スキを突かれた方が負ける、そんな試合 ~川崎戦レビュー~
0.まえがき
午前中は確かに落ちていなかった雨が、午後から降り出したらしい。
ただでさえ、体力の消耗を抑えたい時期なのに、余計な雨である。
1.変化
2016年2月27日、土曜日。
水曜日にアウェーゲームを戦ったG大阪(と鹿島)を除いた16チームが、J1の開幕戦を迎えました。
14時試合開始のビッグアーチには、今年もJリーグマネージャーを担当する佐藤美希さんが訪れ、試合前のレポートをしていたようです。
広島は、1週間前のゼロックス杯と同じスタメンで、第1節に挑みました。
ウタさんは、浅野らと共にベンチスタートでしたが、公式サイトではMF表示になっていました。
また、山東魯能戦に続き、キム・ボムヨンがベンチ入りを果たしました。(呼び方、長いな。どうしようかな。)
一方、ガクトがベンチ外になりましたが、練習負けか、あるいはソウルへ直行なのか、ちょっと分かりませんでした。
開幕戦の相手は、有力チームのひとつ、川崎フロンターレ。
こちらのメンバーは、パッと見、結構変化しているようでした。
何といっても、GKのカタカナ表記が気にかかりました。チョン・ソンリョン。W杯のピッチにも立った、バリバリの韓国代表です。
彼を中心に、新加入の奈良を含めたディフェンス陣の出来がどうなのかが、川崎ファンの注目点だったと思われます。
あとは、ベンチに控えた森本の存在も気になりました。
2.揺れ動く流れ
立ち上がり、いつものような勢いをつける感じにはならなかったものの、ボールを保持して相手には渡さず、広島ペースに持ち込む算段はついていたようでした。
しかし川崎も、後方でビルドアップする広島に対して、ポジショニング良く圧力をかけていて、広島ペースでやらせたくない、という意図を表現していました。
また、狭い所での細かいつなぎは、川崎らしく、上手かったですね。
さらに、大久保が広島の2ラインの間に入り込んで、守備のポイントを絞らせないようにしていました。
こうして徐々に川崎に流れが移り、15分頃には、ハッキリと川崎ペースと言えるようになりました。
ショートカウンターを含め、上手く立ち回っている印象でした。
しかし、広島も逆襲します。
20分辺りのCKの連続で川崎を脅かすと、それを機に少し持ち直した広島が、試合を膠着状態に持ち込むことに成功したのです。
3.守備に重心を置く
25分過ぎからは、どちらが優位と言い切れない、互角の展開になりました。
ただ、イニシアチブは川崎の方にあると、私は思いました。
というのは、守備に係るところで、川崎が、広島のいいようにやらせない、そんな守りを見せていたのです。
特に、谷口は利いているなあ、と思いました。
尤も、攻撃の形を作る、という点においては、川崎も上手くできてはいないように見受けられました。
2、3、際どいシーンはあったものの、広島の守備を脅かすような迫力ある攻撃は、あまり無かったような気がしました。
40分以降、広島が、状況を打開しようと、攻撃を工夫し始めました。
終了間際のCK、シバコーのグラウンダーのボールを、寿人が回り込んでシュートしますが、惜しくもミートせず。
CSでのコンちゃんのプレーを思い起こさせるいいアイディアでしたが、相手のブロックにも遭い、活かし切れませんでした。
4.広島が動く
後半に入ると、主に川崎の動きが活発になってきて、試合にスピード感が出てきました。
広島も、逆にカウンターのチャンス、とばかり相手陣内に攻め入り、惜しいシュートなど見せますが、GKの好セーブもあり、ものにできませんでした。
また、川崎の攻撃陣に前を向かれた時、広島の守備陣が付き切れない場合がありました。
大きな綻びとは思いませんでしたが、懸念材料でした。
そんな後半15分、広島が先に動くのですが、いつもの交代ではなく、カシッチを航平にスイッチする、という選択でした。
次のソウル戦をにらんで手を打った、と思いました。
寿人を23分まで引っ張ったのも、もしかするとその一環だったかもしれません。
(後で、ポイチさんのコメントにより、カシッチに疲労が見えたための交代だったことが分かりました。)
5.サイドの明暗
左サイドの選手交代は、いい方向に転がってくれました。
航平が入り、積極的に仕掛けるようになると、彼のサイドではほとんど勝てるようになりました。
山東との試合でもそうでしたが、今は航平の好調さが目を惹きますね。切れのある動きをしてくれています。
しかし、一方の右サイド、ミカの働きが今日は良くありませんでした。
山東戦の前に負傷の情報があったらしい(私は未確認)ので、あるいはコンディションに問題が発生していたのかもしれませんが、それにしても、この日はクロスの精度が定まりませんでした。
また、この日はなぜかDFの上がりが少なかったので、ミカとチャジに塩ちゃんが絡む、右サイドの崩しの形も、あまり見られませんでした。
なので、今日に限っては、左サイドでいい形を多く作れていたので、もっと有効に使いたいところでしたが…
6.ミスを見逃さない方が勝つ
チャジを下げてウタさんを投入し、得点奪取のギアを1段上げた直後の、後半39分でした。
カズから青ちゃんへのくさびのパスを、ケンゴくんに奪われ、そのボールを中央に展開されてしまいます。
さらに、大久保から左サイドに展開され、受けた中野がエリア内に進入。
千葉ちゃんが対応に向かいましたが、股抜きのクロスを許し、小林のゴールに結びつけられてしまいました。
この川崎のカウンターは実に見事で、左サイドに展開した時の森本がゴール前に向かう動きと、彼が作ったスペースに入り込んだ小林の横への動き、この2つのプレーで、広島DF陣をまんまと出し抜いて見せたのでした。
(シュート自体は卓人の顔に当たっているのですが、さすがに防ぎ切れなかった…)
どのチームも、青ちゃんがハブのポジションで軸になっていることを重々承知していて、彼に当てるボールは、常に狙い所としてマークしています。
川崎も無論、その意識はあったはずで、してやったり、だったでしょう。
その意味では、青ちゃんが不用意だった、という面は否めません。
ただ、カズのパスも不用意と言えば不用意で、すぐ左にササショーが空いていたのだから、彼に預けて展開させた方が安全でした。
一瞬の判断なので仕方ない面もあり、迷いますが、やはり、広島の側に判断のミスがあり、そのスキを逃さなかった川崎が勝者に値した、ということだと思います。
7.表裏一体
この試合、実は、両チームともミスは多かったんです。
広島は、ここまでに書いた以外にも、パスミスやシュートミス、意図のズレなどが顕著でした。
川崎も、勝利こそ手に入れましたが、得点の場面までは結構シュートを外していました。
ミスが少ないに越したことはありませんが、いくらプロでも、ミスはつきもの。メッシやC・ロナウドさえ、例外ではありません。
とすれば、自分がミスを起こした時に、如何に被害を最小限にとどめるか、逆に、相手がミスを起こした時に、如何にそこを突いていくか、それが重要になってきます。
これで広島は公式戦連敗となってしまいましたが、内容そのものについては、大きく破綻しているとは思いません。
ただ、シュートミスを含め、勝敗に関わるミスが目立つのと、そこを相手に突かれないための危機管理が、昨年と比べると若干落ちているような気がします。
相手がいるので負けることもありますが、自ら首を絞めるかのような負け方は、非常に勿体無いと思います。
一つ一つのプレーを大事にすること、疎かにしないことが、今の広島に必要なことなのではないでしょうか。
8.正念場
敗戦を悔やむ間もなく、3月1日には、韓国に乗り込んで、FCソウルとのアウェーゲームを戦わなければならないサンフレッチェ。
言うまでもなく、旅人こと、高萩洋次郎が、敵の一人として立ちはだかります。
本音を言うと、彼にはあんまり頑張らないでほしいんですけどね。対戦するときだけは。
広島でカギを握る選手は、私は野津田岳人だと思っています。
おそらくスタメンで起用されるだろう、と私は踏んでいますが、もしもそうなら、洋次郎との新旧シャドウ対決は、ひとつ大きな見所になりますね。
いずれにしても、勝ち点を持ち帰るべく、奮闘してもらいたいですね。
体力的に厳しくなってきた選手もいますが、戦いとなれば、そんなことを言ってはいられません。
今こそ、「サンフレッチェ力」を試される時です。
9.あとがき
FCソウル戦の試合開始は午後2時。平日の昼間です。
当然、会社にいる身では、観戦することはできません。
これはもしや、広島の日程を考えて少しでも休む時間を短くさせようという、FCソウルの陰謀か?
と最初は思ったのですが、どうやら違うようです。なぜなら…
3月1日のソウルの天気予報。
天候、晴れ。予想最高気温、3℃! 予想最低気温、氷点下7℃!
去年の松本どころの騒ぎじゃないですよ、これは。
ナイトゲームなんて、あり得ません。死んじゃいますよ。昼間でさえ怪しいくらい。
これじゃあ、ACLを秋春制で、なんてとても無理ですわ(苦笑)。
最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。