「役割」を果たした先に ~G大阪戦レビュー~
0.まえがき
1年半前にブログを始めた当初から、書き始めたレビュー記事。
私が観戦したサンフレッチェの試合は、ほぼ欠かさず、このブログでレビューしてきました。
ただ1つの試合を除いては。
それは今年の5月10日に行われた、G大阪との試合でした。
TV観戦だったので、当然、メモを取っていました。そして試合後、とてもいい試合を観た、と思いました。
技術があり、規律もあり、戦術的にも整備された両チーム。直近のリーグ覇者同士、がっぷり四つに組んだ、見事な内容の応酬でした。
惜しいことに、広島が敗れてしまったし、後味の悪い出来事もあったけど、そんなことを超越した、素晴らしい試合だと思ったのです。
その感動を、何とか記事に残したかった。
でも、仕事の関係で時間が取れないうちに、試合は次々と消化されていき、投稿の機会を失ってしまいました。
そして今節、G大阪と再び対戦する時がきたのです。
もう、あの試合のレビューを書くことはありません。
願わくは今節、再び、素晴らしい試合を見せてほしい。そして、今度こそ記事に残したい。そう思うばかりでした。
1.ど緊張のTV観戦
2015年11月7日、J1のレギュラーシーズン、ラス前のゲームが、各地で一斉に行われました。
前節、会心の勝利を挙げてから2週間、この日のために準備してきた広島の監督と選手たち。
またしても「鬼門のスタジアム」という枕詞が付いた、G大阪とのアウェーゲームに、勝利を誓って乗り込んだのでした。
NHK総合で生中継されたこの試合。
私はこの日、午前中に来客があったり、近所にちょっくら出掛けたりして、普段通り、呑気で平静な土曜日を過ごしていました。
しかし、TVを付けた瞬間、一気に緊張感が高まってくるのを自認しました。
どのチームが相手でも簡単な試合などにはなりませんが、特に、相手がG大阪ともなれば、その難しさは語るまでもありません。
もちろん、「選手たちはきっとやってくれるだろう」という想いは、いつも通り強かったのですが、「(広島が)負けてしまうんじゃないだろうか」という不安を、完全に打ち消すことはできませんでした。
2.4人リーチ
一部で「柏が復帰してくるのでは?」という予想があった広島ですが、結果的に、スタメン、ベンチとも、前節と同じメンバーで臨むことになりました。
対するG大阪は、ヤットさんがその将来に太鼓判を押す新星、井手口をスタメン起用。そして、ヤットさんをオフェンシブな位置に上げてきました。
TV画面では、両チームのメンバーが、フォーメーション図によって紹介されました。
広島のメンバーには、イエローカード2枚持ちの選手が4人(青ちゃん、千葉ちゃん、ミカ、ドウくん)。
ファールには十分気を付けて欲しいと思いました。
3.ミスの目立つ序盤
試合が始まってしばらくは、両チームとも、まずまず無難にゲームを進めていたと思います。
特に、バランスが良く取れているな、と思いました。
しかし、15分に差し掛かろうという頃から、徐々にG大阪のペースになってきたように、私には見えました。
特に、この日は宇佐美がかなりアグレッシブに仕掛けてきていて、そこからG大阪のチャンスが生まれていました。
結局、前半の前半は、G大阪のペースで推移した印象でした。
その時間帯、広島側のミスがやけに目立っていて、心配でした。
パスミスに関しては、G大阪も当然ケアして、インターセプトなど狙っていたので、その意味では仕方ない面はありました。
ただ、それ以外の部分でも、ボールが足に付かないような場面が何度か見られました。
トレーニングの段階では変な気負いが無く、いつも通りの練習ができた、と聞いていましたが、いざ試合ということで、思いの外、硬くなってしまったのかな、などと考えてしまいました。
4.態勢逆転
やや劣勢を強いられていた前半22分、広島らしい攻撃が1つ見られました。
左サイドの航平から、右サイドのミカまでつながるパスが生まれ、その流れから、ドウくんが、相手DFの股を抜くボールをゴール前に送りました。
そのボールに反応した寿人でしたが、決め切ることはできませんでした。しかし、サイドtoサイドの大きな展開から最終的に寿人につながる、という一連の流れができた、大きな意味のあるプレーでした。
これがきっかけになったかどうかは分かりませんが、25分過ぎ辺りから、広島が攻撃に厚みを持てるようになってきました。
基本的には、G大阪の攻勢を受け止めてからのカウンターなのですが、十分な人数をかけていましたし、何より、シュートまで持っていけてるのが良かった。
こうして、広島がG大阪からペースを奪い取り、何度かチャンスを創出することになりました。
得点こそ奪えなかったものの、いい状態をキープしたまま、前半を終えることができました。
5.警戒心
コーナーキックが1本もなかった、珍しい(?)前半戦を終え、ハーフタイムへ。
前半の後半は、G大阪が「少し上手くいかない感」を出していたので、健太さんがどのような指示で立て直してくるのかが気になりました。
何しろ、昨年(ナビスコ杯決勝)のトラウマがありますので。
ガンバの後半の変わり身には大いに警戒しなくてはならない、と思いました。
6.大きな先制点
期待と不安が入り混じったハーフタイムを終え、後半が始まりましたが、今度は、G大阪の側にミスが多く見られました。
パトリックの振り向きざまのシュートなど、見せ場は作ったものの、なかなかG大阪の形を作ることができません。
そんな中、相手に奪われたボールを再び奪還し、逆襲の形になったところを相手にファールされ、広島がFKのチャンスを得ました。ボールサイドには、塩ちゃんとドウくん。
塩ちゃんがボールの前を通り過ぎた後、ドウくんが放ったシュートは鋭い弾道で、ゴール左隅に見事に突き刺さりました。
優勢に試合を進めていても、得点が入らない内は、やはり不安は残るもの。この先制点は、一時の安心感を与えてくれました。
7.GKの矜持
東口やミズが負傷退場するなど、何やかやありましたが、先制点の効果か、後半はほぼ広島ペースで推移しました。
ただ、チャンスを作るものの、なかなか追加点を奪えない状況が続いたので、正直、嫌な流れだな、と思ってもいました。
もし、宇佐美のシュートが枠に収まっていたら、この試合の趨勢がまた反転していたことでしょう。
その意味で、彼の前に立ちはだかった卓人の対応が、極めて大きかった。
当然、宇佐美にしてみれば、決めなければいけなかったシュートでしたが、卓人も代表経験があるGK、そう易々と決めさせる訳にはいきません。
シュートコースを限定した卓人の圧力が、宇佐美に枠内シュートを打たせなかったのでしょう。
8.ダメ押し
ポイチさんの「バランス取って~」の声がスタジアムに響いた直後。
左サイドでパスをつなぎ、ガンバDF陣を完全に寄せておいて、青ちゃんが、右サイドのフリーのスペースに、仕上げのパスを送りました。
航平の豪快なシュートでダメ押し点を奪った広島が、7分のロスタイムを無難に乗り切り、無失点で勝利しました。
9.G大阪の今後の課題(私なりに)
今年のナビスコ杯決勝を観戦していて、とても気になったことがありました。
鹿島に押し込まれる中でマイボールになったとき、一旦ゆっくりボールをキープして落ち着かせればいいのに、あの日のG大阪には、その気配が薄かった。選手たちは総じて前に気持ちが走って、明らかに攻め急いでいる。
私にはそのように映ったのです。
今節の試合では、点差がついて以降のG大阪の攻撃が中央偏重で、サイドをほとんど使えなかったところに、普段のガンバと違う姿を感じました。
健太さんが「サイドをうまく使うように」と指示を出していたのですが、ピッチの上ではイマイチ表現されていなかったと思います。
とにかく、何か焦っているように見えて仕方ありませんでした。
また、組み立てのパスを広島にカットされて自分たちの形を作れなかったことなど、思うようにいかない状況が続いて、フラストレーションが相当たまっていたようでした。
特にパトリックは、前半からずっとイライラしていたように見えました。
退場の原因となった瞬間的な感情の発露を、彼自身、試合後に後悔していましたが、あれはやはり、試合の中でコントロールしなければいけませんでした。
厳しいようですが、今節の勝負は、広島の出来云々よりも、ガンバが自滅した印象が強かったです。
本来のG大阪を、取り戻さなければならないと思います。
スポナビの記事に、選手たちがこの試合を振り返るコメントが、いくつか紹介されていました。
それを読んで思ったのは、彼らが、自分のそれぞれの役割を見失いかけているのではないか、ということでした。
次の日曜日には、天皇杯があります。CS出場権も、諦める段階ではありません。
それらに向けて、選手たちはそれぞれ、自分の役割をもう一度見つめ直す必要がある。私はそう思います。
最後に、東口選手の回復を祈念いたします。
10.「らしさ」を全うする強さを見た
翻って、今節の広島の戦いを振り返った時、今回は特に、各人それぞれの特長がよく見えた試合でした。
例えば、カズ。
前半終了近くの時間帯、約数分の間に、相手のチャンスの芽を摘むインターセプトを2回、立て続けに見せてくれました。
個人的MOMにカズの名を挙げる人を某所で見かけましたが、それほど、この日の「読み」は際立っていました。
あるいは、ササショー。
ミズのケガ(大事ないことを願います)で急遽出場することになりましたが、G大阪の攻撃に対してしっかりと蓋をして、DFとしての役割をキッチリ果たしてくれました。
(もとより、力があることは分かっているので、ミズが下がった影響への懸念は少なかったんです。)
寿人にしても、ここぞという時には守備をしてくれるし、イエローをもらった時には驚きましたが(*)、試合が荒れかけた時に宥める側に回るなど、自分のやるべきことを知った上で行動しているのがよく分かります。
いま挙げた選手以外も、自分の特長や役割を理解し、ピッチ上でやるべきこととして体現していました。
そこには、ポイチさんを始めとする首脳陣の指導力も働いているでしょうが、いつでも「広島のサッカー」に立ち返れる、という安心感と言うか、そういうのが根底にあるのだろうと思います。
拠り所を持つ強みが、この試合の勝利に結びついたような、そんな風に思います。
(*)「4年ぶりぐらいだったっけ?」と思っていたら、6年ぶりなんだとか! そのことに驚いた次第です。
11.ファン・サポーターにも「役割」がある
今節の結果で、広島は年間勝ち点1位の座をキープしました。また、ステージ優勝の可能性も高まりました。
ガンバに負けてしまうかもしれない、との危惧が幸いにも払拭されて、また1つ、前進することができました。
しかし、ポイチさんがいみじくも語った通り、サンフレッチェはまだ、何も手にしていない状態にあります。
最終節の試合結果を受けて、初めて、結果が確定する訳です。
ステージ優勝はともかく、年間1位においては、決して安閑とできる状況ではありません。
広島の最終節は、湘南ベルマーレが相手です。最終節に「疲弊しないチーム」と戦わなければならない訳です。
もちろん、広島ファンとして、相手がどこであれ勝ち切ってほしい、と思っています。
でも、そう簡単に勝たせてくれる相手でないことは明らかです。
昨年、浦和に起こったことが、一昨年、横浜FMに起こったことが、今年、広島に起こらないと言い切ることはできません。
広島の勝利を信じていても、過信は禁物です。
幸い、監督も選手たちも、そのことを十分承知しています。地に足をつけて、勝つための準備を余念なく行なってくれるはずです。
そんな彼らを虚心坦懐に応援することが、ファンやサポーターの役割だと、私は思います。
12.あとがき
最終節を勝利して得られるもの、というのが、いろいろあるようですね。
特に、1シーズン制導入以降の年間勝ち点記録というのは、大いに魅力的です。
もっとも、18チーム・2ステージ制で78というスーパーなのが上にありますが(全盛期のジュビロ磐田)。
サンフレッチェは、2連覇した時も、「負け数が多い」だの「勝ち点が少ない」だの「ドングリの背比べ」だの、いろいろと後ろ指を指されてきたのでね。
是非とも、最後の難しい試合を勝ち切って、年頭の目標を達成してほしいですね。
最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。