難敵を制した「集中力」 ~湘南戦レビュー~
0.まえがき
2015年3月7日、1カードを除き、今年のJ1開幕戦が行われました。
試合前、すべてのチームに、優勝の可能性がありました。18チームすべてに、均等に。
第1節が終わり、さらに試合が消化され、それらの結果を受けて、各チームの優勝の可能性が増減していきました。
そして、2015年11月22日、最終節を迎えて、年間勝ち点1位の可能性は、2つのチームが有するのみになりました。
サンフレッチェ広島と浦和レッズ。最終節は、それぞれホームゲームを戦いました。
状況は、広島が優位に立っていました。しかし、過去2年の結果が物語るように、浦和にも十分な可能性がありました。
ピッチに入場する両チームの選手たちに共通していたのは、目の前の試合に勝利したい、という強い意欲でした。
そして、それを後押しするのが、ファンやサポーターの声援でした。
その熱気は、テレビの画面からあふれ出してくるようでした。
1.うっかり八兵衛
11月21日、土曜日。
外出先から帰宅して、スポナビでスタメンを確認しようと思い、サイトを開くと、まだ「みどころ」の表示。
時計は午後1時。「何でなん?!」と思い、よくよくページを見ると、キックオフの欄に「11/22(日)13:30」と書いてありました…
我ながら間が抜けていて、何と最早(苦笑)。思い込みって怖いですね。
その後、すっかり拍子抜けしてしまって、相撲中継が始まるまでは、何か上の空でした。
明けて、11月22日、日曜日。
改めて仕切り直して、もう一度メンバーを確認。今度は間違いなく、「スタメン」の表示になっておりました。
時計は午後1時。キックオフの時間が刻々と迫り、緊張感を感じ始めていました。
2.納得のスタメン
前節、負傷退場し、戦列を離れたミズ。彼のポジションを誰が埋めるのか。
確実に前プレにくる湘南のスタイルを考慮して、私は、もしかすると宮原を起用してくるかもしれない、と考えました。
つなぎの部分ではササショーよりも上かな、と考えたからなのですが、結局、大方の予想通り、ササショー起用となりました。
もちろん、守備力ならササショーに軍配が上がるので、当然の起用。不安はありませんでした。
そして、サイドのポジションは、右ミカ、左航平、という、結果を出している2人が継続起用され、カシッチはベンチスタートとなりました。
テレビ解説の戸田和幸さんも指摘されましたが、不動のスタメンだったといえども、ポジションが確約されているわけではないのが、サンフレッチェの特長であり、強みでもあるところ。これも、当然の起用でした。
3.最終節の椿事
さて、昨年、見事に失敗した自宅内3元中継(笑)。
今年は、「我が家のキングカズ」が引退したため、やりたくてももうできません。
幸い、広島自身が優勝争いの当事者ということで、NHK総合とNHK-BSの2元中継に収まってくれました。
私自身も、今年こそはサンフレッチェがメイン。総合テレビの音声を大きめに、浦和戦の音量を少し絞って、観戦に臨みました。
試合開始が迫ってきましたが、ここで前代未聞の事態が起こりました。
選手の入場は、ビッグアーチが先でしたが、セレモニー等があったためか、試合開始は埼玉スタジアム2002の方が先でした。
そして、広島でコイントスやら何やらやっている最中でした。
浦和レッズ、武藤が先制ゴール!
何と、同時刻開催なのに、試合開始前から、負けが許されないシチュエーションになってしまったのです。
このことで、特に焦りを感じるとか、そういうことはありませんでしたが、「おいおい!」とは思いましたね、正直なところ。
まあ、多少の時差が生じるのは仕方ないので、あまり気にしないことにしましたが。
因みに、NHK総合では、この得点の情報はしばらく入ってきませんでした。
4.いつもの立ち上がり
埼玉のキックオフから約2分遅れて、湘南のキックオフで、ビッグアーチの試合が始まりました。
程なくしてボールを保持した広島は、いつものように挨拶代わりの攻勢をかけました。
前にも書きましたが、この辺りが、今年の広島が昨年と比べて改善したことのひとつだと、私は考えています。
最初に攻勢を仕掛けることで、自分たちのペースをつかむのが容易になり、試合にスッと入っていけるようになりました。
昨年は、相手に機先を制されて、後方でバタバタしてしまうことが多かったと思いますが、今年はその場面が少なくなったと思います。
この日の相手、湘南も、自信を持つ運動量を頼みに、前から圧力をかけてくることが予想されました。
しかし、最初に攻め込む場面を作ったことで、相手に主導権を与えず、広島が試合をコントロールすることに成功したのでした。
5.自由を与えない守備
10分辺りから、湘南がボールを保持し始めました。
1年間のJ1での戦いで、湘南の選手たちは自信を付け、深めてきています。
また、チャンスに人数を掛けて、ゴールに殺到していく迫力は、受けに回ると相当やっかいです。
戸田さんも、湘南の試合の入り方、進め方が良かった、と評価しておられましたが、走力のみならず、技術力も向上した湘南の、リズムになりそうな時間帯でした。
しかし、広島の選手たちは、それを許しませんでした。
何と言っても、広島のファーストディフェンスが、今日は特に早かった。
ボール保持者に圧力をかけるだけでなく、隙あらばボールを奪取しようという試みが目立ちました。
寿人が、シュート体制の遠藤航からボールをかすめ取った場面などは、その最たる例でした。
この成果で、明確な「湘南の時間帯」を作らせることなく、試合を運ぶことができたと思います。
6.感嘆
森保監督からミキッチに、「裏への高いボールを意識するように」というような指示が出ました。
(時間が前後しているかもしれませんが、)その後、塩ちゃんからの裏へのボールにミカが反応し、相手ディフェンダーのシュートブロックを外したとき、先制点は決まったようなものでした。
それにしても、寿人じゃなかったんですね、あのゴール。
「すわ、新記録か!?」と、ファンの誰もが色めき立ったところでしたが。
映像を何度か見てみましたが、正確にどうだったのか、私には判断できませんでした。
ただ、オフサイドじゃなかったことは確かでした。(ドウくんがシュートした時のタイミングですから。)
無論、DFとしては、当然アピールはするところですけどね。
そして、1点目の余韻がまだ残る中、私も我に返ってメモを残そうとしていた矢先に、青ちゃんが追加点を決めたのでした。
湘南が反撃しようとする出鼻をくじき、湘南イレブンにダメージを残す、効果的なミドルシュートでしたね(*)。
こうなると、もうメモなんか間に合いません。只々、テレビの前で唸ってしまいました。
「強い!」と。
(*)映像を観て気がつきました。寿人がしっかり、ゴール前に向かって抜け出していたことを。もし、GK秋元が弾いたとしても、得点になっていた可能性があったのでした。
7.すべてを解き放つ本領発揮のゴール
前半42分。多くの広島ファンが待ち望んだその時が、ついにやってきました。
佐藤寿人が、中山雅史の記録に並んだ瞬間を、観ることができたのです。
寿人がゴールする、ということにさほどこだわっていない私でも、ヘディングシュートがゴールネットを揺らした瞬間は、大きな感慨に包まれました。
まして、スタジアムに詰めかけたファンやサポーターにとっては、長らく待ちわびただけに尚更、感激もひとしおだったのではないでしょうか。
しかも、プルアウェーの動きでフリーのスペースに抜け出す、その技術は正に秀逸でした。(もちろん、クロスの質もバッチリでした。)
いかにも寿人らしい見事なゴールだったと思います。
本人の前でのゴンちゃんスタイル、さぞ気分良かったことでしょうね。
8.想定外の完勝
ハーフタイムのインタビューで、「(後半の)入りを注意した」と語ったポイチさん。
広島の選手たちは、その指示を忠実に体現してくれました。
後半の立ち上がりに軽く入ってしまい、ミスから危ない目に何度も遭ってきた、その反省が、ここでも生かされている。
心強いなあ、と思いました。
その後、ほとんどメモすることを忘れて、試合に見入っていた私でした。
湘南にも意地があり、後半、さらに差を広げられる展開になってしまっても、縦パスを入れ、サイド攻撃も交えて、一矢報いるのみならず、同点、逆転を目指して攻めてきました。
しかし、広島はそれを受け止め、しのいでからのカウンターで加点し、湘南の意地を打ち砕いていきました。
5-0。
難敵を相手に、望外のスコア。広島の完勝に終わった試合でした。
9.集中力の勝利
5点差が付くような相手ではありませんでした。
湘南は、連勝中の勢いだけではなく、チーム力自体を成長させてきた、実力あるチームです。
試合前は、本当に怖かった。最終節に逆転される悲劇が起こるかもしれない、と危惧していました。
しかも、浦和が短時間に2点目、3点目と挙げていくのが、別の画面に映し出されるわけです。
本当に13点取ってしまいそうな勢いでしたから。
「困ったなあ」と思っていました。
その意味で、前半24分の先制点と、直後の追加点は、非常に大きかった。安堵させてくれました。
そして、特筆すべきは、広島の攻守にわたる集中力の高さでした。
ファーストディフェンスの良さについては先に触れましたが、攻められても最後のところをやらせない守備の集中力はいつも通りでしたし、攻撃面でも、急所を突く動きや、勝負どころを見極める能力など、今回は本当にレベルが高かった。
スタッツによれば、シュート本数は同数だった両チーム。しかし、広島が集中力で上回ったので、湘南の攻撃を単発化させることができましたし、危険なシーンも少なかったです。
寿人の胴上げで、少し嫌な予感がしたのですが、全くの杞憂でした。
今期、一番の試合と言ってもいいのではないでしょうか。
10.あとがき
今回もいらんことを書いたので(微笑)、長くなってしまいました。
年間勝ち点1位や2ndステージ優勝については、稿を改めることにします。
できれば、今日書きあげてしまいたいのですが、どうかな。
まあ、浦和-G大阪戦の前までにアップできればいいかな。
最後に、ブロガーとして嬉しかったことがあったので、そのことを書きます。
試合中、戸田さんが「寿人とドウグラスの共存」について言及されました。
確か、異なるタイプの2人の存在により、複数の起点ができ、戦術に幅ができた、という趣旨だったと思います。
その言葉を聞いて、以前私が、寿人とドウくんの起用法について書いたことを思い出したのです。
3月の浦和戦での「寿人に代えてドウグラス」という交代策について、勿体無いなあ、開幕戦のように共存させたらいいんじゃないかなあ、ということを書いたのでした。
さすがに、ドウくんがここまで活躍してくれるとは、当時の私は想像していませんでした。
それに、何かを予言しようとしていたのでもなく、ただ、こうした方がいいのではないか、と感じたことを文章にしただけでした。
でも今、そのフォーメーションが当たり前になり、実際に機能し、戸田和幸という上質の解説者に評価されたのです。
直接、このブログが褒められたわけではもちろんないけど、なんか、嬉しかったんです。
勝手に喜んでいますが、共感されなくてもいいです(微笑)。
ブログを書き続けるモチベーションとして、大事にしていきたいと思います。
ここまでお読み下さった皆様、ありがとうございました。