に少なかった。
それはなぜかと考えれば、やはり、勝てていないから、そうなるのでしょう。
試合終了後のスタジアムの静寂が何を意味するのか…
寿人がひとり、観衆に向けて、両腕を挙げて手を叩き、答える姿が、とても印象的でした。
8.基本を疎かにしていないか
試合を観ていて、ウタさんを中心にした連携が、前節よりも良くなっている、いい方向に向かい始めている、という感覚はありました。
カシッチが「(ウタさんで)ボールが収まるので信じて走ることができる」という趣旨のコメントを語ったそうですが、ウタさんをシャドーで起用した時の攻撃面での形が、かなり構築されてきた印象もあります。
しかし、今、サンフレッチェの課題は、コンビネーションの構築よりも、もっと基本的な部分にあると、私は思います。
この試合、広島は21本ものシュートを放ちました。
しかし、枠内に向かった本数はおそらく、1桁台にとどまっているはずです。
※私のメモには(おそらく後半の数字だと思うのですが)「14本中枠内3本」とあります。枠内率は2割程度(!)となります。
野球では、「転がせばどうにかなる」とよく言われます。
フライを打ち上げたら、野手は取りやすい。ゴロを打てば、球がイレギュラーするかもしれないし、ベースに当たるかもしれません。
よって、セーフになる確率が少しでも高いゴロの方が有効である、というような意味で使われる言葉です。
サッカーでも同じことが言えます。
宇宙開発してしまったら、ゴールの可能性は皆無です。でも、枠に飛ばしておけば、何かが起こるかもしれません。
誰かに当たって入るかもしれないし、選手が交錯してGKがボールを見失うかもしれません。
とにかく、シュートを枠内に飛ばさなければ、話になりません。
そして、今の広島には、枠内シュートが少なすぎるのです。
全てのケースで浮かしてはいけない訳ではありません。
例えば、エリア外から打とうとして、相手がブロックに来た場合は、当てないように浮かして蹴るべきでしょう(当たって跳ね返った場合に、カウンターの危険があるため)。
でも、相手が誰も寄せてこないときは、抑えたシュートで枠内を狙わなければなりません。
左右に、上に、外している場合ではないのです。
私が中学生の頃、サッカー部の練習でよく言われたのが、「(シュートを)練習で入れられないのに、試合で入れられるわけがない」という叱咤でした。
私なぞは下手くそなので、ドフリーで練習しても、入らない方が多いかもしれませんが、プロはそうではないはずです。
サンフレッチェの練習でも、シュート練習はすると思います。
その時、すべてのシュートを外さず決める、そんな高い意識で臨んでいるでしょうか?
ディフェンダーを置いた場合も同様に、全て決め切る意識で臨んでいるでしょうか?
そういう意識を全員が持っていると、私は信じたい。
でも、それが試合で表現されなければ、期待に応えたことにはなりません。
選手は皆、「精度を上げていかなければならない」と課題を口にしますが、結果として表せなければ、万人を納得させることはできません。
連戦が続き、コンディション調整が困難な中、一定の精度をキープするのは大変だと思います。
それでも、選手はやらなければなりません。
あれだけチャンスを作れるのだから、精度を高めれば、得点は増えます。
頑張ってほしいです。
監督・選手が数多くの勝利を味わえることを、切に願います。
9.あとがき
基本を疎かにしていないか。
我々ブロガーも、時々は自問自答する必要がありますね。
それから、読んで頂いているかどうかは分かりませんが、
まえがきでブログ名を引用させて頂いたブログ主のお二方。
無断で引用して済みませんでした。
非難しているのではありませんので(むしろ逆)、大目に見ていただけるとありがたいです。
さて、次は水曜日、ACLの3試合目ですね。
今回、色々書きましたけど、気持ちはもう切り替わっています!
いい方向に進んでもらえるよう、応援するしかありませんからね。
諦めたらダメですよ!
それでは。
最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。