【ゼロックス杯】しっかりと踏み出した最初の一歩 ~G大阪戦レビュー~

0.まえがき

書き上げたばかりの記事を保存して、それから10分少々。午後1時30分ちょうどにテレビを点けました。

でも、なぜかそこから別件でバタバタ。そのため、音声が全く耳に入ってこない状況に。

落ち着いて我に帰ったのは、実況の「…キックオフです」の声と、直後に鳴ったホイッスルの音を聞いた時でした。

今年のシーズンの幕開けを、私はこんな風に迎えたのでした。

1.雨中の戦いになる

2016年2月20日、土曜日。

横浜にある日産スタジアムは、生憎の雨に包まれました。

できれば好天の下、試合をさせてあげたいなあ、と前日から思っていましたが、天気予報は外れてくれませんでした。

私は、CWC1回戦のことが脳裏に浮かんで、少し気掛かりでした。

ACLも控えていますし、両チームとも選手全員、ケガなく終われたらいいなあ、と思っていました。

2.注目のメンバー発表(※いつもより長めに)

サンフレッチェも、ガンバも、オフ期間が短い中、新たなチーム作りに取り組んできました。

それぞれの現状を見る上でも重要な試合。どのようなメンバー構成で臨むのか、スタメン発表に大いに注目しました。

広島は、結果的には昨年と同じベースでした。調整遅れが懸念されたカズも、本人の意思を確認した上で、無事にスタメン起用されました。

ただ、鉄板と言われた3バックの一角が崩れ、ササショーがスタメンに名を連ねたことと、サブのGKに廣永が入っていたことが、年末から少し変化した部分でした。

(ササショーに関しては、事前情報があったので、決して意外ではありませんでしたが。)

そして、注目の新戦力は、ピーター・ウタカがベンチ入りした以外は、メンバー入りは叶いませんでした。

高卒の2人はともかく、宮吉に関しては、故障の影響でややアピール不足だったのでしょう。

また、ウタカにしても、早速スタメンで、というところまではいかなかったようですね。

結局、シャドーの位置には、シバコー先生とチャジの2人が起用されました。

(ガクトのベンチ外は、ケガがあったとはいえ残念でした。)

一方のG大阪も、昨年のメンバーをベースにした現状のベストメンバー、という印象でした。

岩下らがケガで不在のため、コンちゃんがCBに下がり、ボランチには若き逸材、井手口が入りました。

そして、何と言っても注目はアデミウソンでした。

実は私、横浜FM時代の彼のプレーを観ているはずなのですが、ほとんど覚えていないんです(苦笑)。

でも、自分のレビューによれば、彼と俊輔とが同時にピッチに立った時、「起点が2ヵ所になって厄介だ」みたいなことを書いていて、聞いていた評判(の良さ)と相まって、相当脅威に感じていたようなのです。

という訳で、そんな選手がいきなり相手のスタメンにいるという、さすがはG大阪、怖い布陣だなあ、と思ったのでした。

さらに、ベンチスタートとはいえ、藤本も控えているという。

強力な「矛」を手に入れたなあ、というのが実感でした。

(メモに思わず「怖いわあ…」と書いてしまいました。)

3.意外な序盤戦

キックオフ直後から、ペースを握るべく、いつものように積極的に攻勢をかけるサンフレッチェ

大きなチャンスを得たわけではないものの、ボールを支配し、優勢に試合に入ることができました。

そして、最初の10分ぐらいは、この状態が続いたのですが…

この時間帯、G大阪が広島のパス回しをつぶしに来ていないように見えて、とても意外に思いました。

広島の、パスの際の関係性やポジショニングが良く、相手に奪い所を作らせなかった、チャージする機会を与えなかった、という見方もしています。

でも、いつものガンバなら、もっとタイトに守って相手を自由にさせないはずなので、その辺りがどうしたのかな、と思いました。

また、15分ぐらいに感じたのは、ガンバが全然急いでいない、ということでした。

その時間帯は、ガンバも、ボールエリアのスペースを絞って相手のミスを誘い、ショートカウンターに持ち込もうとしていて、この辺がガンバの狙いなのかな、とも思いました。

雨でピッチがスリッピーだし、少しでもトラップミスとかしてしまうと、正にガンバの思う壺に嵌ってしまう、そんな厳しさは感じました。

4.抑揚のない展開に

前半25分ぐらいまでは、決定的なチャンスこそないものの、広島ペースで試合が進行しました。

その後も、基本的には広島の流れだったのですが、G大阪も徐々に危険な場面を演出できるようになり、いい意味でジリジリする展開になってきた、と感じました。

オフサイド等により、失点に結びつくことはありませんでしたが、(広島ファンの私としては)少々肝を冷やすような場面もチラホラとありました。

ただ、その後、前半の終い10分間ぐらいは、観る人によっては退屈だったかもしれない、目立った動きが少ない試合になりました。

これは、前記事でも書いた通りで、互いの守備意識の高さ故に、相手の長所をつぶし合うような展開になったからでしょう。

もちろん、後半勝負、という意識もあったと思われますが。

5.サンチェの悲劇

さて、ゼロックス杯のハーフタイム、と言えば、恒例となった「Jリーグマスコット総選挙」。

私は、ぶっちゃけそんなに興味はないのですが(笑)。

試合開始前までに4位以下の発表は終わっており、我らが(笑)サンチェのTOP3入りが確定していました。

あの姑息な(?)選挙活動で、私の中では「サッカー界のつば九郎」と呼ばれている、サンチェ。

果たして、連覇成るか!?

…3位でした。上位3キャラの最下位かい!

1位発表の後、「2位は東京ドロンパ」と聞いた瞬間、「ドテーッ!」となってしまいました。

今年は無念、オチ要員になってしまった、サンチェなのでした。

(1位のベガッ太くん、返り咲きおめでとう(笑)。)

6.広島らしさが詰まった先制点

さて、後半戦が始まり、G大阪が前線の並びを変えたとかで、早くも試合が動きそうな、そんな予感がピッチ上に漂いました。

しかし、先手を取ったのは、サンフレッチェでした。

それは実に、テレビが呑気にリプレイを流している間に始まりました。

ボールを奪取した広島が、塩ちゃんのスルーパスで相手の裏に進入します。

カシッチのダイレクトクロスは相手の正面になりましたが、セカンドボールをモノにしたササシューを起点に、右サイドにボールが運ばれました。

前線に残っていた塩ちゃんの右側を、ミカが追い抜くように走り去った直後、塩ちゃんの鋭いパスが、ニアサイドに向かっていき…

ディフェンスラインを裏へ抜け出した寿人が、左足を持ち上げるように合わせて、ゴールに突き刺したのでした。

高い位置でボールを奪い、裏への狙いと、サイドとのコンビネーションでチャンスを作った後、2次攻撃で見せた素早い展開力、そして駆け引き。

広島の特長がいくつも表現されていました。

また、塩ちゃんのクロスのタイミングは、完全にガンバ守備陣の虚を突いていました。

塩ちゃんが広島に加入した当初から、あのクロスの軌道を、寿人は彼に要求し続けてきたのだそうです。

塩ちゃんが寿人に託した、初めてのアシストは、正に練習の賜物、平素からの不断の努力の賜物でした。

普段からコミュニケーションを密に取り、練習の中で要求しながら、同じイメージを作っていく。

その成果が、あのゴールなのです。

サンフレッチェの狙い通りの、先制点だったと思います。

7.残念な交代

首尾よく1点をリードしたサンフレッチェでしたが、左足に違和感を感じた寿人が、自らピッチを後にすることになってしまいました。

後で、大きなケガにつながる危険を回避するための交代だと分かりましたが、試合前の願いを思い出し、残念な気持ちでした。

ただ、いつもより早い登場となりましたが、浅野への期待もまた大きく、楽しみでした。

寿人からの檄を受け、U23代表の同僚、井手口とも握手して、ジャガーがピッチに飛び込んでいきました。

その時、彼がPKを蹴ることになるとは、考えもしなかったのですが…

8.気の毒なPK

左サイド後方からのビルドアップのあと、中央でフリーになった青ちゃんから、左前方のシバコーにパスが回って、広島のカウンターが発動します。

ゴール方向へドリブルで進むシバコーにクロスするように、カシッチがペナ内に進入します。

そのままシバコーのパスを預かったカシッチが、フリーで中央に折り返したところに、丹羽が「通させてはならじ!」とクロスの軌道に飛び込みました。

私は「ああ、クリアされたか…」と残念に思っていたのですが、そこへ、思いもよらぬPKのジャッジが…

「顔面で受けたんだ!」と主審に向かう丹羽でしたが、思わず主審の腕に当たってしまいます。

この動作でイエローを受けてしまいますが、それでも納得できない丹羽。

しかし、判定が覆るはずはありませんでした。

私も、映像を何回か観て確認を試みたのですが、顔だけに当たったのか、腕にも多少は当たっていたのか、判別は出来ませんでした。

ただ、少なくとも、主審の位置からは手に当たったように見えても仕方ないだろう、とは思いました。

世間では、飯田主審に対する風当たりが強いようです。言いたくなる気持ちも分からないではありませんがね。

しかし、何でもかんでも「審判が悪い」と騒ぎ立てる人が多いのには、少々辟易してしまいます。

批判をするにしても、せめて「主審のいるべき適切な位置はどこか」「主審はその位置にいたのか、いることが可能だったのか」ぐらいは吟味した上で行わなければ。

さもないと、ただの暴言になってしまいますからね。

そういう意味で、丹羽は気の毒でしたが、飯田主審にとっても気の毒なジャッジになってしまったと、思わなくもありませんでした。

9.「サッカーは怖い」と思った瞬間

ジャガーが志願したPKを決めて、大きな2点目を得た広島でしたが、ガンバもこのまま引き下がっている訳にはいきません。

パトリックとアデミウソンを下げて、長澤と倉田を投入しました。

この采配が、ガンバが反撃の狼煙を上げるきっかけになりました。

チャジのスルーパスがわずかにジャガーに合わず、丹羽がボールを確保します。そして、前方の倉田へ浮き球を送りました。

まだガンバの自陣内でしたが、ドリブルで持ち上がる倉田がアップになった瞬間、「倉田のこの動きが怖いんだよなあ」と思いました。(ウソみたいですが、本当です。)

その倉田から右サイドの阿部に渡った時、広島のゴール前には、長澤と宇佐美の2枚しかいなかったのですが、フリーで、ディフェンスの裏を狙った阿部のクロスは、素晴らしい軌道を描き、プルアウェーする宇佐美の頭に合わさっていきました。

敵ながら、全く見事なカウンターでした。

そして、攻撃のパスがほんの少しずれただけで、失点に結びついてしまう、サッカーの怖さを味わった瞬間でもありました。

10.ウタさんの大いなる第一歩

広島が失点を喫する少し前のことです。

放送の音声に、「ピーター、来い!」という誰かの声が入ってきました。

いよいよ新戦力の登場近し、と期待感が高まりました。

結果的に失点直後の交代出場となったピーター・ウタカ

チームメイトからはすでに「ウタさん」と呼ばれて親しまれている、との情報を聞いて、「じゃあブログでもウタさんって書こっ!」と決めたのでした。

そのウタさん(照)、解説陣も驚くほど、広島の戦術にフィットしていました。

無論、約3週間のキャンプで取り組んできた成果が表れたものでした。

また、彼の特長である破壊力もまた、この試合でよく表れていましたね。

東口に止められたミドルシュートは、しっかりミートできていなかったらしいのですが、それでも威力のあるシュートでした。

そして、3点目となったダイレクトシュートもまた、強烈でした。

仮に井手口に当たっていなかったとしても、防ぐことは困難だったのではないでしょうか。

能力が高いのは、分かっていました。しかし、分かっていてもなお、感嘆しないではいられない、ウタさんの活躍でした。

もちろん、周囲との連携や守備のタスクなど、まだまだ強化しなければならないのは確かです。特に守備面は。

しかし、去年のドウくんも、今の時期は今年のウタさんと同じような感じでしたからね。

現時点ではまずまず、よくやってくれたんじゃないかな、と思います。

そもそも、チャージしたりタックルしたりするだけが守備ではありません。

いいポジションを取るという守備のやり方もあります。かつてのポイチさんがそうであったように。

そして、この試合を観る限り、ウタさんは十分、それが出来ているとみました。

いずれにしても、まずは最初の公式戦で、一つの答えを出してくれたウタさん。

広島での大いなる第一歩を記してくれたと思います。

11.ゆとりを持って第一冠

さて、ウタさんが挙げた3点目は、残り時間20分を切ったところで、相手に2点差をつける大きな得点になりました。

そして、もう一つ、大きな意味のある得点でもありましたね。

後半38分、青ちゃんがベンチに下がったのですが、ゼロックス杯から中2日で挑まなければならないACLに向けて、少しでも青ちゃんを休ませることができたのは、あの3点目があったからこそでした。

また、忘れてならないのは、丸谷が主力に負けない実力を身につけて一本立ちしてくれたから、青ちゃんの代わりを安心して任せることができた、ということです。

この丸谷やチャジ、ジャガーという辺りが下から突き上げてきて、他の選手たちも負けじと競争して、チーム全体が平均値を高めています。

何より、みんなが成功体験を得て、一段とたくましくなっているのがいいですよね。

結局そのまま、得点は動くことなくタイムアップ。

広島が、ゼロックス杯の戦績を4戦全勝として、今シーズン最初の公式戦を制しました。

12.ガンバはこんなもんじゃない

ケンタさんが試合後の会見で語ったように、ガンバはこの試合に、新しい戦力や戦い方を試す、というテーマを持ち込んでいました。

具体的には、アデミウソンと他の選手とのコラボレーションであったり、守備の形だったり。

但し、それはもちろん、勝負を度外視して行なったことではなく、勝つことと試すこと、その二兎を追っていた、ということだと思います。

この試合は、結果として負けてしまったし、新戦力との融合がまだ不十分であることなど、課題が多く出てしまいました。

しかし、ポイチさんも言っていたように、ガンバはこんなもんじゃないと思います。

広島と同じく、G大阪にもいつでも戻れるベースがあるので、シーズンを通して、決して大崩れはしないでしょう。

アデミウソンや藤本がフィットしてくる頃には、やはり本領を発揮して、タイトル争いをリードする存在になってきそうです。

13.井手口

そして、特筆しておきたいのは、井手口の成長です。

私は、彼について「後半に課題がある」という評価をしていましたので、この試合の注目ポイントの1つに考えていました。

結果、井手口は90分間、十分に働き続けていました。

潰し役としても、読みの部分でも、かなり高い次元で貢献していたように、私の目には映りました。

なかなかにふてぶてしい顔つきをしていますが、私は嫌いではないですね。頼もしさを感じます。

そして、この試合の出来でも決して満足していない、その向上心も評価できます。

五輪だけと言わず、フル代表のメンバーも狙える存在、といったら褒め過ぎでしょうか。

でも、同じチームにヤットさんや今ちゃんという、代表の主力を務めた先輩がいるのですから、彼らから様々なことを吸収していけば、決して夢ではないだろうと思います。

14.あくまでも一歩ずつ

さあ、最初のタイトルを獲りました。

今回の試合を観る限り、サンフレッチェ広島のサッカーは、十分、昨年のクオリティを維持できているようです。

ウタさんの起用にもメドが立ちましたし、好材料を数々見出せた勝利でした。

但し、ゼロックスのタイトルを獲ったといっても、やはり、今後の成績が保証された訳ではありません。

いわば花相撲のような趣のゼロックス杯とは違い、ACLやリーグ本番は、もっとシビアな戦いになるはず。

そういう舞台でも広島の力を発揮できるか否か。

真価が問われます。

まずはACL初戦、山東魯能と全力で戦い、勝利を挙げてほしいですね。

キックオフには間に合わないかもしれませんが、テレビ観戦する予定なので、いつものように気を送りたいと思います。

15.あとがき

書いた本人が呆れるほど、今日は長くなってしまいましたねえ…

推敲に時間がかかってしょうがない(苦笑)。

試合のレビューでここまで長くなると、何か大河ドラマのようなボリューム感です。

視聴率、もとい、閲覧数が気になりますな(笑)。

昨日の今日で寝不足になりそうなので、ここまでにします。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。