【高校駅伝】連覇ならずもアベック入賞を果たす ~世羅高校の戦いを回顧する~

0.まえがき

2016年12月25日、日曜日。

この日は朝から、そわそわと落ち着きませんでした。

高校駅伝女子、高校駅伝男子、そして有馬記念と続く、注目のレースたちが、私をワクワクさせてくれたからです。

今回の記事では、私の初の試みとして、高校駅伝回顧録を書いてみたいと思います。

尤も、広島出身で、広島在住でもある私は、当然、広島代表である世羅高校の戦いに注目していました。

なので基本的に、大会そのものの回顧ではなく、世羅高校の話がほとんどを占めると思われます。

その点を踏まえて、お読みになる方はお読み頂きたいと思います。

なお、通常は敬称略の当ブログですが、今回は、対象が一般の高校生ということで、男子は○○くん、女子は○○さん、と呼ぶことにいたします。

1.総評

女子は連覇を、男子は3連覇を、それぞれ目指した世羅高校でした。

もちろん、優勝してもらえたら、それが一番嬉しい結果です。

しかし、必ず世代交代が発生する高校スポーツにおいて、優勝を続けることは、さほど簡単なことではありません。

今年は男女とも、下級生が多いメンバー構成になりましたし、レース前の私は、優勝してほしい気持ちと、優勝は難しくなるかなあという気持ち、両方を意識していました。

結局、世羅高校は、女子が8位、男子が7位、という結果となりました。

今年のレース内容を振り返ったとき、選手全員が力を出し切ることは難しいことなんだなあ、と改めて痛感させられました。

また、力を出し切った、健闘した選手がいた反面、実力のすべてを発揮できなかった、悔しいレースをしてしまった選手もおりました。

そして、昨年はできていた「多少の失敗は全員でカバーする」というチームプレーが、今年は少し(結果として)不足してしまったかな、と思いました。

それでも、男女共、苦しい展開でもレースを捨てずに粘り通して、最後は入賞を果たすことができたので、それは評価して褒めてあげたいと思いますね。

勝てなかった悔しさは、選手たちには残ったでしょうが、今年の順位も決して恥ずかしくない成果だと思います。

2.女子

女子の場合、ハーフの距離ですし、メンバーが5人と少ないので、誰かに何かが起こった場合のロスは、どうしても大きくなってしまいます。

今年は残念なことに、中軸メンバーに想定外が出てしまいました。

優勝した大阪薫英女学院が、5人とも失敗のない走りでつながっただけに、そこで差がついてしまったことは否めないですね。

1区の大西響さん(2年)が2位で走り抜いたことは、正直なところ、予想していませんでした。

終わってみれば、昨年のあの小吉川さんよりも1秒早いタイムを記録していました。

昨年の出場経験を生かしたかのような好走で、素晴らしかったと思います。

トップと5秒差でタスキを受けた向井優香さん(3年)。

昨年の激走が記憶にあるだけに、大いに期待したいところでしたが、平凡な記録に終わってしまいました。

理由はおそらく、故障で走れなかった影響でしょう。

昨年は体全体がシャープな印象でムダがなく、走りにもキレがありましたが、今年は走り込み不足からか、若干ふっくらとして見えましたし、少し走りも重く見えました。

それにしても、駅伝で向井さんが高校生に抜かれるところを見ることになるとは思いませんでした…

世羅高校が留学生を起用することについては賛否両論が存在しますが、総じて、否定的な意見の方が多いように思います。

そんな感情になることも理解はできるのですが、しかしながら、留学生がいつも想定通り走るとは限りません。

今年は、世羅高女子としては初めて、留学生を都大路に起用しましたが、残念ながら悪い目が出てしまいました。

ナオミ・ムッソーニさん(1年)は、前を追いかけようとして、明らかなオーバーペースで入ってしまいました。

最後は完全にガス欠で、区間35位。この時点で、優勝は諦めざるを得なくなりました…

改めて持ちタイムを見ると、現状はまださほど強力な選手とは言えないんですよね。

「留学生」というだけで必要以上に期待されすぎたのかな、と思います。

本人は悲しかったでしょうが、でも1年生ですからね。

今回は経験不足が露呈しましたが、これから力を付けていけば、まだまだ挽回のチャンスはあるはずです。

頑張ってほしいなあ。

さて、4区と5区は、いずれも1年生を起用しました。

2区と3区で上位に付けて、彼女たちにラクに走らせてあげたい、という目論見だったと思いますが、それは叶いませんでした。

しかし、4区の平村古都さん、5区の神笠貴子さん、この2人はよく頑張りました。

区間5位の好記録で走った平村さん、そして、チームを入賞圏内に押し上げた神笠さんは区間10位でした。

この2人も、持ちタイムの点では発展途上という感じですが、今回のレースで「成功」を体験できたので、自信を持てたでしょうし、これからの励みになると思います。

こうして見ると、3人の1年生がそれぞれ得難い経験をすることができたのは、来年以降のチームにとっては非常に大きな成果と思いますね。

連覇はならなかったし、エースの向井が抜けてしまいますが、総合力を上積みしていけそうなメンバーが残るので、来年以降に楽しみを持てるのではないでしょうか。

3.男子

放送開始からレーススタートまでの間、レース展望として注目チームの紹介や簡単な分析が行われるのが、NHK中継のパターン。

世羅高女子はなかなか取り上げられずにヤキモキしたのですが、男子は真っ先に紹介されましたね。

さすがに3連覇を目指すとなれば捨て置けない、といったところでしょうか。

もちろん、優勝する力があるからトップ紹介されるんですけども。

ところが、1区の吉田圭太くん(3年)がまさかの脱落。区間19位に甘んじる、悔しい展開になってしまいました。

実力の高い選手が揃う「花の1区」でも有力選手の1人に挙げられた吉田くんですが、5km辺りから徐々に後退し始め、最後はトップから1分以上離されてしまったのです。

女子の部で、大西さんの重心の高い軽い走りを観て、その残像が残っていたため、吉田くんの走りが軽快さを失っていくのがよく分かってしまいました…

7km過ぎの下りで切り替えてくれると期待しましたが、余力は残らなかったようです。

以前、広島ローカルの「ぐるぐるスクール」という番組(*)で世羅高校が取り上げられたとき、当時1年生だった吉田くんを観ました。

素朴な雰囲気の好青年だと感じましたが、それから2年経ち、彼が3年生になり、主将として堂々とインタビューを受けている、そんな映像を観て、彼の成長を感じました。

でも、いざ走る段になったとき、大きな重圧を感じてしまったんでしょうね。

あるいは、意識しないようにしていたはずの「3連覇」という言葉を、思い出してしまったんでしょうか。

当初4区を走る想定だった長嶺龍之介くん(3年)を2区に繰り上げ、3区の留学生、デービッド・グレくん(2年)とでトップに押し上げる、という先行型のオーダーを組んだ岩本真弥監督でしたが、青写真が狂ってしまいました。

吉田くんを責め立てることはありませんが、長嶺くんが区間8位、グレくんが区間2位で繋いだだけに、吉田くん自身、「自分がしっかり走れていれば…」という悔いは残ったでしょう。

折り返し、4区にタスキがつながった時点で、トップに1分15秒差を付けられてしまった世羅高校

残りのオーダー的に、逆転優勝は厳しい状況となっていました。

ただ、その残る4人については、それぞれに自分の出来る範囲を十分発揮できていたと、私は考えています。

跨線橋を越える8km超の4区に抜擢された梶山林太郎くん(1年)は、区間15位。

1年生であることを考えれば、この難コースで、周囲の期待通りの走りをしたと思います。評価に値する結果でした。

5区の愼颯斗くん(2年)と6区の幟立晃汰くん(2年)は、いずれも5000m14分40秒台の選手。

私には到底走れないタイムで走っているわけですが、都大路では相対的にそこそこのレベルであり、つなぎの区間での起用となりました。

そして、先頭との差こそ広がってしまったものの、2人ともつなぎの役割は果たしてくれたのではないかな、と思います。

アンカーの7区は前垣内皓大くん(1年)。

彼は、中学生として走った今年年頭のひろしま駅伝において、2区3位を記録した選手で、私も顔を見て「あ~、やっぱり観たことあった!」と喜びました(笑)。

区間19位という今回の成績は、彼自身は満足していないはずですが、アンカーとして競技場の雰囲気を味わえたことは、きっと財産になったと思いますね。

女子と同じく、男子も、複数の1年生が都大路を経験させてもらいました。

グレくんも、初めて全国の舞台で駅伝を走ったとのことなので、これも貴重な経験を得ました。

先輩のポール・カマイシ(現中国電力)の域に達するのは大変でしょうが、練習して努力して、実力を身につけてもらいたいものです。

(*)「ぐるぐるスクール」は、お笑いコンビのトータルテンボス広島県内の高校を訪ね、学校の魅力を紹介する番組。

世羅高校には確か2回訪問しています。我が母校も紹介されたことがありますが、残念なことに、12月25日の放送が最終回となってしまいました。

個人的には、真田丸よりも、こっちの方が「ロス」なのであります(笑)。

4.あとがき

軽くサクサクっと書き上げるつもりでしたが、案の定、いろいろと盛り込んでしまい、長くなってしまいました。

眠いっす。

まあ、これもまた良しか。

最後に、倉敷高校と大阪薫英女学院の皆さん、優勝おめでとうございます!

特に、倉敷の初優勝は、同じ中国地方に住む者として、嬉しく思いました。

それでは。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。