溌剌と円熟のコラボレーション ~清水戦レビュー~

0.まえがき

今日は2015年5月3日、日曜日です。

実は私、昨日、仙台戦を戦うサンフレッチェを観るため、エディオンスタジアムまで行ってまいりました!

昨年のACL以来、約1年ぶりでありました。

3週間ほど前、職場でGWの予定を聴取されたときに心に決めていまして、諸事情で一度断念しかかったのですが、何とか里帰り(笑)することができました。

結果はご承知の通りで、行った甲斐があったというものでした。いずれまたレポートしたいと思っています。

1.久しぶりのレビュー

2015年4月25日、アウェー3連戦を終えたサンフレッチェが、4月8日以来のホームゲームを戦いました。

相手は清水エスパルス

個人的には、実に、J1第2節、松本山雅戦以来の観戦になりました。

もちろん、レビューを書くのもそれ以来ということになります。

(実は、「サンフレッチェ広島」のカテゴリーで書くのも久しぶり。4月は1件も書けなかったのでした。)

この日は、おそらく広島だけだと思いますが、NHK総合で生中継がありました。

本当は、録画しながら観たかったのです。しかし、我が家のキングカズ(笑)は、他の用途で容量不足。

また、前回書いた通り、若手PCの録画も不可。ということで、通常のTV観戦となりました。

解説は、当ブログではおなじみの戸田和幸氏。

広島OBですが、プロとしてのスタートがエスパルスでしたので、この試合の解説者としては適任だと思いました。

2.流れ重視の両スタメン

森崎浩司のケガで、シャドーの人選で再考を余儀なくされた広島ですが、このところ、柴崎&ドウグラスの徳島コンビ(*)が組んでから、チームが上向きになってきました。

この試合のスタメンも、その流れをそのままに、寿人を含む前線のトライアングルで構成されました。

浅野は、野津田と共にベンチスタートとなりましたが、FC東京戦での戦術的な成功を踏まえ、今回もジョーカーの役割を与えられたものと見えました。

そして、他のベンチメンバーには、宮原と丸谷が抜擢された形で入りました。水曜日のナビスコ杯(松本山雅戦)でのパフォーマンスを評価されたものだろう、と思いました。

(*)最初、「元徳島コンビ」と書いてしまったのですが、これは間違い。ドウグラス保有権は今も徳島が持っているからです。

7月にいなくなってしまう可能性が十分あるんですよね。頑張れ、皆川!

対する清水も、ナビスコ杯勝利の流れを汲んだか、GKに杉山力裕を入れてきました。

今期は、リーグ戦では櫛引を起用していて、杉山はカップ戦で起用されるパターンでしたが、この日は、(五輪予選のため)櫛引が不在だった第3節以来のリーグ戦出場になりました。

あと、目を引いたのが攻撃面で、外国人2人を揃ってスタメン起用してきましたね。大前や長沢をベンチに置いている辺りが非常に不気味でした。

3.不思議な立ち上がり

私が清水戦を観るときは必ず、「清水は前半から積極的に圧力をかけてくる」と思ってしまいます。

今回もそう思いました。なので、清水のプレッシャーを広島がどうしのぎ、反撃につなげていくか、という辺りを注目点だと考えました。

しかし、今回の清水は、そんな想像とは違っていました。

アタマからは突っ込んで来ず、自陣にブロックを敷いて、広島の動きを見極めるかのような戦法を採ってきたように見えたのです。

TVの俯瞰した映像から、ゾーンを意識した感じなのかな、と思いました。

戸田氏の解説によれば、「4-1-4-1」のフォーメーション。4バックの前にアンカーを置くスタイルだということでした。

清水が前から来ないので、広島としては余裕を持てる立ち上がりとなり、バックラインでパス交換しながら、前線の動きに呼応してボールを運ぶという、いつもの形に持ち込むことになりました。

特に目立っていたのは寿人の動きで、彼が中央のDF2枚の間に入り込み、そこでボールを受ける形が、開始5分の間に3回ぐらいありました。

4.曖昧

前半15分ぐらいまでは、チェスの序盤のような立ち上がりでした。

双方が相手の手の内を探りながら、次の段階に向けた布石を打っているような、そんな雰囲気があったのです。

ただ同時に、実のところ、以下の理由から、広島が優位に立っているということも感じていました。

1つは、青山へのマークが曖昧だったこと。

基本的に中央にいる2人のMFが彼を見る役割になるのだと思いますが、どちらが付くのかがハッキリしていなかったように見えました。

また、広島側も、森崎カズや千葉らとの連携で、青山のマークを軽減させるように計らいます。

そうした要素がうまく働いたので、今日の青山は、比較的自由にマイボールを扱うことができたと思います。

5.弱点を突くポジショニング

もう1つは、戸田氏の解説でも語られた、柴崎の巧みなポジショニングが、清水のフォーメーションを機能させなかったこと。

「今日は清水がミラーゲームを仕掛ける」という事前情報がありましたが、前述した通り、清水は4-1-4-1のアンカーシステムを採用してきました。

大榎監督が試合後に、「やり慣れている方に分があるだろう(と思った)」と語っていたそうですが、無論、狙いがあっての作戦だった訳です。

しかし、アンカーシステムは、構造的にアンカーの横のスペースが弱点になりやすい(*2)。

柴崎の位置取りは、その弱点を巧みに突くものでした。

具体的には、アンカーの横、DFの前、MFの背後、という、いわば「ポテンヒット・ゾーン」。

相手が捕まえにくい位置に顔を出し、周囲との連携、とりわけアウトサイドの柏との関係で崩しを狙うシーンが目立っていました。

「柴崎のポジショニングについてドウグラス(談話)が高く評価している」という話が放送に乗ったのですが、彼のプレーぶりは、あたかもそれを証明するかのようでした。

(*2)実は、広島がよく苦しむパターンもそれで、攻撃時に中盤が青山1人になりがちなので、その横のスペースをカウンターで突かれてしまうことがよくあるのです。(ドリブラーを苦手とする一因でもあります。)

6.理にかなった「偏重」

前半の半ばから、広島は、左サイドへのロングボールを多用して、いくつかチャンスを作っていきました。

この日、清水の右サイドバックは枝村でした。

枝村が好選手であることは間違いないのですが、本来のポジションではないので、守備力については、さすがに見劣りするのはやむを得ないところ。

広島が左サイドを中心に攻めていたのは、理に適っていると言えるでしょう。

ただでさえストロングポイントなのですから、尚更です。

そして、前半29分、それが実を結ぶことになりました。

7.持っている男

広島のJ1通算1000得点を決めるのは誰なのか?

シーズン当初から話題になっていたらしく、クラブも、誰が決めるか投票するキャンペーンを展開していたようです。

恥ずかしながら、知りませんでした。

その瞬間は、FKを柴崎が蹴った数秒後に訪れました。

ヘディングでボールをゴールに運んだのは、まさかの?千葉ちゃんでした。

DFのマークをうまく外して決めた、技ありのゴール。

自身5得点目がメモリアルな「サウザンドゴール」になる辺りは、らしさ爆発といったところでしょうか。

名前にも「千」が入っていた、とかで。気付かなかったなあ(笑)。

ちなみに、何とこれでJ1で5年連続ゴールとなりました。1年1得点ずつという省エネぶりですが、もっと取っていいのよ(笑)。

8.一転した流れ

試合に戻ります。

得点の後も、ロングフィードを中心に優勢を保ったまま、広島ペースで前半を終了されることができました。

清水も、前半終了間際になって、少し動きを作ろうとしていましたが、残念なことにミスが多かったですね。

連動もぎこちなく映りました。

当然、後半は清水も逆襲を狙ってくるだろう、ということで、注目ポイントとみていました。

案の定、後半キックオフから、猛然と前プレをかけてくるエスパルスの選手たち。

当初は、パスを回していなすことができていたサンフレッチェ。林を含め、全くボールを取られないことに感心していました。

しかし、清水の勢いは、衰えることなく長い時間続きました。

徐々に余裕がなくなってきました広島。それでも決定的なチャンスは与えずに我慢していましたが、後半16分、大ピンチの時を迎えてしまいました。

六平のシュートを林がブロックしてくれて、何とか事なきを得ましたが、肝を冷やしました。

9.流れを引き戻した若い力

後半23分、同時に投入された2人の若者が、広島劣勢の流れを、見事に好転させてくれました。

浅野琢磨と野津田岳人。同期入団のライバルが、迫力あるチェイスで、我慢するだけだった先輩たちを目覚めさせたのです。

もちろん、チェイスだけではありません。ボールを所持すると、それぞれの特徴を生かした攻撃で、清水のディフェンスを脅かしていきました。

こうして、再び広島がペースを取り戻したあとの後半35分、ベテランが彼らにゴールのお膳立てをしたのでした。

10.レジェンド

右サイドを突破した浅野のクロスが逆サイドに流れ、清水ボールになりますが、広島の選手たちがプレスをかけ続けます。

そして、ボランチにボールが渡る一瞬、森崎カズがそれを奪い取ります。

自らドリブルで前進した後、浅野にパス。反転した浅野が相手を4人引き付ける格好になり、フリーのスペースに進入した野津田に渡します。

前に右足のシュートがフィットせず、チャンスを逃していた野津田でしたが、今回は左足に持ち替える余裕がありました。

若い2人の躍動も去ることながら、連携したプレッシングがチームとして見事でしたし、とりわけ、カズの読みの鋭さが光りました。

前の試合で、服部公太氏を抜き、サンフレッチェのJ1出場試合記録を塗り替えたばかりのカズ。

実は、私は、キングカズに続き、森崎カズについての記事を書こうとして、実際に書き進めていました。

途中で意に染まない箇所ができてしまい、断念してしまったのですが、ユースから昇格して丸15年、2度の病を克服して成し遂げた偉大な記録は、いくら褒めても足りないくらいでした。

インタビューで、若手の壁になる覚悟を語ったカズ。偉大なレジェンドとして、納得するまで続けて欲しいと、切に思います。

11.安心と課題

終わってみれば、2-0で広島の快勝となったこの試合。しかし、課題もありました。

試合後のお立ち台で、千葉ちゃんも話していましたが、後半の立ち上がりにまったりとした時間帯を作り、エスパルスに付け入る隙を与えてしまいました。

今シーズン、気を付けなければいけない時間帯に、失点したりペースを握られたり、という傾向が目に付きます。

選手も監督も、それは重々承知していると思います。球際を頑張って、最後までやらせない粘りは見せてくれています。

しかし、それはたまたま防ぐことができただけなのかもしれません。

自分たちの不用意なプレーで、相手にペースを引き渡す必要はないですし、勿体無い話ですからね。

改善して欲しいところです。

12.中継雑感

今回のTV中継は、放送時間を長く確保していたようで、試合後の例のヤツまで放送してくれました。

あれって、今はもう「劇場」とは言わないんですかね?

とにかく、アンガールズも登場して(*3)、にぎやかな回となりました。(2点目の「ジャンガジャンガ~」の理由もこれで分かったという(微笑))

これには戸田さんも少し悪乗りしていましたね。

この日の戸田さんは、清水のプレーや現状に配慮しつつも、広島のホームゲームである、ということを意識した解説だったですね。

いつも通り、正直な語り口でしたし、良かったと思います。

(*3)田中氏の方はカープファンのイメージの方が強いですが、山根氏は学生時代、あのステージ優勝を、基町クレドのビジョンで見つめていたほどの筋金入りです。いつか「サンフレッチェ芸人」とかやってくれませんかねえ(笑)。

13.あとがき

いつも通り、いろいろなことを織り込んでおります。いかがだったでしょうか。

今回の記事は、試合当日のメモを基に書いています。

今から1週間以上前のこととて、それなりに忘れてしまっています(苦笑)。しかも、その後に2試合観てますから、記憶がごちゃ混ぜになっていたりします。

「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、全くその通りだと思いますね。

最後に、放送を観ていて気付いたことを1つ書いて終わることにします。

前半21分頃、DFの裏を狙った寿人の動きに、塩ちゃんがパスを出しそびれてしまいまして… 遠くの寿人に謝っていました(微笑)。

個人的には結構ツボでした。面白かったです。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。