両者の長所が出た良質な一戦 ~松本山雅戦レビュー~
0.まえがき
北陸新幹線開通に沸いた、2015年3月14日。ここ、広島でも、鉄道をめぐるニュースがありました。
アストラムライン(以後、AL)と言えば、終点の広域公園前がビッグアーチの最寄り駅ということで、多くのファンやサポーターが利用する重要路線。
私は開業日に、休日出勤のついでに乗り降りしてみました。
乗り継ぎはせず、JRの駅を利用してみただけなのですが、現地で見た印象では、JR上り線とALとの乗り継ぎには、不便を感じそうでした。
しかし、これまで連絡駅がなかったことを考えると、ALを利用する上での利便性は確実にアップしていると言えます。
特に、遠方から来られるサポーターの皆さま、ビッグアーチへ向かうルートの候補として、研究してみてはいかがでしょうか。
それでは、第3節直前になってしまいましたが(笑)、第2節、松本山雅戦のレビューを始めさせていただきます。
1.試合開始迫る
松本平広域公園総合球技場、通称「アルウィン」。
J1クラブとして初めてホームゲームを迎える松本山雅の相手として、日程くんに(?)選ばれたサンフレッチェ広島。
3月中旬、気温0.8℃のナイトゲームをなぜやらなければならないのか?!という疑問を持ちつつ(*)、それでも、17091人という観客を集めた、熱い試合の始まりとなりました。
両チームとも第1節と同じスターティングメンバー、広島に至っては、控えのメンバーまで前節と同じというメンバー構成となりました。
広島の場合、「勝っている時はいじるな」の鉄則を守った形となりますが、逆に言うと、開幕戦でベンチ外だったメンバーの突き上げ及ばず、ということでもあり、少し残念にも思いました。
NHK-BSの解説は戸田和幸氏。開幕日のJリーグタイムに登場していましたね。
昨年はスカパーで解説業をされていましたが、契約が切れたのかな?
実況は、某オリンピックでメインを務めて以来注目している、内山俊哉アナウンサー。
(「注目している」とか上から語ってますが、私より年長です。)
その内山アナの実況が薄く聞こえるほどの、松本山雅サポーター群の熱いコール。
キックオフ前から、盛り上がりがすごかったですね。
(*)どうやら、「Jリーグタイム」生出演の絡みでそうなった、というのが真相のようですね。そう推測されます(笑)。
2.ニュー・カシッチ
いわゆる「広島対策」には2、3、やり方があると思うんですが、開始早々に松本山雅が仕掛けてきた、ロングボールからのプレッシングもその一つ。
プレビューで書いた通り、私は、松本山雅の試合を観るのが初めてで、通常の彼らのサッカーについてもよく知らない状態でした。
なので、これがいつもの松本山雅の戦い方なのか、特別な形を採ったのか、その辺は分かりかねますが、少なくとも、広島を研究しての振る舞いではあるのでしょう。
しかし、先制したのは広島でした。
開幕戦でも効果的だった、浅野のドリブルでの仕掛けから、その流れでパスを受けたカシッチの、まっすぐ切れ込んでのシュートが、ゴールネットを揺さぶったのでした。
カシッチが今年違うのは、ゴールへの意識が強まったこと。プレシーズンからその姿勢は示されていたようですが、公式戦2戦目で早くも結果に表れましたね。実に素晴らしい!
3.裏を突かれる
反町監督のコメントが入り、広島がボールを保持している時はなかなか奪えない、みたいな話をしていたと思うのですが、その通り、広島のバックラインはボールを取られない。
このままの流れで試合が進むかと思った矢先でした。
松本山雅のハイボールが、広島陣内のアバウトな場所に流れてきましたが、広島のGKとDFが処理を誤ってしまいました。
その場はいったん逃れたのですが、その流れから松本山雅にゴール前で振られてしまい、最後は、カズのファールがPKの判定となってしまいました。
広島の攻撃時で、バックラインが上がっていた、その隙を突かれたことになるのですが、ちょっと対応が中途半端だったでしょうか。
一つの課題が見えた形ですが、ある意味、ポジティブなミスではあるので、そんなに悲観しなくてもいいかな、という気もしています。
4.培ってきた貫録
さて、同点とされてからの広島ですが、全く慌てる気配がありませんでした。
実際、焦る必要も何もない時間帯ではありましたが、それを普通にしれっとやってのける広島はさすがです。
そして、前半の間、しっかりボールを保持しながら、ジャブを繰り出し続けるという、広島のペースに終始しました。
松本山雅も、ブロックを作って待ち受けてはいました。
しかし広島は、千葉ちゃんやカズが持ち上がってみたり、シャドーがDFの間に顔出ししてみたりと、多彩な攻撃でプレッシャーをかけ続けました。
そして、大きな追加点が生まれたのでした。それも前半最後のプレーで。
5.GKを選ばないFK
浩司が今年違うのは、プレスキックの精度が、昨年より格段に増していること。
元々、キックの精度に定評があったのですが、ここ何年かは、体調不良等があって、鳴りを潜めていました。
だが今年は、開幕戦でのアシスト(CK)に続き、この試合2点目となるFKということで、完全復活を印象付けていますね。
今回のFKも、スピード、コースとも申し分なく、相手DFが邪魔にならなかったとしても、GKがストップするのは至難の業だったと思われます。
あの精度が恒常的に繰り出せるなら、浩司が言う通り、相手が周作だろうが誰だろうが関係なくなるはずですね(微笑)。期待がかかります。
6.ジャッジも解説も明瞭な方がいい
ところで、FKやり直し、についてですが、私自身は、ジャッジがどうだったのかということは判定できかねたのです。
ただ、ジャッジ周りでワサワサとしたことは確かなので、かっこいい2点目が決まったとはいえ、何か釈然としないところはあったのです。
しかし、そこに戸田氏が言及してくれたことで、TV観戦した方の多くが、少しスッキリすることができたのではないでしょうか。
無論、戸田氏の発言は一つの見解であり、見る人によって別の見解があることは否めません。
それでも、解説者の立場でジャッジについてしっかりと発言してくれる人は、実は意外に少ないと思うんですよね。
そこが彼の強みであると思うので、是非、今後も貫いて欲しいです。
7.一抹の不安
大きな勝ち越し点を加えて、迎えた後半。
キックオフのボールをシュートまで持ち込み、機先を制した広島は、その後もボールを保持し、シュートやパスを繰り出しながら、セカンドボールも拾いまくって、松本山雅に我慢を強いる形を続けました。
広島の優勢に、観ていて安心感はあったのですが、相手にはセットプレーという武器があり、それを与えるとプレッシャーになるので、多少の不気味さもありました。
そして、結果的には、優勢のうちに追加点を挙げることができたら良かったのに、という試合になっていきました。
8.圧力と対峙した末に
後半30分を過ぎ、松本山雅もついに勝負をかけてきました。
ロングボールと走力、セットプレーの質と高さ、等々、松本山雅のストロングポイントと思われる特徴を存分に発揮して、ゴールに向かってきました。
その背後で、サポーターの熱気が後押ししてくるので、受け太刀する側として、とても「圧」を感じされられました。
広島も、どこかでボールを収めて落ち着かせられたら良かったのですが、思うようにはいきませんでした。
途中交代で入ったドウグラスも、今日はあまり存在感を示すことができませんでした。
それでも、球際に執着を見せた広島が、林の対応もあって、追加点を与えることなく、試合を終わらせることに成功したのでした。
9.元王者の矜持を見れた試合だった
この試合、優位な時間帯にダメ押し点を取れなかったため、終了間際に苦しむことになってしまいました。
森保監督も苦言を呈したそうですが、確かに、そこは課題として残ったと思います。
ただ、苦戦の時間帯があっても、結局、失点することはなかったし、それはなぜかというと、球際の所で守備陣が集中を切らさず、厳しく対応できたから。
その辺りを踏まえても、最後に不細工な形にはなったけれども、総合力上位のところは見せてくれました。
松本山雅の選手(飯田主将)も、その点については認めてくれましたね。
今回の広島は、勝者に値する戦いぶりだったと思います。
10.監督としてやることはやっていた
Jリーグを代表する監督の一人である、広島・森保監督と松本山雅・反町監督。
この試合に関して、それぞれに注目すべき発言をしていましたので、取り上げてみます。
まず、森保監督から。
前半の中頃だったと思うのですが、広島DF陣に対して、監督が「オビナを徹底マークしろ」という指示が出ている、というレポートが入りました。
それを聞いて、ポイチさんの、昨年とは違う姿を見た気がしました。
昨年のナビスコ杯決勝の時、「G大阪のパトリック選手にやられてしまったが、広島は特にパトリック対策を採っていなかった」という趣旨のことを、私は記事に書きました。
そのことが頭にあったので、監督のその指示を聞いて、「ああ、この監督は、試合中の対応力を手に入れたんだな」と感じたのです。
まあ、パトリックの時も、実際は同様の指示が出ていたのかもしれませんが。
でも、実際にそうした指示が出ていることを確認できたので、今後の森保采配にも期待していいと思えました。
一方、反町監督について。
試合後の会見で、例の2点目のワサワサについて、判定に物申したんだとか。
ゲキサカの記事によると、「不可解なファウルと、不可解なやり直しがあったのは、長らく選手たちが準備してきたことに対しては値しない、残念なことだった」とコメントしたのだそうです。
それを語った時の口調とか表情とか、発言のニュアンスが分からないのですが…
私は、注目すべきは後半の部分、選手たちの準備について言及した部分だと考えます。
ここに、反町監督の男気を感じられないでしょうか。
判定への批判より前に、選手たちの努力に報いてやりたかった、という気持ちが、私には感じられました。
「あの判定がきっかけで失点に結びついてしまったので、審判のせいにした」という意見があるようですが、それはちょっと不当な非難ではないかと思いますね。
(反町さんには、理知的で理論派というイメージがあるので、今回はそれが逆に作用したのかもしれませんが。)
将来の日本代表監督として期待する声もある、2人の監督。
さすがはそれだけのことがある、と私は思います。
11.生まれる前の相撲界になぞらえてみた
試合後しばらくして、ブログのことなど考えていた時にふと、「この試合は、大鵬対柏戸みたいだったな」と思い付きました。
大鵬、柏戸といえば、私が生まれる前に全盛期を迎えた横綱で、特に大鵬は、白鵬に抜かれるまで、幕内優勝回数1位に君臨していた名横綱でした。
「柏鵬時代」として今も語られているのですが、2人の力士としてのタイプが対照的でした。
大鵬が、総合的に能力が高く、守備力がある堅実なタイプであるのに対して、柏戸は質実剛健、突進力があり、一芸を磨いて上り詰めたような力士でした。
また、大鵬は突進してくるタイプをやや苦手としていたそうで、2人の対戦も、柏戸の突進を大鵬が受け止めらるか否かにかかっていたらしいですね。
今回の試合を観て、攻撃力を背景に一途にトライしてくる松本山雅の戦いぶりを、柏戸の取り口に例えると、何となくしっくりくるように、私には思えたんですね。
そうすると、J1連覇の広島は、総合力の面から大鵬に例えられそうだな、と。(優勝32回の大横綱になぞらえるのは面映ゆいですが(笑)。)
現状の実力は、まだまだ広島に一日の長があると思われますが、一番勝負で戦った場合は、それほどの差があるとは言い切れないですし、何が起こるか分からないのがサッカーでもあります。
実際、大鵬と柏戸の対戦成績は拮抗していたわけですしね。(大鵬の21勝16敗。途中までは16勝16敗と互角だった。)
これから松本山雅と対戦するチームは、初昇格と侮っていると痛い目を見ると思いますよ。
12.サポーターの鏡
最後に、これだけは書いておきたかったことを、書かせていただきます。
松本山雅のサポーターは素晴らしいですね!
試合開始前から、試合中、そして試合終了後に至るまで、終始、選手たちを支える声を出し続けていましたよね。
実際は、あのFKの辺りなど、声が止んでいる時間帯もあったようですが、それはおそらくわずかな時間だと思われます。
そして、何よりも感銘したのは、私が聞いた限り、自チームへの非難はおろか、広島へのブーイングさえも耳にしなかったことでした。
松本山雅のサポーターは、決して自己主張しようとはしません。只々、応援する松本山雅の選手たちが、自分の力を存分に発揮できるように、後ろから支えるだけです。
その様子が、私には新鮮で、素晴らしいと感じたのでした。
これからも変わらず、同じスタンスで応援を続けて欲しい。
そして、いつかサポーターのスタンダードとして、尊敬される存在にまで高めて欲しいと思います。
13.あとがき
今回も盛り沢山に色々と織り込んだので、長くなってしまいましたが、書きたいことはほぼ書き切ったと思います。いかがでしたでしょうか。
1つ疑問が。
プレビュー、レビューと、「松本山雅」と表記してきたのですが、少し縮めたいな(微笑)と思いました。
その場合、「松本」がいいのか「山雅」がいいのか? 別にどちらでもいいのか?
そこは助言して頂けると、今後助かります。
今回の試合、審判関係で微妙になりましたが、試合そのものはフェアでいい感じでした。
次の試合以降もこんな感じで、できればカードなしでお願いしたいです。
最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。