「星」を勝ち取った2つのターニングポイント ~CS決勝第2戦レビュー~(後編)

7.我慢の時間帯

さて、後半戦が始まりました。

私は、後半のポイントとなるのは、やはり体力的なものだろうな、と考えました。

しかし、G大阪の攻勢は、後半に入っても持続していました。

5分に青ちゃんがイエローをもらった辺りまで、広島らしくない時間帯が続きました。

少し肝が冷えましたが、広島は我慢するしかありません。

そして、我慢しているうちに少しずつ落ち着きを取り戻してきた、そんな印象に代わってきた頃、浅野投入の時間になりました。

「この交代で少し流れが変わるかな?」と思いましたが、交代当初はまだ上手くはいきませんでした。

また、ドウくんに疲労が見える気がして、そのことが気掛かりでした。

カシッチの投入が近付いてきた時、1つ目のターニングポイントが訪れたのでした。

8.ターニングポイント1 ~パトリック投入~

後半19分。G大阪は、長澤に代えてパトリックを投入します。

切り札の投入に期待を込め、盛り上がるサポーターたち。

しかし私は、「これは広島にとって助かった」と思いました。

この日の長澤は、第1戦と同様、非常に「効いて」いました。

広島DF陣のボールさばきをけん制する位置取りや、献身的なチェイスポストプレーなど、サンフレッチェを大いに悩ませていました。

後半は、必ずしも効果的に動けてはいなかったかもしれませんが、流動的な動きは、広島から見ると読みづらかった。

そんな彼がベンチに下がってくれたのは、私には大きなことでした。

パトリックが良くなかったとは、私は思っていません。彼のポストプレーから何度かチャンスを創出していましたから。

助かったと思ったのは、広島DFにとって、長澤対策は不十分だったかもしれないが、パトリック対策なら十二分に出来上がっていたからです。

昨年のナビスコ杯でMVPを為さしめた屈辱から約1年。今年は本当に、パトリックの自由にさせませんでした。

この日も、ササショーや塩ちゃんらの対応で、パトリック自身による危険なシーンはほとんど作らせませんでした。

「助かった」と思いながらも、パトリックにやられる、という場面も十分あり得ただけに、不安はあったんです。

でも、その不安を打ち消してくれた広島DF陣なのでした。

9.ターニングポイント2 ~シバコーのコントロール

後半20分。広島はミカに代えて、ついにカシッチを投入します。

水曜日の逆転劇は記憶に新しいところ。いやがうえにも期待が高まります。

ただ、縦に早いジャガーやカシッチが入ったことで、攻撃に意識を置き過ぎて、ちょっと急ぎ過ぎているように、私の目には映りました。

マイボールにした時に、試合を落ち着かせたい。相手を走らせたい。

そんなことを思っていた後半25分頃から、広島は、シバコー先生を中心に、ボールを保持してゆっくりとやりはじめました。

「これなんよ。これを求めとったんよ。」

ようやく広島のスタイルを取り戻そうとしてきた、と見た私は、TVの前で声を上げてしまったのでした。

ジャガーがスピードを生かし、パスの出し手がそれを活用し、徐々にG大阪のラインを下げつつあった時間帯でした。

もとより、慌てる必要も、縦に急ぐ必要も、全く無い状況でした。

おそらく、その辺りを改めて認識して、選手たちはプレースタイルを元に戻したのだと思います。

特に、シバコーがボールを持った時の落ち着かせ方が素晴らしく見えて、私は感嘆したのです。

そして、歓喜の時が訪れます。

10.約束のジャガーポーズ

それは、見事なカウンターでした。

攻撃に重きを置かざるを得ないG大阪の、守備陣との間に大きく開けたフリーのスペース。

航平が滑り込んでキープしたマイボールを、ドウくんが前に運びました。

そして、右サイドのカシッチに展開し、自身はゴール前に向かうドウくん。

相手DFとの駆け引きの途中、ゴール前に斜めのセンタリングを送るカシッチの視線の先には、ドウくんと、浅野がいました。

G大阪にとっては、悔やみきれないマークのズレでした。3人いた守備陣のちょうど真ん中に、ジャガーがいました。

カシッチのクロスのタイミングも、彼らは読み切れませんでした。

一瞬のエアポケットでしたが、それにしても、カシッチのクロスはすごかったし、ゴールの隅に決めて見せたジャガーのヘディングもすごかった。

私は… ゴールが決まった瞬間、雄たけびを上げてしまいました。

その一瞬は、正にスタジアムにいるかのような錯覚すらありました。

スタンドに向けて「ジャガーポーズ」を披露する浅野の、喜びにあふれる表情が、とても印象的でした。

11.心地良い放心状態

まだ、試合時間は15分以上残っていました。

「まだ終わってない。まだ何が起こるか分からない。」と自分に言い聞かせながら、ポイチさんが最後のカードをどう切るか、そのことが気になっていました。

普通にサイドの手当てをするのか。疲れの見えるドウくんを下げるのか。

結果的に、前者だったわけですが…

ミズが3人目になるとは、全く考えにありませんでした。

今なら、追加失点を許さないための交代策だと理解できるのですが、その時は、全く考えが及びませんでした。

いや、正直なところ、何かボーッとしてました。

最早、メモも取っていませんでした。

12.大願成就

試合終了が近付くにつれて、安堵感が大きくなっていきました。

4分台のATに入り、求めていた結果を得られる可能性が、どんどん高くなっていきます。

そして、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間…

「え、いま、終わったのか?」と驚く自分がそこにいました。

「年間勝ち点1位」だったサンフレッチェ広島が、晴れて「年間1位」に輝いた瞬間でした。

13.おみそれしたガンバの底力

広島がCSを制すると想定して、私は、「結果的には日程が(年間勝ち点1位の)最大のアドバンテージだった」と書くつもりでいました。

体力面での有利・不利が勝敗に如実に表れる、と踏んでいたからです。

しかし、その言葉は、今回のCSには当てはまりませんでした。

日程が厳しい中、G大阪はこの試合でも、運動量が格段に落ちたというところがありませんでした。

終了間際の十数分間はさすがに難しく、解説陣も「足が止まりましたね」と評していました。

でも、並のクラブなら、もっとよれよれな状態になっていてもおかしくなかったのに、ガンバの選手は、最後まで広島ゴールを脅かし、勝利への執念を見せました。

さすがは実力者、昨年チャンピオンでした。

14.結実

CSの戦いを予想する意見の中に、「勝ち上がってきたチームの方に勢いがあるから1位は不利になる」というものがありました。

確かに、一理ある話です。

CSに参加できるぐらいのチームなら、ただでさえ実力を有しているわけで、それに勢いが加われば鬼に金棒、と言えないこともないでしょう。

でも、私は信じていました。

「勢いだけで勝てるほど、サンフレッチェは甘くないよ!」と。

この2試合、本当に難しい試合になりました。

どちらの試合でも、先制点はG大阪でした。

昨年の広島なら、この時点で半分負けたようなものでした。

しかし、今年は違いました。

どんなときも、粘り強く、泥臭く、自分たちの時間帯に持ち込むまで我慢できる、そんなチームになりました。

昨年以上に、個性ある選手たちが融合し、化学変化を起こしながら、得点ができるチームになりました。

浩司、ギシさん、塩ちゃん、カシッチなど、ケガで苦労の時を過ごした選手もいましたが、不足した戦力も、全員の力で補いました。

控えに実力者を揃えるクラブは他にもありますが、サンフレッチェほど、控えの選手がここまで高いレベルで機能したチームはありませんでした。

今年のリーグ戦に関しては、自信を持って言い切ることができます。

サンフレッチェ広島は、日本一に相応しいチームだった」と!

15.あとがき

ラスボス的な強敵、G大阪に1勝1分で「勝利」しての年間1位。

格別です。

昨夜は、スポーツニュースや特番などをハシゴしました。(土曜の夜のことね。)

すぽると」の生電話には、笑ったり泣いたりでした。

いま私は、200%喜んでいます!

そのくらい喜んでも、バチは当たらないと思い込んでいます(微笑)。

今回も、「今だけだぜ」と笑って許していただければ幸いです。

で、長くなり過ぎたので、前・後編に分けました。

川崎戦のレビューを超えて、私史上、最長の記事になりました。(多分。)

前編も後編も、両方とも読んで頂けるといいのですが。

最後にひと言。

「ちばちゃん!」

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。