長い時を経て ~FC東京戦レビュー~

0.まえがき

3年前の4月に初投稿してから、3回目の記事で、私は初めて試合のレビューを書きました。

それは、パソコン版で1ページに収まる、とてもシンプルなものでした。

以来、書き続けてきたレビューは、いつの間にか長く細かい内容になっていきました(笑)。

そんなレビュー記事も、スポナビブログでは今回が最後になります。相手はFC東京。

奇しくも、私が最初にサンフレッチェのレビューを書いたのも、FC東京との試合でした。

当時、FC東京はフィッカデンティ監督を迎えたばかり。彼は今、サガン鳥栖で指揮を執り、FC東京は来期、長谷川健太新監督を迎えます。

時の流れとは、かくも予期できぬものなのか。

これから遅ればせながら、このレビューに取り掛かるのですが、今のところ、「これが最後」という感慨はさほどありません。

この記事を書き終えたとき、私が何を思うのか、まだ全く、想像がつきません。

1.無念の残るテレビ観戦

2017年11月26日、日曜日。

サンフレッチェ広島-FC東京の試合は、NHK広島の生中継をテレビの前で観戦しました。

とうとう今年は、サンフレッチェの試合をスタジアム観戦できませんでした…

そんなホーム最終戦、広島は前節と同じスタメンでしたが、ベンチにカズが戻って来ました。

彼の復帰は非常に大きく、頼もしい限りだと思いました。

一方のFC東京は、レンタル中のウタさんが出場不可だった他、大久保嘉人がケガのため帯同していない状況でした。

しかし、話題の久保建英がベンチに入りました。果たして、出場成るか?とても気になりました。

2.優勢に進める

キックオフからしばらくは、広島がイニシアチブを取って試合を進めていました。

特に最初の5分までの間に、両サイドから1回ずつ、クロスからのチャンスを作り出していたのは、とても良い傾向だと思いました。

FC東京が前からはめてくると、少しヒヤリとする部分もありましたが、総じて、広島のキープ力が上回っていました。

私の目には、FC東京側がボールの取り所に苦労しているように見えました。

そして目に付いたのは、フェリペ・シウバが守備意識の高さを見せていたところでした。

3.機能した中盤の距離感

前半20分頃に、一旦はFC東京の時間帯が来ましたが、致命的なピンチには至らず、程なく、広島がペースを取り戻しました。

これは、フェリペ・シウバやカシッチ、シバコーなどで構成する中盤の、距離感が良くなったことが利いているのでしょう。

特に、ボール回しの部分でフェリペ・シウバが利いている、と感じました。

それにしても、カシッチの移動距離がハンパなかったですね。

左サイドの前めの位置から、右サイドに移動して自陣に戻り、守備をした直後にまた前線へ、とか、いい意味で「何なんだろうな」と思わず笑ってしまいました。

4.休戦状態

前半の終わり近くになり、相変わらずボールを保持して優勢に進めるサンフレッチェでしたが、相手陣内でのプレーが多い割には膠着した状態になってきました。

若干の小休止、という感じだったのかもしれませんが、優位な内に得点を取れずに苦労する、という場面を今年イヤと言うほど見せられただけに、少し心配でした。

しかし、幸いと言うか、相手のFC東京から覇気が感じられなかったので、それは助かりましたね。

何しろ、ほとんど永井一本でしか来ないので、カウンター以外はあまり怖くありませんでした。

5.押し込んだこその先取点

広島が待望の先制点を取ったのは、前半終了間際のATだったでしょうか。

フェリペ・シウバが右サイド寄りのボックス手前からフリーでシュートを放ったところまでは、私も確認できました。

しかし次の瞬間、ボールがゴールインするまでの一瞬は、自分の肉眼では見定められませんでした。

ただ誰かに当たって入った、ということしか分からなかったのです。

結果的に、シバコー先生のゴールと記録されることになりましたが、もちろん、半分はフェリペのゴールと言っても過言ではないでしょう。

そして、あの位置でフリーで打てたのは、それまでにFC東京をゴール前に押し込めていたからこそ。

その意味では、あの先取点はサンフレッチェがチームで作り出した得点だった、とも言えると思います。

6.後半を占う

前半をいい形で終わることができたサンフレッチェ

この45分間は、FC東京に何もさせなかった、と言い切っていいと思いました。

但し、FC東京もまさかこのまま引き下がるわけはなく、後半は巻き返してくるはずでした。

優勢と評した広島にも、センターバック2枚の間のスペースを何度か使われていた、という弱点がありました。

後半こそは十分注意するべきポイントだと考えました。

7.意図を感じなかったFC東京

ハーフタイムが終わり、後半が始まりました。

ありきたりですが、後半は失点せずに2点目を取るのが理想。

広島の立ち上がりは悪くなく、その理想にたどり着く可能性は十分に高いと思いました。

それにしても、悪いけど、FC東京の出来がひどかった。

後半5分の段階での感想ですが、意図のないプレーが多すぎました。

選手構成の関係で、定位置のボランチから攻撃的な位置に移っていた洋次郎が、全く目立ちませんでしたから。

実況からも彼の名前がほとんど呼ばれなかったところが、チームの出来を端的に表していました。

8.割とよくあるタイプの「デジャブ」

後半10分頃のことでした。

この日、NHKの解説を務めていた和司さんが、「そろそろ追加点が欲しいですねえ」みたいなことを述べられました。

いま、1行前の文章を書こうとしながら、「前に同じことを書いたなあ…」と思い出したのは、2年前の川崎フロンターレとの試合でした。

「こんなことよくあるよね ~川崎戦レビュー~」というタイトルの記事は、私にとっては100本目という節目の回でした。

その中で私は、『ここで和司さん、「取れる時に取っておかないとあとで困ることになる」という趣旨で話し始めます。』と書いていました。

その後、先制した広島が2点目を取りあぐねているうちに、大久保嘉人のスーパーゴールで追いつかれた、のですが…

後半14分、FC東京のCK、キッカーは名手、太田宏介

ミズのマークを外してヘディングを仕掛けたのは、DFの山田将之でした。

嫌な感じはしてたんですけどねえ…

広島視点では、正にこれしかない、という形の失点でした。

もちろん、リアルタイムでは、自分の過去の記事なんぞ頭の中にはありませんでした。

それにしても… ホント、こういうことがあるよね(苦笑)。

9.予兆

結果が分かっているので、失点の場面も割と呑気な調子で書いていますが、その時は「あちゃー、またかぃ」と、少し機嫌は悪かったんです。

FC東京とやると大抵こうなるんだよなあ、と愚痴ったりして。

この同点弾によって、試合の流れが大きく変化する危険性だってありましたし。

でも、本当にこの試合で助かったのは、同点に変わってもFC東京のペースが上がらず、依然として、広島がボールをキープできる状況が変わらなかったことでした。

そんな中、ピッチ外で動きが。

いよいよ、FC東京の久保が投入される気配になったのです。

10.パスワークの成果

後半21分でした。

確か、中央が起点だったと思いますが、少ないタッチで左サイドに流したあと、フェリペ・シウバがボールを保持しました。

彼の選択は、右側に位置を取っていた稲垣へのパスでした。

ペナルティエリアの角で、完全にフリーな状態でボールを得た稲垣は、自らがシュートを打つことを選択しました。

FC東京の守備エリアを、パスワークで完全に崩し切った、素晴らしい2点目でした。

和司さんが仰った通り、もしも1-1の状況で久保が登場していたら、いかにビッグアーチといえども、スタジアムは一気にFC東京のムードに変わってしまったかもしれません。

そうなる前に挙げたこの勝ち越し弾は、スタジアムに集まった広島のファンサポに勇気を与える得点になったと思います。

11.久保の片鱗

後半も半分を過ぎましたが、ここにきてもまだ、広島の動きが選手個々に相手より優っている印象でした。

また、リードした時に余裕を持って球回しする、いい頃のサンフレッチェに戻ってきた感じもありました。

その時分にはハッキリと「広島勝勢」を意識した私でしたが、ただ1人、久保にボールが渡った時だけは、「怖さ」を感じました。

途中出場らしく動きがキビキビしていたし、ドリブルなどの技術も見せていて、しかも、ゴールを意識したプレーぶりが、敵ながらよく見えましたね。

この選手に、周りの選手が有効に絡むことができたら、広島も「悪夢」をみたかもしれません。

12.感情移入

後半もまもなく35分。

私は、自分の体が震えてくるのを意識していました。

テレビでの中継、しかもNHK、ということは、他会場の途中経過が随時インサートされてくるわけです。

残留争いのライバルチームの情報も逐一、自分の頭に入れながら、広島の試合を見守っていたわけです。

だから、「このまま勝ち切れば、今日、残留が決まる可能性が高い」という状況も分かっていました。

そこから、ATを含めた15分間は、非常に長かったです…

ヨンソン監督が、3分間の間を置いて、2枚の交代枠を使った時は、「時間の使い方として悪くないぞ!」と思いました。

カシッチを下げたのは少し意外でしたが、ピッチを無尽蔵なスタミナで駆け回ってくれた彼には、心から「お疲れさま!」と呼びかけたかった。

そういえば、ピッチ上のフェリペ・シウバにもAロペにも、疲れが色濃く出ているように見える。

ATは4分。あと1枚の交代枠を使いたいが、FC東京も最後の反撃を見せてきたし、タイミングが難しいなあ…

そんな感じでずっとソワソワ落ち着かないまま、いよいよ、その時がやって来ました。

13.安堵の時

チャジがボールをドリブルして、ハーフウェイライン付近を左から、無人の右サイドへと向かった時、私は、サンフレッチェ広島の勝利を確信しました。

そのままキープ、と思いきや、相手にボールを奪われてしまい、「おいおいおい!(焦)」と思ったところで、家本主審のホイッスルが鳴り響きました!

数十秒後、大宮アルディージャヴァンフォーレ甲府の試合が引き分けで終了した、という確定情報を得たところで、サンフレッチェ広島のJ1残留が、正式に確定したのでした。

正直なところ、最終節を残してJ1残留が決まる、という願いは、少々虫が良すぎると思っていました。

でも、ライバルチームがどうこうよりもまず、広島自身が勝ち点を積み上げていくことが大前提なので、FC東京に勝ったことは、本当に良かった。

本当に、ホッとしました。

14.諦めない姿勢とファンサポの存在

すべてが終わったいま振り返ると、もしもこの試合で勝ち点が1に留まっていたら、広島は来年、J2で戦わなければなりませんでした。

最終節の、清水エスパルスヴァンフォーレ甲府の勝利は、J1残留に懸ける執念を感じさせてくれました。

清水は33節に2点リードを逆転された同じ轍を踏むことなく勝ち切って見せたし、甲府は後半ATでの劇的な勝ち越しゴールだった由。

最後まで諦めない姿勢が際立っていますよね。

ただ、サンフレッチェ広島にも、その姿勢はあったと思います。

神戸、FC東京という辺りに連勝できたのも、練習の段階から「勝利を!残留を!」という想いを込めて準備してきたから。

例え相手の出来が良くなかったにしても、勝利を決め切るのは並大抵のことではできないはず。

それを成し遂げた時点で、広島の選手や監督、スタッフの存念は十分に伝わってきました。

そして、忘れてならないのは、この日ビッグアーチに集まった22,333人のファンサポの存在です。

この人数が集まったのは、ミカの退団セレモニーがあることも理由にあるでしょうが、それにも増して、今年、ホームで応援できる最後の試合であることが大きかったのではないでしょうか。

応援するサンフレッチェに勝ってほしい、残留へ向けて前進してほしい、という気持ちが、多くの人を動かしたのではないでしょうか。

この人数は、サンフレッチェ勝利のための力になってくれたと思います。

15.ミカへの想い

残念なことに、NHKの延長対応はなく、テレビでミキッチの退団セレモニーを観ることはできませんでした。

新聞記事も読んでいないため、どのような盛大さだったかは想像するしかありません。

でも、9年間もサンフレッチェの一員として、サンフレを、さらには広島の街を愛してくれたミカへの、感謝の念は、ファンサポの誰もがきっと持ち合わせていることでしょう。

中継の途中、サンフレッチェのベンチが映ったことがありました。

そこには、ミカの「14番」のユニフォームがイスに掛けてありました。

FC東京戦の後、「ミカをベンチに入れろ!」という怒号のツイートを見つけました。

なんか首脳陣に物申したい風にいきまいていました。

気持ちは分からないでもないんです。

でも、私はそれを読んで、「この人は何にも分かっちゃいないんだな」と思いましたよ、悪いけど。(個人の感想です。)

チーム事情のため、ケガが癒えたミキッチも、ベンチ入りする機会は最後まで訪れませんでした。

もちろん、ミカ自身も悔しかったはずですよ、だって現役選手ですから。

でもミカは、最後までチームの為に何ができるかを考えてくれました。

練習でも手を抜くことはなかったはずですし、何よりも、サンフレッチェ広島の一員としての高い誇りを持っていました。

そんな彼に対して、チームに関わる人たちは皆、感謝の念を持っているはずです。

ベンチに掛けてあったユニフォームは、選手やスタッフたちの、ミカへの想いです。

彼はいつだって、一緒に戦ってくれました。

そのことを忘れる奴がいたら、私は決して許しません。

そんなミカの去就は、現時点では決まっていないようですが、あるいは敵味方として対戦することになるかもしれません。

その時は遠慮なく、右サイドを疾走する姿を、私たちの前に見せてほしいです。

もちろん、自由にはやらせないでしょうけどね(笑)。

本人がこれを読むことはないだろうと思いますが、ひと言書かせてください。

ミキッチ選手、9年間、ありがとうございました!!!

16.あとがき

実は、まえがきを書いたのは、12月3日のことでした。

今日(10日)になって、それ以外のすべての内容を書き上げました。

すでに次期監督が決まり、新社長就任の路線も作られて、最早今更感が強くなってしまっていますが(笑)。

まもなく、この記事を書き終える今、思うことは、最後のレビューだという感慨よりも、ミカを送り出す寂しさの方でしたね。

まさか、章立てがこんな構成になろうとは、書き始めには全く想像していませんでした。

何はともあれ、サンフレッチェ広島は、新しい方向に歩み始めています。

選手やコーチの陣容がまだ未確定なので、先を見通せない部分はありますが、私はあくまでも広島ファンとして、サンフレッチェ広島を応援し続けていきます!

それではまた。

最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。