【天皇杯】決めてこそゴール ~準決勝G大阪戦を振り返る~

0.まえがき

2016年、元日。

浦和レッズガンバ大阪が相対した、天皇杯勝戦は、ガンバの勝利に終わりました。

実業団の駅伝日本一が決まるのを待っていたかのように始まった決勝戦は、白熱した好ゲームになりました。

私は試合前、「どっちが勝っても悔しいなあ」と思っていました。

しかし、試合は、掛け値無しに、面白かった。「是が非でも勝ってやる!」という双方の熱を、大いに感じた試合でした。

試合直後、ケガの様子を心配して、槙野に話しかける宇佐美の姿が、テレビ画面に映し出されました。

戦いが終われば敵味方なく、同じJリーガーとして相手を思いやる。

改めて、スポーツの素晴らしさを感じた瞬間でした。

1.天皇杯の今昔ばなし

2015年12月29日、火曜日。

第95回天皇杯全日本サッカー選手権大会、準決勝の第2試合として、ガンバ大阪サンフレッチェ広島の試合が行われました。

私は、第1試合の浦和レッズ柏レイソル戦からTV観戦していたのですが、延長戦に突入しそうになったので、少し心配になりました。

もしかしたら、この試合の放送時間が延長になって、広島の試合はアタマから観られないのではないか、と思ったからです。

しかし、いまは地デジ時代。

浦和-柏は102チャンネルに移動し、101チャンネルは予定通り、定刻に放送を開始してくれました。

余談ですが、昔、天皇杯の準決勝は、同時刻に試合が行われていました。

そのため、一方の試合を生中継し、他方はその試合後に録画放送されていたんですね。

最初の試合が終われば、当然、勝利者インタビューが行われるわけですが、その時に「決勝は○○と対戦ですが…」などと聞いてしまう、まぬけなアナウンサーがいました。

これから放送される試合の結果を先に言うかねえ。

記憶では、結構毎年のように起こっていましたが、今はその心配はなくなりました。

2.好対照なメンバー

試合開始の約1時間前、両チームのメンバーが発表されました。

G大阪は、体調不良が伝えられていた藤春がスタメンに復帰し、1トップにはパトリック。ベストの布陣を敷いてきました。

一方の広島は、ドウくんがベンチメンバーからも外れるという緊急事態。

疲労蓄積とも、両足の痛みによる欠場とも言われていましたが、いずれにしても、不在の影響は大きいと思われました。

また、塩ちゃんが出場停止、カズやカシッチがベンチスタートとなる一方、丸谷や宮原といったところをスタメンに起用してきました。

そして、主力中心の18人の中に、初めて吉野恭平が名を連ねました。

決してベストメンバーとは言えない布陣でしたが、もちろん、ポイチさんが勝算を持って送り出したメンバー。

ガンバとは好対照な選手構成でした。

3.技術と経験の先制点

試合が開始され、最初の数分間は、広島がいつものようにしっかりと前に圧力をかけ、攻勢から自らのリズムをつかんだように見えました。

と思っていたら、あっという間に失点してしまいました。

右サイドからのボールをパトリックが落として、宇佐美が、千葉ちゃんの股下を抜く技ありのシュートを放ったものでした。

宇佐美自身が「股抜きしか考えていなかった」と語ったように、意図を持ったシュートでした。

決め切った彼の技術は、見事と言うしかありません。

しかし、単に技術だけで決まったゴールだとは、私は思いません。

今シーズン、広島とG大阪とは、実に5回目の対戦でした。

宇佐美は、広島の守備陣が持つ球際の厳しさを、理屈でなく、繰り返し体感してきました。

彼は、その堅固な守りを研究し、逆手に取って、あのシュートを狙っていたのではないでしょうか。

技術と経験を結晶した見事な得点。「やられた~」と思いました。

4.守備意識

早々に失点してしまった広島でしたが、試合内容に大きな変化を起こすことは無く、慌てずにいつものスタイルで試合を進めました。

一方のG大阪も、リードしただけに無理する必要はなかったですし、広島に持たせている、という印象でした。

そうしたバランスによって、前半は比較的、広島の方にチャンスが多かったですね。

広島は、両サイドからの攻撃を軸に、バリエーションを持った攻めが出来ていたのではないかと思います。

しかし、敵もさるもので、守ると決めた時のG大阪の意思統一は素晴らしかった。

特に、パトリックの守備意識の高さが、非常に目に付きました。

セットプレー時はもちろん、流れの中でも、自陣ゴール前まで戻って守備していましたからね。

そうしたメリハリとか割り切りについては、広島も負けてはいませんが、G大阪も相当なもの。

流石、両チームともJ1を制するだけのことはありますね。

5.ガンバ有利で折り返す

結局、G大阪1点リードで、前半が終了しました。

広島にとっては、1失点は想定の範囲内

後半は徐々にギアを上げていくはずなので、同点、逆転の期待を持つことはできると思いました。

ただ、相手を疲れさせるような試合の進め方にはなっていなかったとも思いました。

G大阪有利の展開だったと言えましょう。

6.期待が高まった後半

後半に入り、想定通り、広島が少しずつギアをアップし始めました。

前半よりもボールを保持できる時間が長くなり、攻勢を取れるようになってきました。

時折見せるガンバのカウンターにも、オフサイドを取るなどして対応。

試合のペースを握っていたと思うし、崩せそうな雰囲気も大いにありました。

さらに、後半20分、カウンターの起点となっていたパトリックを交代で下げてくれたのは、正直、助かったと思いました。

このまま、攻勢を続けていければ良かったのですが…

7.力尽きる

途中出場のカシッチの横パスを奪った倉田が、そのままドリブルで突き進んだ時、勝負は決まっていたのかもしれません。

長澤がフォローし、宇佐美がゴールを決め、後半29分、G大阪に大きな2点目が記録されました。

フリーでパスを受けた長澤に、千葉ちゃんがチェックに行きましたが、その分、宇佐美のマークが空いてしまいました。

結果的に、千葉ちゃんのチェックも、宇佐美へのミズの対応も、後手に回ってしまいました。

まだ試合は20分程度残っていたので、諦めるのにはまだ早いと思いました。

疲れの見えた航平に代えてギシさんを投入しましたが、サイド攻撃を武器に、まだまだガンバゴールに迫ろうという意図は感じられました。

ただ、やはりG大阪、広島の意図はよく分かっていましたね。

特に、カシッチのサイドはキッチリ防がれてしまいました。

そして、カウンターから止めの3点目を奪い、試合を決定付けてみせました。

8.決めてこそゴール ~サンフレッチェの課題~

この試合の広島は、ガンバが先制して守備寄りの戦い方をしてくれたため、相手ゴール前に迫るシーンは多かったと思います。

しかし、シュートの場面では悉く、枠を外したり、GKの正面だったり。

これらのチャンスを決められなかったことで、広島は、大事な試合を落とす結果になりました。

12月に8試合行なったサンフレッチェでしたが、CSやCWCでは、チャンスを決めて勝ち切る試合を何試合も見せてくれました。

しかし、敗戦した2試合はいずれも、決めるべきチャンスを逃して、自ら勝利を手放すような試合になってしまった訳です。

今大会の準決勝は、宇佐美の他にも、決定力で名を馳せた選手がいましたよね。

浦和の決勝点は、李忠成のヘディングシュートでした。

チュンソンの勝負強さは、広島時代からも何度か見せてくれました。日本代表を救ったこともありました。

ガンバとの決勝戦では実りませんでしたが、ここぞというところでの決定力は健在でした。

この日のサンフレッチェには、チュンソンはいませんでした。宇佐美もいませんでした。

チャンスを得点に結びつける「決定力」を、どんな試合でも発揮できるようにすること。

言い古されたこの課題が、改めてサンフレッチェに突き付けられた、そんな一戦だったと思います。

9.あとがき

今年最初の投稿は、昨年末の悔しさを振り返る記事になりました。

元日に決勝戦を観ながら、「サンフレッチェの選手たちを、この場に立たせてあげたかったなあ…」と、つくづく思いました。

準決勝まで勝ち進み、あと一歩で手にしていた「ファイナリスト」の称号でしたから。

試合終了直後は、やっぱり悔しかった。

それでも、年間51試合を戦い、33勝もの白星を挙げてくれたサンフレッチェ広島

戦績は以下の通りですが、彼らのおかげで、喜びの多かった昨年でした。

J1リーグ戦(含CS) 24勝6分6敗

ナビスコ杯 2勝3分1敗

天皇杯 4勝0分1敗

CWC 3勝0分1敗

TOTAL 33勝9分9敗

サンフレッチェの選手たちは、いま、浅野を除いて、わずか3週間強となったオフを過ごしているところです。

まずはゆっくり休んで、体をケアして、新しいシーズンに向けて英気を養っていただきたいですね。

そして、ジャガーには、ドーハでひと仕事もふた仕事もしてきてほしい。

チームメイトと協力して、大きな切符を手にしてきてもらいたいと、切に思います。

そんなわけで、当ブログも新しい1年を始動しました。

仕事も明日から始まります(微妙・笑)。

今年は「年男」ですが、特に気負うこともないので、今まで通りのスタンスでやっていきたいと思います。

それでは、本年もよろしくお付き合い下さい。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。