いろいろともったいなかった勝ち点1 ~名古屋戦レビュー~
0.まえがき
いつも多くの方にお読みいただき、ありがとうございます。
さて、私が書いているレビューを読んで、ゴールシーンだけやけに詳しく書かれていることに、気付いている方はどのくらいおられますでしょうか。
どうしてそんな文章になっているのか、理由は簡単で、得点までの流れをユー・チューブ等の映像で確認しながら書いているからです。
試合会場やテレビでリアルタイムに観戦していると、ボールや選手の動きに視線が追い付かないことがままあります。
特に、得点の場面は重要なので、起こった事実を正しく書くために、必ず、映像で確認するようにしています。
そもそも、記憶力が落ちているし、老眼も始まっていますのでね(笑)。
確認作業は、やはり必要です。
当記事で後に出てくるある得点も、詳しく確認すると、リアルタイムでは追い切れなかったロジカルな動きに気が付いたりして、なかなか興味深い題材でした。
1.目指すは勝利のみ
2016年3月6日、日曜日。
5日前の大敗から帰国し、サンフレッチェ広島は、中4日でのアウェーゲームを、名古屋グランパスと戦いました。
公式戦3連敗中と苦戦の広島は、ウタさんをリーグ戦では初めてスタメンで起用しました。
また、練習中に痛めた森崎カズに代わり、宮原が、これも初めて、ボランチでのスタメンに就きました。
もちろん、カズつながりで選ばれたのではなく、丸谷との競争に勝利し、スタメンを勝ち取ったのでした。
一方の名古屋は、新監督を迎え、昨年とは違うチームに生まれ変わろうとしている由。
新外国人3名がセンターラインに名を連ね、田口や永井らが脇を固めるという布陣でした。
広島は半月ぶりの勝利を、名古屋はリーグ戦の連勝を、それぞれに目指す戦いでした。
2.不思議な感覚
この試合は、NHK名古屋とNHK広島が放送してくれたので、自宅に居ながらにして、名古屋での試合を楽しむことができました。
受信料はきっちり払っているし、大威張りで観戦です(笑)。
実は、びわ湖毎日マラソンから、ニュースを挟んで、午後3時5分からの放送ということだったので、「試合の途中から観ることになるのだろうか?」と、少し危惧していました。
しかし、ホーム開幕戦のセレモニーか何かあったのかどうか、それは取り越し苦労でした。
ベンチ前で円陣を組み、鬨の声を挙げてからピッチに向かう、名古屋の選手たち。
それにしてもシモビッチ、画面で観ると、やっぱり高いなあ…
永井のスピードと共に、要注意だなあ、と思いました。
一方の広島、試合開始直後に気が付いたのですが、シバコー先生の位置が、いつもの左サイドではなく、右サイドに移っていました。
ひょっとして、ウタさんが左の方が活きる、ということなんでしょうか。
見慣れたものとは違う、不思議な感覚がそこにはありました。
3.ペースが狂う
試合開始当初から広島がボールを握り、優勢に試合を進めていたように見えていました。
名古屋の両翼は、矢野&安田という、攻撃力に定評がある両選手でしたが、広島は、そのサイドの争いでも、彼らをほぼ自陣に押し込めていました。
この辺りは、試合前にポイントの1つとして考えていたことでしたので、ここで勝てていたことは好材料でした。
また、今日の広島はじっくり落ち着いて戦えているようでした。
連敗中に見受けられた、どことなく落ち着かない雰囲気は、あまり感じられませんでした。
前半15分頃までは、以上のような感じで、うまく戦えていると思っていたのです。
しかし、サッカーでは好事魔多し、こういう優勢な戦いの中に、大きな落とし穴が隠れているものです。
相手のパスミスを上手く奪えた、と思ったところで、プレスバックしていた寿人の、ウタさんへのパスが、ショートになってしまいます。
再奪取に成功した名古屋が一気のショートカウンターを仕掛け、右サイドからのグラウンダー・クロスが、シモビッチの足にピタリとフィットしたのでした。
自陣でのプレーでした。せっかくマイボールにしたところでの、痛いミスでした。
気を抜いた風には、私には映らなかったのですが、自陣の危険なエリアだっただけに、より繊細なプレーが必要でした。
勝てていないからそうなったのか、それとも、できていないから勝てていないのか…
いずれにしても、試合のペースを逸しかねない、不用意な失点でした。
4.模索の時
幸い、失点後も、広島がボールを支配する展開は変わりませんでした。
失点直後は若干急ぎ過ぎている印象があったものの、その後は慌てずにできているように見えたので、少し安心しました。
ただ、その一方で、30分前後からしばらくの間は、広島のプレーが、全体にどことなくピリッとしないというか、微妙に上手くいっていない風に、私には映りました。
何と言うか、昨年のいい時期と比較して、プレーの判断が少しずつ遅い気がしました。
また、コンビのずれも相変わらず目立ちました。
この辺り、今シーズンの広島は、まだ手探りの部分が多く残っているようです。
5.仮の得点者
そのとき、名古屋の選手たちが7人、ペナルティエリアのライン付近にポジションを取っていました。
左サイドのカシッチから、バイタルエリアのウタさんにパスが渡った時、彼の周りには誰も居なかったのです。
赤いユニフォームが慌てて寄せていきますが、ウタさんには、何でもできる余裕がありました。
ダイジェストの映像を繰り返し観ながら、得点が入る時というのは必ず、それ相応の理由があるものだなあ、と感心しています。
誰もいない右サイドの奥のスペースに浮き球のパスを送ったウタさんのアイディア、そのボールに追いついたミカのスピード。
寿人やシバコーが相手を引っ張る動きをしていたことも見逃せません。
最後は、シバコーが動き直して、今年初めて、彼の決定力を見せてくれました。
寿人に当たったのはご愛敬、ということだったのですがね(微笑)。
6.もったいない
前半が終了し、1対1の同点。
NHK調べによれば、前半、広島のシュート数は実に12本。それも、枠内が9本。
チャンスは確実に作っているし、ゴールを狙う姿勢も十分なのですが、結果として1点に留まっているのは、やっぱり勿体無い。
相手のシュートブロックもありましたが、もう少し確率を上げたいところでした。
そして、後半、もうひとつ勿体無いことがありました。
寿人と交代したジャガーが、青ちゃんのロングボールに呼応し、オーマンに競り勝って、裏のスペースに抜け出しました。
そこで楢崎とのクロスプレーになりますが、GKのファールにはなりませんでした。
広島の選手が主審に抗議しますが、当然、受け入れられず、逆に青ちゃんが警告を受けてしまいました。
映像を見直す限り、際どいものの、接触は無いように見えますし、少なくともファールになるほどのプレーでは無かったと思います。
もちろん、リアルタイムでは、肉眼でそこまで確実には見極められないでしょうが、それでも、レフェリーがノーファールと判断した以上、(例えば誤審であったとしても)それは受け入れなければなりません。
だから、青ちゃんがイエローカードを1枚もらったのは、ただただ、勿体無いという他ありません。
確かに、もしもPKになれば、得点の大チャンスではありますが…
勝利に飢えている現状でもあり、抗議したくなる気持ちは分からんでもないけど、そこは自制してほしかったなあ、と思います。
7.痛み分け
後半も、基本的には広島の流れで試合が進んだように、私の目には見えました。
しかし、名古屋にも決定的な場面がいくつかあったように、どちらが勝ってもおかしくない接戦になりました。
が、結局、両チームともチャンスを生かし切れず、勝ち点1を分け合うことになりました。
広島にとっては、支配率やシュート数で名古屋を上回り、チャンスの数も多かっただけに、ここを勝利できなかったのは残念でした。
どこかでもう1点決めれんかったかのう、というのが、正直な気持ちです。
ただ、名古屋にもゴールのチャンスは数あっただけに、1失点のみで防げたことはプラスに捉えたいところです。
特に、永井のシュートを仁王立ちで防いだ、卓人のワンプレーが大きかったですね。
いつぞやの玉田のプレーを思い出しました。(あのときは周作でしたが。)
8.バランスの問題
これで、最初の5連戦が終了しましたね。
ゼロックス杯で順調に滑り出したかに見えた今シーズンの広島でしたが、その後、4戦未勝利ということになってしまいました。
まあ、勝ち点を1つでも上乗せできたので、そこはポジティブな要素にしたいところです。
勝てない理由について、色々なところで意見が発表されていますが、私的にひとつだけ挙げるならば、それは「バランスの悪さ」からきているのではないかと思います。
「いい守備からいい攻撃へ」というコンセプトが、広島にはあるはずなのですが、今シーズンのここまでを観ていると、攻撃の比重がやや高く感じられ、その分、チームのバランスが崩れてしまっているようです。
まるで、腰の高い相撲取りのように。
いくら強い横綱でも、腰高で強引に寄っていけば、逆転を食らう危険は高いものです。
山東魯能戦の逆転負けや、川崎戦の失点などは、その典型的なパターンでやられたのだと思います。
上手くいかないもどかしさなのか、焦りなのか、それは分かりませんが、今の広島は、行き急いで自ら躓いているように見えて仕方ありません。
もっと、以前のような「攻守のメリハリ」を意識しなければいけないと思います。
コンビネーションの問題よりも、皆がチームコンセプトを順守する、その意識合わせをすることの方が、より重要ではないでしょうか。
9.時にはエゴイストになることも必要である
とはいえ、過ぎたるは猶及ばざるが如しで、コンセプトにこだわり過ぎるのも、却って良くない結果につながることがありますよね。
その意味で、試合中にひとつ考えたことがあります。
それは、ウタさんですが、たまにはエゴイスティックにプレーしてもいいんではないか、と思ったのです。
広島の戦術や、他選手とのコンビネーションを意識して、彼はプレーしようとしてくれているのですが、それに腐心しすぎては、彼の持ち味が半減してしまいそうで、ちょっと勿体無い気がします。
基本は戦術的にプレーするけれども、時折、強引にドリブル突破してみるとか、遠目から狙ってみるとか、そういうのも混ぜていく。
その方が、相手にも読まれにくいし、選択肢の幅が広がって、チームにとってもプラスに作用するだろうと思います。
私はウタさんを、ドウくんの代役とは考えていません。ウタさんは彼自身の特長を生かしたプレーをしてくれればそれでいい、と思っています。
そうすることでウタさんは、ドウくんとは違う形で、広島に何かいいものをもたらしてくれるはずです。
なので、ウタさんには、広島の戦術に迎合するのではなく、戦術と彼の強みの高次な融合を目指してほしいと思います。
10.レジェンドの萌芽
ボランチとしてスタメンを勝ち取った、宮原。
この試合での彼のプレーは、カズの不在を感じさせないほど、目を惹く出来でした。
天皇杯のG大阪戦で3失点すべてに絡んでしまった後、私は当ブログで、「守備面でもっと貢献してほしかった」と、やや辛口な評価を書きました。
それから約2ヵ月半。宮原のプレーからは、成長が見て取れました。
後ろで見ていた千葉ちゃんが「完璧だった」と評価するほどでした。
この日の彼は、「守」の部分ですごく効いていました。
球際で負けなかったし、読みも良かった。
そして、特筆すべきは、後方から追い付いてボールを奪取する、プレスバックする部分が、格段に良くなっていたことです。
このようなプレーを続けていけるなら、先々、非常に楽しみです。
もしも宮原が、ポイチさん、カズ、に続き、「レジェンド」と呼ばれるような名ボランチになれたとしたら、この名古屋戦でその第一歩を印した、と語られるのかもしれません。
少し褒め過ぎたかな(微笑)。でも、やはり私は期待せずにはいられないのです。
11.そこにいるからこそ
レビューの最後に、なぜか今日まで、スポナビブログのブロガー氏が誰も讃えていないことについて、書き留めておきます。
広島が誇るストライカー、佐藤寿人選手が、ついにゴン氏の記録を上回る得点を記録したのです!
J1通算158ゴール。誰もが成し遂げていない、未知の数字でした。
最初は柴崎の得点と伝えられ、試合途中に訂正されて、試合終了後に改めて伝えられた、そんな得点でした。
寿人自身、浅野と交代した直後に知らされたという「新記録」の瞬間だったのです。
この得点に関して、巷では「ドタバタ劇」「当たっただけ」などと言われていたそうです。
実際のところ、私も、あれはシバコーの得点だと思いましたし、得点者が寿人に変わったことについても、正直、驚きました。
メモにも「いいんかなあ(笑)」と書いているほどです。
しかし、あとで考えると、あれもやはり寿人の本領発揮というか、彼が為すべきことをしていたからこそ生まれたゴールなのでした。
ウタさんにボールが渡った時は、左に開いてスペースを空ける動き。
ミカにパスが出てからは、ニアサイドに走り込む動き。
常にシュートしやすい位置に動き直していたからこそ、シバコーのシュートの時に、あの場所にいることができたのです。
「寿人のゴールはすべて必然の結果である。」
この158点目を見て、私は、改めてそう思いました。
ポイチさんが「嗅覚」という言葉を使ってしまいましたが、私は、それは間違いだと思います。
あくまでも寿人は、経験や研究に基づき、細かく計算した上で、居るべき場所がどこかを判断しています。
彼が得点できるのは、そこにいるからこそ、なのです。
そこに、彼の偉大さがあるのです。
本人が読んでおられるとは思いませんが、ここに祝福させていただきます。
寿人選手、おめでとうございます!
そして、これからも沢山のゴールを見せて下さい!
12.あとがき
当初の構想では、9~11の辺りは、別の記事に起こすつもりでした。
しかし、レビュー自体のアップが次節の前日になってしまったため、1つの記事にまとめることにしました。
その分、またしても長い記事にしてしまいました。
読者の皆様、お疲れさまでした(微笑)。
でもまだ、終わりではありません。
実はこれから、まえがきを書きます(笑)。
タイトルも、これから決めるのです(笑)。
金曜の夜は長いです…
最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。