「星」を勝ち取った2つのターニングポイント ~CS決勝第2戦レビュー~(前編)

0.まえがき

駅からの家路。

温暖な気候と言われる広島でも、午後7時の空気は、やはり冷たい。

海岸沿いのエリアでも寒かったのだから、ビッグアーチもやはり寒かろう。

でも、きっと今頃、スタジアムは熱く盛り上がっているだろうな、と思いながら、歩みを速めた。

1.スタジアムに集う様々な想い

2015年12月5日、土曜日の夜。

明治安田生命2015Jリーグチャンピオンシップ(以下CS)の決勝第2戦、広島がホームにG大阪を迎えて、開催されました。

村井チェアマンや、Jリーグマネージャーの佐藤美希さん、ハリルホリッジ日本代表監督、松木安太郎氏など、多くのサッカー関係者が、広島に集結しました。

また、広島東洋カープ黒田博樹投手も観戦に訪れていたとのこと。

「広島で優勝が決まるんだから、見に来なきゃ駄目でしょう」と語ったそうですが、スポーツで広島を盛り上げたいという想いで、足を運んでくれたのでしょうね。嬉しい限りです。

試合前の雰囲気もまた、良いものでした。

秋川雅史さんの歌声がスタジアムに朗々と響き渡り、それに呼応して合唱するスタンドの人たち。

決戦のホイッスルに向かい、ビッグアーチ全体が一体となった瞬間でした。

2.メンバー紹介、特別篇

第1戦から中2日というスケジュールを踏まえ、若干の選手交代があり得たスタメンでしたが、広島のメンバーは前回と同じでした。

前の試合でいい結果を得られたので、変に動かすことはしなかったのでしょう。

対するG大阪は、米倉の起用は当然として、トップに長澤を起用してきました。

最初はやや意外に感じられましたが、前回の働きが良かったし、チェイスが効き、前線での守備にも期待できる選手、ということで、何となく起用の意図が透けて見えるような気がしました。

裁くレフェリーは、主審:西村雄一、副審:相樂亨、副審:名木利幸、の各氏。(第4審判は村上伸次氏。)

ブラジルW杯開幕戦のセットだそうで、さすがは内山俊哉アナウンサー、痒い所に手が届きますね。

さらに、解説席のメンバーは、福西崇史氏、戸田和幸氏というドイスボランチな組み合わせでした。

3.ガンバの作戦

合唱の余韻か、最初の4分間で、すでに目まぐるしい展開を見せたこの試合。

最初にペースを握ったのは、G大阪でした。

広島は、相手の遅攻に対してはしっかり守備を固めて上手くしのぐので、見た目は悪くても、いつもはそれほど劣勢になることにはなりません。

でも、G大阪は、さすがに他のチームと比較しても、崩し方が上手いなあ、と、いつも感心されられてしまいます。

その上、この日のガンバは、新手の広島対策を見せてきました。

広島がいつものようにバックラインでボールを持ったとき、そのラインの目前、バイタルの高さに、3人横並びのポジションを取っていたのです。

面白いなあ、と思いながら見ていたのですが、感心している場合ではなく、このポジショニングにより、広島の選手は、パスの出しどころに困ってしまいました。

縦へのくさびのボールが制限されてしまったのです。

もちろん、広島もボールを動かして、ずらそう、はがそう、と試みるのですが、なかなか打開することができませんでした。

また、青ちゃんのところで、いまひとつボールが収まらなかった印象もありました。

パスがずれたり、トラップが乱れたり、という場面が何度かあったので、青ちゃんの調子そのものが少し気掛かりでした。

4.悩めるボランチ

G大阪が得た何度目かのコーナーキックで、大きな先制点が、G大阪に入りました。

遠藤のキックは、さすがの精度を見せて、ペナルティー・スポット付近に飛びました。

そこへ、下がりながらシュートを打ったのが、今野でした。

枠に向かったシュートは、ササショーの足に当たって、ゴールに吸い込まれていきました。

あの足は、ディフェンダーとしての「本能」がそうさせてしまったこと。

誰も責めるものはいませんが、ササショーは後に「(自分の)オウンゴール」と表現し、「当てるべきではなかった」と悔やんでいました。

相当に悔しそうでした。

しかし、もっと悔しい思いをしたのは、カズだっただろうと思います。

第1戦で「コンちゃんのマークは自分だった」と、2失点目の場面を悔やんでいたカズが、またしても、マークの相手にゴールを決められてしまったのですから…

マークのミスから失点を許したということで、責任があったのは事実。そのことは指摘しなければなりません。

ただ、あの場面は、遠藤&今野のプレーが素晴らしかったこともまた事実。ここは相手を褒めるしかありません。

失点したことは仕方なくて、大事なのはその後、如何に前向きになれるか、切り替えていけるか、でした。

結果的に、カズはその命題を、試合の中で十分に果たしてくれました。

5.心理的圧迫感がピークに

失点が前半27分。

時計が前半30分を経過した頃、私は、自分の体の震えに気が付きました。

2点あった余裕が1点になる。それだけで、緊張感が何倍にもなったようです。

しっかり意識してはいなかったのですが、やっぱり、怖かったんですね。

ただ、幸いというか、得点を取った後、G大阪が、若干攻めの矛先を緩めたような、そんな感がありました。

後から思えば、多少の攻め疲れがあったのかもしれません。

こうして、前半が終了しました。

まだこれから何かが起こりそう。そんな予感が大でした。

6.監督、サッカーは45分でしたっけ?

ハーフタイムの実況席。

ハリルホリッジ氏をゲストに迎え、前半戦の印象を問う解説陣。

私は、監督がどのような言葉で評するのか、楽しみでした。

が、話を聞いているうちに、その興味が少しずつ薄れていきました。

「ああ、この方はサンフレッチェの戦い方をご存じないのだな」と思ったからです。

確かに、前半のサンフレッチェは、守備に追われ、アグレッシブに前に運ぶ姿勢を見せることができたとは、到底言えませんでした。

ポイチさんも認めたように、受けに回り過ぎたことも確かです。

しかし、サッカーには前半と後半があり、重要なのは、試合が終了した時点でどちらが上回っているか、です。

広島は常にその観点で試合を捉え、戦ってきたと、私は断言できます。

だから、私は彼に言いたくなりました。「サッカーは90分間あるんですよ」と。

まあ、前半の印象を聞かれて答えた話なので、それに目くじらを立てるのも筋が通らないんですが、その時はそう思った訳です。

「後半のサンフレッチェは違うよ、よう見とけよ!」的な高ぶりがありました(微笑)。

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後編へ続きます。

ここまでお読み下さった皆様、ありがとうございました。