【ACL】暗転のパターン ~山東魯能戦レビュー~
0.まえがき
2016年2月23日、火曜日。
キックオフに間に合う最後の列車に首尾良く乗り込むことができ、試合開始10分前に、我が家に到着した私でした。
放送は始まっているので、すぐにテレビをONに。
でも、腹が減っては何とやら、ということで、スタメンの確認もそこそこに、食事の準備を始めました。
もちろん時間が無いので、簡単にレトルトカレーをば。
こうして、試合のアタマは、観ながら食いながら、の観戦になりました。
そのため、レビュワーとしての気持ちは薄め。いつものようなガッツリメモではなく、ちょっとライトな感じに、気付いたことだけ書き留めておこう、と方針を決めたのでした。
1.ACLモード
序盤の戦いを観ながら、徐々にメンバーを確認すると、想像通り、ターンオーバーな面子でした。
要するに、ACL仕様。
ゼロックス杯で途中交代した寿人や、調整遅れの懸念を払って出場したカズ、それに、(体に違和感的な情報もあったが)ミカといったベテラン勢をベンチ外で休ませ、丸谷や航平、皆川といった若手をスタメンに、キム・ボムヨンを初めてベンチに置くというメンバー構成になりました。
また、ガクトやチャジ、シバコー辺りも、いつ呼ばれてもいいように待機していました。
2.らしさが出ていた前半
試合開始直後から、いつものように攻勢に出てペースをつかんだ広島でした。
後方でのつなぎのところもソツなく、ミスなくこなしていました。
GKの卓人も、2年前と比べて格段に進歩していて、味方へのつなぎも落ち着いて観ていられました。
解説のキーちゃん(北澤豪氏)が「危ない!」と言う声に、むしろ驚いてしまいました。
試合運びも、広島らしさが十分出ていたと思います。
前線に攻撃を任せるのではなく、DFラインからも顔を覗かせて、厚みを生み出していました。
生命線であるサイド攻撃も、どちらかというとカシッチの右サイドからの攻めが目立ったものの、逆サイドの航平も効果的な攻め上がりで、左右の揺さぶりを作れていたように思いました。
3.願望
ただ、残念なことに、前半は得点を挙げるまでには至りませんでした。
相手の守備陣に高さがあることもあって、センタリングやCKが高く浮いた場合は、皆川やウタさんの高さを以ってしても、苦戦は免れませんでした。
もう少し、裏への低いボールがあれば、有効だったかもしれない、と思いましたね。
(CWCマゼンベ戦の1点目のようなイメージ。)
そんなことを思っていた前半終了間際。航平の蹴ったCKが、直接、ゴールに吸い込まれました。
相手DF陣の虚を突く軌道で、してやったり!
と思わせたのですが、無情にも皆川のファールという判定。得点は認められませんでした。
スロー再生的には、わずかながら、皆川とGKが接触しているように見えましたし、もとより、主審の判断なので、認めるしかありません。
しかし、スタジアムDJは認めたくなかったらしく、「ゴール!」とアナウンス。
一瞬、「先走りじゃん」と思わず笑ってしまったのですが、ここはDJの願望が出てしまったんでしょう。
というより、ファンの気持ちを代弁した、と言えるかもしれません。
4.前半の雑念
・相手FK時、壁の位置にウタさん1人が立っていたのを見て、「勿体無くないかい?」と思いました。
・航平が「16番」を付けてから初めての公式戦。新鮮でした。
・山東の9番、元ブラジル代表のタルデッリが、ちょいちょいチャンスを演出。浮いたポジションに位置していて、一昨年のナビスコ杯決勝の遠藤を思い出しました。(後から思えば、これが伏線だったのかと。)
5.待望の先制点
後半に入っても、広島のペースは続きました。
前半と比べると、山東も良くなっているようでしたが、私の目には、彼らがまだ、広島のゆっくりしたペースに付き合ってくれているように、まったりしているように映っていました。
そんな中、待ちに待った先制点が、広島にもたらされました。
右サイドで一旦失ったボールを、再び奪い返した後、塩ちゃんがクロス。
競り合いで浮いたボールを、ペナルティエリア角にいた航平が的確なトラップでコントロールし、シュート。
逆サイドのネットを揺らしたのでした。
ワイドな選手があの位置にいるという広島の「お約束」と、元FWらしい攻撃センスが、彼のゴールを生み出しました。
もちろん、テレビの前で喜ぶ私。
きっと、多くの方が「サンフレッチェが勝利に近づいた」と思ったはずだったのですが…
6.らしさを出せなかった終盤戦
たった3人の関係で広島のディフェンスをかいくぐって見せた、山東のワンプレーを機に、試合の趨勢が暗転してしまいました。
卓人の好セーブで一旦は事無きを得た広島でしたが、直後の2度のCKで、同点に追い付かれました。
広島DFの間のスペースに入り込んだヤン・シュと、そこにピンポイントで合わせた正確なセンタリングでした。
ポイチさんが常々言うように、1失点なら想定内。
雲行きは怪しくなってきたものの、悲観することはない、と、私は考えました。
ただ、同点後、相手に勇気を与えてしまった感もありました。
約10分後、カウンターから、山東に勝ち越し点を許してしまった訳ですが、そこまでの時間帯、ポイチさんから「シンプルにプレーしよう」という指示があったのですが、選手たちがそれを実践できていなかったことが、気になりました。
単純に空いたところを使っていけばいいのに、逆に、敢えて無理して、難しいところを選んでプレーしているような、そんな印象を受けたのです。
リードを許してからは、選手たちに焦りの色が濃く、山東の術中に深く嵌るばかりでした。
ガクトを投入しますが、CKからの千葉ちゃんのヘディングも、山東のGKに阻まれてしまいます。
さらに、シバコーのシュートも、同じくGKがファインセーブ。
1-2。無念の逆転負けを喫してしまったのでした。
7.敗因(私なりに)
試合後、結果を踏まえて、様々な意見が世間を飛び交いました。
何に敗因を求めるかについても。
私が試合直後に思ったことは、「これは、最近の広島の負けパターンであるなあ」ということでした。
優勢に試合を進めていながら、シュートが枠外だったり、相手に防がれたりして、得点を挙げることができず、逆にカウンターやセットプレーなどで失点してしまうパターン。
天皇杯のG大阪戦がそうでしたし、CWCのリーベル・プレート戦もそうでした。
相手がいることなので、得点を挙げるというのは、口で言うほど簡単なことではありません。
それでも、折角チャンスを作ったのなら、得点まで到達させるのがベストな訳で、そこに至らなかったことは、残念と言わざるを得ません。
それと、前半のところでも書いたように、相手に高さがあるのであれば、その武器を使わせないように攻める、ということも考えなければならなかったのではないでしょうか。
結果的に、もう少しの工夫が、この試合には足りなかったのではないかと、私は考えています。
あとは、シュートを枠内に向かわせる、という意識は、もっと強く持ってほしかったですね。
8.ウタさんについて少し気になったこと
この試合は、ウタさんにとっては、練習試合以外で、広島で初めての敗戦になってしまいました。
ここまで順調に、広島での足跡を残してきたウタさんでした。悔しさが残ったと思います。
ただ、この試合のウタさんを観ていて、少し気になったことがありました。
それは、自分のプレーを含め、上手くいかなかったときに、悔しがる時間が少し長いことです。
私の感覚なので、首肯して頂けるかどうか分かりませんが、失敗があって悔しがって、次のプレーに移るまで、その切り替えの時間が1~2秒、広島の他の選手より長い気がしたのです。
それだけの時間があれば、スプリントによって5~10mぐらいの差にはなるでしょう。
僅かな時間のようでも、サッカーにおいては、大きな違いになって跳ね返ってくる時間です。
移籍からまだ2ヵ月経たない割には、広島のカラーにフィットしているウタさんですが、ディテールを突き詰めていけば、まだまだ課題はいくらもあるようです。
それらを克服できるだけのスキルや向上心は十分に持っているはずなので、監督・コーチやチームメイトの力を借りて、もっとスーパーな選手になってほしいと思います。
9.ACLは1試合では決まらない
今週、ACL1次リーグの初戦が行なわれた訳ですが、日本の4チームは、明暗が分かれる結果になりましたね。
最も良い滑り出しになったのは、言うまでもなく、勝利した浦和でした。彼らが勝利してくれたおかげで、Jの(一応の)面目が保たれた形になりました。
次に良かったのは、アウェーで引き分けたG大阪でした。
敗戦した2チームのうち、FC東京は、アウェーだった分、結果のインパクトほど、ダメージが残らない可能性があります。
よって、ホームで敗戦、となった広島が、この中では最も厳しい結果になったと言えます。
確かに、広島にとって、この敗戦のダメージは決して小さくはありません。
青ちゃんの試合後の表情から、それは読み取れましたし、塩ちゃんもそのニュアンスで発言しています。
しかし、この1試合の結果を以って「広島は終わった」などという最後通牒を突きつけるのは、さすがに時機尚早ではないでしょうか。
なぜなら、1次リーグは全部で6試合あるからです。
リーグ敗退が決まったのならまだしも、残り5試合の結果が出ていない状況で、誰が白旗など挙げましょうや?
思い出して下さい。
一昨年、広島の滑り出しは1敗1分でしたが、最終的にはノックアウトステージに進出を果たしました。
当時、出だしの結果を受けて「なぜ広島を叩かない?」という記事をスポナビブログに載せたブロガー氏が、逆に袋叩きに遭ってしまう、ということがありました。
「叩く」という言葉自体、私は気に入りませんが、それ以上に、リーグ戦の特質を理解しないまま、闇雲に批判した、そのことに、私は憤りを感じたのでした。
最終的に2位以内に入れば問題ない訳でしたから。そのチャンスは十分に残っていた訳ですからね。
(当時の私は、「リスペクト」を謳っていませんでしたので、結構キツいコメントを残したものでした。もちろん、ガイドラインの範疇で、ですが。)
批判をするな、などと言う気はありませんが、「1次リーグ突破」を否定するのは、その可能性が無くなってからにしてほしい。
私はそう思います。
10.あとがき
書き始めから日付が変わり、日本はすでに土曜日です。
広島ファン・サポーターの頭は既に切り替わり、川崎戦のことで一杯になっていることでしょう。
寿人も出場可能、という情報もありますし、vs大久保、という視点でも、きっと盛り上がるでしょうね。
私は、いつもの事情により、テレビの前で応援します。(申し訳ないです。)
あ、地上波全国ネットだからと言って、派手にドンパチやる必要はないですからね(微笑)。
雨予報が気になりますが…
選手たちがケガなく、ピッチ上で躍動してくれるのを、楽しみに待ちたいと思います。
スタジアムに行かれる皆様、風邪など召されぬよう、お気をつけて!
最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。